諸事情詩集

紫のストレンジャー

ダイエット中（ちゅう）のあたしをいたぶる

紫芋（むらさきいも）のばかやろう

田舎（いなか）の母が送り付けてきた

紫（むらさき）のこのやろう

この紫（むらさき）の奴（やつ）は、せせら笑うように私を挑発（ちょうはつ）する

紫（むらさき）の濃淡（のうたん）で甘（あま）さを表現（ひょうげん）させながら

あるいは、憎々（にくにく）しくも、知識（ちしき）をひけらかしながら

芋（いも）は食物繊維（しょくもつせんい）いっぱいで、逆（ぎゃく）に痩（や）せるまである

そういう問題（もんだい）じゃない!!　ひとたび甘味（かんみ）をとりこめば

私はタガは外（はず）れてしまって、半年はかからない!!

母に殺意（さつい）おぼえ、芋（いも）に血（ち）の気（け）を引（ひ）かせ、紫（むらさき）に酩酊（めいてい）する

このままじゃ破滅（はめつ）だと、はっと思（おも）い当（あ）たり

私はそうそうに決着（けっちゃく）をつけることにする

戸棚（とだな）の奥（おく）に眠（ねむ）るスリコギをとりだし

私はそれで、この唾棄（だき）すべき紫（むらさき）を一撃（いちげき）した

するとどうしたことだろう、中身（なかみ）はより濃厚（のうこう）な

まるで、黒（くろ）に近（ちか）しい紫（むらさき）まみれじゃないか

こんなのもう、どうにもならない

私は両膝（りょうひざ）を地面（じめん）に突（つ）き、スリコギをとりおとす

こんなの蒸（ふ）かすしか他（ほか）にない

それ以外ありえない、行（おこな）えない

これは、私の行動様式（こうどうようしき）です

ダイエットは半年後（はんとしご）にはじめよう

その決心（けっしん）を揺（ゆ）るがぬものにする

おそらくそれが最善（さいぜん）の策（さく）

私は涙（なみだ）のかわりに、ぽたりと、ひとしずくのよだれを零（こぼ）した