いない

夢を見た、冷や汗だとはっきり分かる汗さえ掻いて。

便りの封蝋とけていて、指の震えに合わせ震えているが、

指が入らない、ほんの僅かも入らない、爪さえ拒む真っ平。


はて、私は誰だっけ? 封蝋がゆるんでこぼれて膝を汚した。

ひやりともせず、熱もない。まるで一心同体、常温の赤。

赤、真っ赤、真っ赤っ赤、呵々大笑、笑えよ笑え。


ほら、いないいない、いない。ほらもういっかい、いないいない、いない。


はて、私は誰だっけ? 傾げるものがない。その首なしの、その自然な立ち姿。

こんなこと言うのは照れるけど、正直惚れたよ、君のバランスのよさに。

まるで、首なしになるために生まれたみたいな、その身体。

踊る、踊る、上下に踊る喉仏。喉が鳴るなり、なるほどなるほど。


勉強させていただいて、捨て身の値下げ。縊死いしの重圧が、喉にかかるゆらゆらと。

頭ひとつ下げるたび、首の骨が砕けてとけて、リンパの流れに乗っていく。


五臓六腑でパズルに興じろ。胃を悪くするほど笑い狂えば、たちまちに楽になる。

マッチ売りの少女の死因は、押しの強さの欠落だ。

ない顔で、そう笑うのは、

腐れた花売る、首なしの、花売り娘のなれのはて。

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