第60話 紛れ込んだ風景

 Aさんの友人グループの一人Bさんは、昔から旅行、特にふらっと行く一人旅が趣味だったそうです。


突然綺麗な風景を、Aさんたちが作っているグループのチャットルームに、「今ここにいるよー!」、「見て!綺麗!」と送ってくれたりしていたそうです。


ある日「ホテルからの風景」と、いつものように何枚かの写真が送られてきました。どうも高原のリゾートホテルに泊まっているようで、平原の向こうに連なる山や林などがとても美しいものでした。

「へー、いいとこじゃん!あれ?」

その中の一枚にAさんは目を止めました。

それは他の写真とは違い、瓦をふいた屋根や古ぼけたようなビル、電信柱が写っており、雑多な、強いて言うなら昭和レトロな風景でした。


「一枚、昭和が入ってる」

「ここでタイムスリップしたんだ?」

友人たちも、その一枚に反応しましたが、肝心のBさんは見ていないのか無反応で、Aさんは苦笑いをして、スマホの画面を閉じました。


それからしばらくして、Bさんがお土産を渡したいということで、友人達と会うことになりました。


それぞれ近況を報告しあったり、Bさんの旅行の話をしたり、ほろ酔い状態になった頃、誰かが例の写真に話題を振りました。


「あの写真だけ異色だったけど、あれ、どうしたの?」

「え?どれのこと?」

Bさんはキョトンとして、全く身に覚えが無いようです。

「ほら、これ。この一枚だけ、違うでしょう?」

Aさんは「ホテルからの風景」の写真を見せました。


それは例えば、北海道の美瑛町の富田ファームのラベンダー畑の写真の間に、昭和の飲屋街の路地裏の写真が挟まっているような感じなのです。


「え?なにこれ!私、こんな写真撮った覚えないんだけど!」

Bさんは驚いて、自分のカメラのフォルダを見てみると、やはりそこには美しい風景に挟まれて、レトロな写真があったそうです。


「ここの辺の写真は、全部、ホテルから撮ったものだし、こんなとこ、見た記憶ないんだけど……」


確かに前後の写真はほぼ連続して撮られており、どうしてそんな風景がまじっているのか、誰にも分かりませんでした。


何故そんなことになったのでしょうか。

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