第22話 結ぶ
八重垣神社の「鏡の池の占い」をご存知でしょうか?
八重垣神社は、 櫛名田比売が八岐大蛇から身を隠していた所だそうで、この池を鏡代わりにしていたことから、「鏡の池」と呼ばれるようになったそうです。
鏡の池に紙を浮かべて、手前で沈めば近くの人と縁が、流れて遠くで沈めば遠くの人と縁があり、また15分以内に紙が沈めば、その縁は早く結ばれ、それ以上かかればその縁を結ぶには時間がかかると言われています。
紙には濡れると文字が浮き出て、アドバイスになるそうです。
静かな森の中、淡々と水の湧く池は、あたりの木々の緑を映して確かに鏡のようです。
櫛名田比売のおられた当時、さぞ浄らかで神秘的だったであろうことが偲ばれます。
友人のAが大学時代の友達とこの地を訪れたのは、卒業後5年ほど経った頃でした。
八重垣神社の社務所で占い用の紙を拝受して、森林の中の細い参道を暫し歩くと、鏡の池へ到着します。
心の中で願い事を唱え、紙を池の水面に静かに浮かべ、中央に10円玉を乗せると、彼女たちは、真剣な表情で自分の紙の行方を見つめていました。
水面に置いた途端に沈む人、クルクル回りながら、遠くへ流されて行く人。
皆、それぞれにその占いを楽しんだそうです。
ただその中で、顔を引きつらせて紙の行方を見ている子がいました。
「沈まへん……」
その声に見ると、Bの紙は途中で草だか、細い小枝だかに引っかかって、沈むに沈めず、流れるに流れられず……という状態だったそうです。
皆、顔を見合わせました。
「B、自分でつっかえてんの取ってみぃや」
Aは、Bを促しました。
実はこの時Bには、学生時代からの腐れ縁の夢追い人の彼氏がおり、皆、心配をしていたそうです。
Bがその障害物を取り除くと、あっという間に沈んでいきました。
そこから、Bは心ここにあらず状態だったそうです。
その後、旅行から帰ったBは彼氏ときちんと別れて、暫くした頃婚約をしました。
相手は、鏡の池に行った晩に泊まった旅館で、ぼうとしたBがぶつかって、手にしていたスマホを跳ね飛ばしてしまった人だそうです。
結婚を意識されている方は一度、お参りに行かれても良いかもしれませんね。
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