第3話 道案内
その日、私は友人に誘われて、4人ほどで観光地に遊びに行っていました。
私たちを友人のお父さんが、車で送り、後程、迎えに来てくれることになっていました。
ところが、私は途中から、頭が痛くなってきました。
なんだかそれは、段々とひどくなっていくようでした。頭は誰かが、締め上げているようで、首の付け根のあたりも重く、目の奥がズキズキします。
しかし、それでも何とか笑顔を作って、歩いていました。
お昼少し前に、食事のためにレストランに入ると、美味しそうな食べ物の匂いがしてきました。
しかし、その途端に、私は吐き気がして、耐えられなくなり、体調が悪いので帰ると友人たちに伝えました。
勿論、皆、慌てて、引き留めましたが、近所に親戚がいて、その家で休ませて貰うので大丈夫、と押し切りました。
実際、その市内に親戚がいるのは事実で、話題にしたこともあったので、最後には、渋々、受け入れてくれました。
こうして店の外へ出た私は、しばらく歩いていると、不思議なほど、体調が良くなっていきました。
実は親戚ですが、親に連れられて行ったことしかなく、現在地からの行き方は、わかりません。
ですから、レストランに戻った方がいいのかも知れませんが、どうにも気が進みません。
申し訳ないのですが、そのまま、電車に乗って帰ることにしました。
さて、駅に向かうことにしたのは良いのですが、これがまた、駅がどこなのか、分かりません。
仕方がないので、おおよその目安をつけて、適当に歩き始めました。
ところが、この辺りと思っていたのが、大外れで、全く知らない街並みになっていきます。もう少し行けば何とかならないかと、更に進んだのですが、ただの住宅街に入り込んだらしく、もはや、右も左もわからない状態になってしまいました。
余りにも、よく知った顔で、さっさと歩いて、適当に何度も角を曲がってしまったので、引き返そうにも、元の道に戻れる自信もありません。
しかし、まぁ、道は誰かに聞けばいいやと、今度は人を探す気持ちで歩き始めました。
すると、しばらく歩いて、住宅街の小さな十字路に差し掛かった時、急に、ツンツンと服を引っ張られる感覚がしました。
引っ張られたところを見ても、誰もいません。
今から考えると、非常に呑気なことに、ああ、こっちなんだなと納得して、引かれた方へ道を曲がりました。
また、しばらく行くと、ツンツンと服が引っ張られます。
そしてまた……
私は、ご機嫌で引っ張られる方へ、曲がりながら、歩いていきました。
そして、気がつくと、駅の近くの繁華街の入り口に導かれていました。
そして無事に電車に乗って、家に帰りました。
その日、自宅のある駅で、後に一緒に不思議な体験をする友人と知り合うのですが、その話はまた今度。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます