でしょうか?

瞳でしょうか? いいえ、眼球です。

それは、摘出てきしゅつしたてのようなフレッシュさなのです。


心でしょうか? いいえ、たましいそのものです。

それには、あたたかな、霊魂れいこん除細動じょさいどうともなっているのです。


腹部でしょうか? いいえ、はらわたです。

それは、所狭しとうごめく、生命の起源きげんなのです。


視線でしょうか? いいえ、肌感覚です。

それは確固たる質感を帯びた、いやらしい眼差しなのであります。


それは首筋でしょうか? はい、そうです、それは首筋です。

ひとたびそこに手を添えれば、その薄皮の下で、心臓まがいの血管が脈打つのが、刻一刻と感ぜられるのです、はい、それは元気な妖精さんのような活発さなのです、はい、それはそれは美しい妖精さんなのです、はい、そうです、その整った顔立ちは、性別の垣根を越えた完璧さを備えているのであります、心臓に遅れること、はい、心臓に遅れることおよそ、はい、それは心臓に遅れることおよそ、はい、それはそれは健康な心臓の赤ちゃんが、あなたの手のひらの温熱をうけ、その拍子に自我にめざめ、胎動たいどうしたのであります、はい、そうです、それは間違いなく首筋です。

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