第36話 記憶にない道
ここのところ主演?のCくんが、友人から聞いた話です。
Cくんの友人のDくんが、わりと早くに結婚した友人夫婦の新居に、何人かで遊びに行った時のことです。
小さな駅からしばらく行った丘の途中に、その家は建っていたそうです。
丘の途中といっても、車の通る片道一車線の道の角を曲がって、車線のない道へ入り、そこから舗装もされていない竹藪の道に入ったところにある、かなり古い平屋の家でした。
「えらい侘び寂びなトコやな……帰り道とか危なないの?」
「二人とも基本バイクやし、何とかなってるわ。それに住むの半年ほどやねん」
旦那さんが、そこの家のオーナーと知り合いで、取り壊すまでの期間、格安で貸してもらうことになっていたそうです。
「せやけど…… AちゃんとBちゃん、遅いな」
少し遅れてくる2人が到着する予定時間から、もう一時間近く経っていました。
「迷ったん、違う?」
といっても、迷いそうなのは竹藪に入る道くらいですが、そこには彼らの家と同じような平屋建ての家が道のそばに建っていることもあって、迷うのも難しそうでした。
「見てくるわ」
旦那さんが腰を上げ、玄関の方へ行った時、2人が到着しました。
「遅かったやん」
「え〜?お待たせしました〜」
2人が家に上がると、みんなが
「えらい遅かったけど、迷った?」
「心配したやんか」
口々に言ったそうです。しかし
「え?普通に来たよ?なぁ?」
二人は顔を見合わせて、不思議そうに言いました。
「なら何で、一時間以上余計にかかってん?」
「え?」
二人は時間を確認すると、驚いた声をあげました。
「うそ?だって普通に歩いてきたよ!」
2人はどこにも寄らず、普通に歩いてきて、まさか到着予定時間より一時間も経っていたとは思わなかったようでした。
「えらい話が弾んでんな?」
奥さんが笑いながらそう言って、2人は首を捻りつつも、なんとなくその話はそれで終わりました。
それから暫く経ち、Dくんが旦那さんと会った時に……
あの後、夫婦それぞれの兄弟姉妹が来た時、やはり一、二時間ほど遅れて到着した後聞いても、別に普通に来たと言われたそうです。
そしてまた、その後別の友達が来た時もそうで、どうも流石におかしいと思うようになったそうです。
気持ち悪いのが、皆、そう言われてみれば、何となく空白の時間があった気がする……というそうです。
その時の具体的な記憶はないのですが、そういえばボーと同じ景色のところをひたすら歩いていたような、そんな気がすると口を揃えて言うそうです。
また最後の友達の時には、流石に電話をしたそうですが、電波の届かないところにいる……というアナウンスが流れたそうです。
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