諸事情詩集

遺影

表層的なカニバリズムと不可逆的な癒着が

手を取り合ってひた走る

「表向き？」

「ここも？」

わたあめとカラスってすごく似てる

どっちも必ず消えちゃうから

どっちも必ず食べられちゃうから

やめて一緒にしないで

いくら高画質だからって

あれは本当の私じゃないんだよ

「額縁に入れてほしいのか？」

「うん、照れるけど、それについては常々考えていたんだよ」

死の恐怖をカジュアルにして商業化

これはいわゆる遺書とはまったく異なります

桜の下の満席の布

桜の樹の上にはお空が広がっている

「表向き？」

「ここも？」

「自殺しようと思うんだ、喉に餅を詰まらせて」

「花より団子ですね？」

「いいえ、お餅です」

鳥と鳥と鳥

みんな同じでみんな鳥

三羽烏の風見鶏

右向け右と言ったら右を向くようにお願いします

威力業務妨害罪で閑古鳥が書類送検され

焼き鳥の刑に処された

「表向き？」

「ここも？」

「こんなに不味い料理屋ってあるんだね」

「君と初めて会ったあの日からずっと思っていたんだけど、君の声は倍音だからよく通って響くよね」

カラスが何かを食べている

わたあめが膨らんでいく

「この前の花見の席でね、ちょっとした人助けをしたんだ」

「誉めてほしいの？」

「うん、まあね」

「君は最上の人」

「表向き？」

「ここも？」

能ある鷹は人殺し

キャベツを剥いたらタマネギが現れた

「やぁ、よく来たね」

アルミ缶の上にあるのは北斗七星です

校長先生は違法薬物を接種しているので絶好調です

「校長先生は嬉しいです、校長先生はとても嬉しいです」

「この鉄屑風情が」

貧血にはホウレンソウ

倒れるなら前もって言ってください

「表向き？」

「ここも？」