第23話 ミカン畑の友人

先輩の家の近くに親戚のみかん畑があり、そこでぼーっとしていることが好きだったそうです。


それはミカンがたわわに成り、収穫の時期を迎えている頃でした。

もうあたりは暗く、冷たい風が吹いていました。

ふと何かの気配を感じそちらへ目を向けると、近くの低いみかんの木の幹のところに影のようなものがありました。

目を凝らしてよくよく見ると、それはこちらを注視しているようでした。


先輩はそういえばこういうことが、一度ならずもあったことを突然思い出しました。


その時、その畑の持ち主である叔父さんの声がしました。

「なんや、またAやんけ」

「あ、おっちゃん」

先輩は立ち上がると、叔父さんの方へ走り寄りました。

まるで、叔父さんがこちらへ来て、その影を発見するのを止めるように。


「ぼーっとしてて、気ぃつけへんかった。やばいわぁ〜、またおかんに怒られてまうわ」

「ほんまAはおっちゃんとこの畑が好きやな。送っていっちゃるけ、トラックに乗らんかい」


叔父さんはニコニコしながら「卒業したらおっちゃんとこを継がんか」とか「みかん、持って帰れ」とか言いながら、機嫌よくトラックに先輩を乗せて帰宅したそうです。


それからというものの、叔父さんのみかん畑にいくと、時折その影が木の影にいるのを見るようになりました。


と同時に、不思議な記憶が蘇って来たそうです。


それはまだ小さな頃、叔父さんの畑に収穫に行った時、何度かその生き物と一緒に遊んだというものでした。

その生き物は、銀色でフワフワとしたもので、言葉を使わず心で意思の疎通ができたそうです。


しかし大きくなった頃、その事を親に言うと、おかしく思った親が付いてきてそれ以来、会えなくなったというものでした。



残念ながら、再会したそれとは、一定の距離を取ってお互いの姿を眺める程度のことしか出来ませんでした。

しかし、ある夜、その生き物がゆっくりと長い手(?)を振ったそうです。


そして、それっきりになりました。


ちなみにその畑のある所は、K TというUFOがよく観測される、或いは離発着しているのを見た人がいるので有名な場所だそうです。

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