第12話 親切なスタッフ

これは職場の先輩に聞いた話です。


 何年か前、お母様がお亡くなりになり、お父さんと弟さんと、葬儀場に泊まることになりました。


葬儀場では、寝ずの番をされるご遺族のために、親戚の方の控え室にもなる応接の間、寝室、バストイレや台所、洗濯機などがある、マンションかホテルのような部屋が用意されているところが多いようです。


 先輩も弟さんもすでに結婚し子供もいましたが、それぞれの家族は、翌日に備えて、それぞれの自宅へ戻り、独身の頃のように三人だけで、お母様の柩の前で、寝ずの番を務めていたそうです。


なんだかんだと決めることがあり、気がつくと、もう時間は22時を回っていたと言います。

そこで、お父さんがお風呂に入り、先輩と弟さんが寛いで思い出話に花を咲かせていますと、部屋のドアをノックする音が聞こえてきました。

ついで

「お客様、お風呂のお湯がおかしいので、申し訳ありませんが、お確かめください」

男性のスタッフが、声をかけてきたそうです。

「分かりました」

先輩が、お風呂に走り、ドアをノックをしましたが、返事がありません。仕方なく、ドアを開けると、お父さんが湯船で気を失っていたそうです。

慌てて、弟さんが先ほどのスタッフを呼びに行ったのですが……


深夜は、宿直スタッフは置かないところだったそうです。


では、誰が?


お父様は救急車で運ばれ、無事だったそうです。











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