冬の木漏れ日

こぼれる木漏れ日、葉合いのてのひらさえすりぬける

冬のだんどり、雪のさなかも、なめらかにこぼれ心を照らす

とびこむごとに追憶ついおくになり、心かろやかにあたたかくしてくれる

死人の思い出、死人歌、なぜこんなに美しくなぜこんなに熱をもつ

美しい季節、美しい情景、美しい色彩

うまれおちてこれまでに、見なかったことは一度もない


山茶花さざんか賛歌さんかをうたう、越冬えっとうつばめに形見をたくし

向こうにつくまえに歌の終わらぬことを

雲間にゆれるのは月だけではないという観念かんねん

知ってしまったらもう忘れることはできないという意識

かなしいわけじゃない、せつないわけじゃない

ただ、あたたかく、ただ、色それぞれ輝きえて


春のあたたかきことを願う、今までよりずっとつよく

夏の晩の癒しを願う、今までよりずっとつよく

秋の歌が響くことを願う、今までよりずっとつよく

冬の木漏れ日の美しきことを願う、これからずっといつまでも

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