第35話 そもそも…

  Cくんの地元の友達は理系の非常に優秀な方で、そういう優秀な人がいく難関大学に進学したそうです。

彼をNくんとします。


Nくんのご学友の中に、Sくんという人がいました。

見掛けも普通で、性格も特別なんということもない真面目なありがちなタイプで、成績も特に良いわけでも悪いわけでも無く、普通なモブキャラでした。(その学科の中では)



ただそのSくんは、発想が非常に独特で、研究が本格的に始まると、頭角を現していったそうです。


そのSくんにNくんは、違和感を感じていたそうです。


 ある夜、研究室に泊まり込んでいたNくんは、窓の外を歩くSくんの姿を見て、さりげなく後を追いかけて行きました。


Nくんがそんな行動を取ったのには、理由がありました。


泊まり込みの日の夜更け、何度も彼が一人で外を歩いているのを見かけているのですが、それをその場にいた人は誰も見てない、知らないようなのです。


またNくんも、いつSくんが出て行ったのか、いつ戻ってきたのか、気をつけて見ていても、わからないのです。


気がつくと外をSくんが歩いており、その後研究室の中に知らないうちに戻ってきているのです。


それでNくんは、窓の外にSくんがいるのを見るとすぐに飛び出して、後を追いかけました。

Nくんが外に出ると既にSくんの姿はありませんでしたが、いつも同じ方向へ歩いていくので、そちらへ走って行きました。


大学の道は舗装されており、木や茂みも手入れされ視界は悪くなく、所々灯りが灯っていましたから、後を簡単に追えるだろうと思っていたそうです。

しかし、窓から見えなくなる位置から少しいくと、もうSくんの後ろ姿はなく、シンと静かな闇が広がるばかりでした。


しばらく左右を見渡していたNくんは、諦めて研究室へ戻りました。


するとそこには、出て行った筈のSくんが普段通りにいました。


「おい、N。急に出て行ったけど、どうしたのか?腹でも壊したのか?」

急に走って研究室から飛び出して行ったNくんを心配したのでしょう、友人が大きな声をかけてきました。


慌ててそんなんじゃないと弁明をしようとした時、Sくんも顔を上げてこちらを見ているのに気がつき、Nくんは突然ゾッとして、

「ありがとう。出すもの出したら、治ったみたいだわ」

咄嗟に嘘をついてしまったそうです。


それから、ジッとSくんに見られている気がして、NくんはSくんのことは気にしないようにして、卒業を迎えたそうです。


そして、CくんはNくんから、相談としてこの話を聞きました。理由は……


「Sの存在が消えている」


論文からも、みんなの記憶からも、Sという人物のことが拭うように消えているそうです。


そもそもNくんがSくんのことが気になり始めたきっかけは、一年のオリエンテーションでたまたま隣の席になり、何気なく彼の方へ視線を向けた時、彼の瞼が縦に閉じたように見え、息を呑んだ瞬間、Sくんが物凄く気味の悪い笑顔を向けてきたことだったそうです。


彼はこの世の生き物ではなかったのかも知れない。

そうNくんは言っていたそうです。


しかしCくんが言うには、そもそもNくんもかなり変人で、記憶が彼だけ残っているというのもおかしいし、二人とも宇宙人なんじゃないかという気がするのだそうです。

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