おばけミステイク

さぁさぁもう夕暮れだ

宵闇が墜落する前に 月を空高く上げろ

凧紐握り 色抜けの野原を駆け抜けろ


暗闇の抵抗が指の節に伝わる

地平の向こうの狂い咲きの花が

こちらの瞳を狂わせる

瞳孔の意志が聞こえるよ

小さくなりたい 何も見たくない


案山子の面影 死んだ姉と重なって

腕を広げて待っている

心配要らないと微笑んで

山の影が首筋を撫でた

「カラスがね、私の左目持ってった」


さぁさぁもう宵闇だ

瞳と瞳と瞳と瞳 三つ目と一つ目が愛を交わす

夜目が利くのはどの瞳 解剖と分娩取り違え

この心臓まだ動いてる 赤ちゃんは家出したみたい


月夜の晩に徘徊する幼心の執拗さ

優しい母性の持ち主の綺麗なおへそを探してる

待合室は突き当り 待合室は突き当り

喉をコロコロ鳴らし 水気ある泣き声響く

ガス欠だ ガス欠だ ガソリンスタンドどこにある


カラスが鳴くよ 素っ頓狂な裏声で

「まだ、5時じゃない、まだ、5時じゃない」

時報のお姉さん 自意識削いで、美声を鳴らす

「時が過ぎれば過ぎるだけ、人がどんどん死んでいく」

「まだ、5時じゃない、焦り過ぎにもほどがある」


さぁさぁもう朝焼けだ

鉄錆びに染まる 一晩分風化した町はまだ寝息を立てて

まともな店はまだどこも開いていない だけど並ぶ権利は誰にでも

夜勤明けのコンビニ店員が呟いた

「誰の顔も覚えてない、まるっきり記憶がない、罪滅ぼしに稼いだ金を小児募金にぶちまけよう」

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