かいしゃくわかれ

赤べこの細首を

ニッパーで切断する

幼児のこころ


子守唄をうたいながら

薄ら笑み浮かべるのは

いとこのおばあちゃん


たたみに転がる生首の

瑞々みずみずしいその断面は

かぐわしい新緑の香り


育児いくじ放棄ほうきのお姉ちゃんは

次々おはじき呑みくだし

十人じゅうにん十色といろの思いをめぐらす


首のやわらかいご母堂様ぼどうさま

ぎこちなくこうべめぐらし

知らないふりして天井あお


昼間から酒をながめる父親たちは

当てつけるようににらみを利かせ

びん未亡人みぼうじん太股ふともも垣間かいま見る


家鳴りがきしきしと愚痴ぐち

ときおり思いだしたように

骨の鳴るようなめ息を吐く


児童相談所のおねえさん

呼びりんなど眼中がんちゅうにないように

ドアノブと握手し、かれこれ半日


いじらしさに初恋するのは

電柱のかげにひそむ

訪問ほうもん介護かいごの、中年男性の新人さん


われかんせず樹液じゅえきむらがる空蝉うつせみ

その内容物ないようぶつのどろどろが

回覧板にへばりつく


ふと、ものごころ芽生めば

小指に首の面影おもかげを見る

幼児の幼気いたいけなこころ

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