郷愁のなかで

忘れ去られた幻想げんそうの眠る鎮魂ちんこんみやこ

累々るいるいと大地に広がる人のがら

悠々ゆうゆうけ回る動物たちのむくろ

滔々とうとうと語り続けるのは、

石碑せきひきざまれた花言葉


石膏せっこう作りの人形にんぎょうたちは、

うずたかく折り重なり、

聖堂せいどうよそおっている

その祭壇さいだんに祈るのは、

全能者の残滓ざんし

篠突しのつくような呟きは、

意味を成そうと、

微睡まどろみの輪郭りんかく彷徨さまよっている


天空に吊り上げられた陽光が、

雲間にのぞく、それはただ、

認めてもらいたいためだけに


瞳のない世界

是認ぜにんされる気配と共に、

陽光はよどんだ大洋に身をひた

水面みなもからあふれる血潮ちしお

それは赤茶け、流れながらもてている


やがて訪れる暗闇の、

その安息あんそくたるや、熱のない眠りのように

無常むじょうの否認、賛歌さんかの結び


時の果てたあかつきには、いとも容易たやすくも、

瞳のように、

黒々とした、

太陽が昇る

そして、いちなる是認ぜにんのために、

一切の姿形が、

微笑ほほえみ交わすことだろう

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