第20話 通り過ぎたもの
現代の日本では、宗教は扱いが難しいものになっていますが、歴史のあるお寺や神社、教会というのは、芸術的に優れたものが多く、見学をするのは楽しいものです。
私は、友人2人と、そういう施設めぐりの旅行へ行きました。
丁度天気が悪かったこともあり、私たち以外に来館者はおらず、「ゆっくりしていってください」と、親切に声をかけていただきました。
それをいいことに、ホテルのチェックインが始まるまで、椅子に座って休ませてもらうことにしました。
建物自体は、H字型をしており、その中央の横線部分の真ん中に長机と椅子が、いくつかおいてありました。
右の隅の角っこの席に、私は、Hの下を背中にして、上を向いている位置で、友人と並んで座り、もう一人の友人が、反対を向いて向かい合わせに座っていました。
私たちは、宗教施設ということもあり、声を潜めつつ、割とまじめな話をして、時間を過ごしていました。
ふっと私は背中に、何かの気配を感じました。
そしてなんということはなく、その気配が左から右へ、後ろを通り過ぎ、角を曲がっていくのに合わせて、体の向きを変えつつ、お辞儀をしていました。
深々と頭を下げた後、ハッと自分の奇妙な行動に我に帰ると、友人たちも同じく、体の向きを変えて頭を下げており、それから呆然と顔を見合わせました。
「え?」
「ええ?」
あたりに人気はなく、自分たちが、なんでそんな行動をとったのか、さっぱり訳が分からず、混乱して、半笑いの状態です。
ただ、何かよく分からないけど、すごく尊いものが通り過ぎていった気がした。
それだけは、確認し合い、なんだか突然怖くなって、早々に立ち去りました。
いまだに何だったのかは、不明です。
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