第41話 運のいい人

ある朝のことです。

Aさんはふと目を覚ますと、起床時間を大幅にオーバーしていました。


彼は一人暮らしですが、いつも決まった時間に目が覚めるので、目覚ましをかける習慣がありませんでした。


(疲れてたのかな……しかしよりによって、こんな日になんてことだ!

これからは、目覚ましをかけないとダメだな)


当時 院生だったAさんは、その日の朝、就職の事で教授との面談が入っていたそうで、遅刻するなんてあり得なかったそうです。


Aさんは、慌てて着替えると取るものもとりあえず、家を飛び出して行きました。

駅に着くやいなや、運良く電車が到着し、何とか約束の時間に何とか間に合いそうで、胸をなでおろしました。


ところが学校に着くと、人もまばらです。

考えてみれば、電車もいつもと違う感じがしたことを思い出しました。


そこで改めて時計を見ると、思った時間より、ちょうど1時間早かったそうです。


(なんだ……良かった!)


Aさんは、研究室で資料を見直しながら、時間を過ごすことにしました。


その後、ポロポロと人が登校し始めました。


ところが、助手の先生や学生たちが来ません。


自動車通勤の先生たちも、何人か来ません。


心配になったAさんが、研究室を出ると、ちょうど教授が向こうから来て、Aさんを見てビックリした顔をしました。


「大学の近くの踏切で事故が起きて、電車が止まり、踏切が開かなくなってるらしいんだよ。

学校側に家のある人は来れるけど、その他の人は遅れそうなんだ。

君も今日は無理かと思ってたけど、登校できていてよかった。」


その後Aさんは、相手先の社長さんから、同じような実力の子なら、プラスαで運の良い処がいいと言われて、無事に就職できたそうです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る