第15話 ベランダの影
大学時代、友人Aの下宿していた学生マンションは、緩やかな坂の上に有りました。
ある日、Aが凄い朝型だという話が、話題に上がりました。
「そうそう」
Bが、可笑しそうにうなづきました。
早朝、バイトの帰りに、坂道を上がっていると、ベランダで、洗濯物でも干しているのか、Aが立っていることがあるそうです。
まだ夜も開けきらぬ薄闇の頃なのに、ご苦労なことだと、手を振ると、Aも手を振ってくれるそうです。
「いや、流石に、そんな朝から洗濯とかしてへんわ」
Aは、苦笑しながら言いました。
「絶対、部屋間違えとるし!それB、ムッチャ恥ずいで!」
うっかり者のBなら、あり得ると皆、大笑いをしました。
それからしばらくしてある夜、Aの部屋に集まって、ワイワイとしている時、遅れてきた友人たちが、やってくるなり青い顔で
「今さっき、来てる時に見たら、ベランダに人影があった」
と、言いました。
先日のBの話があったので、立ち止まって、よく確認をしたそうです。
というのも、Aの住んでるマンションは、一階部分が地形的に、半地下のような形になっているので、方向によっては、一階分見間違えてしまうからなんです。
するとやはり、人影があったのは、一階上の部屋だったそうです。
それなら、Bの勘違いで終わりそうなものなのですが……
Aの部屋の上には、よく知ってる先輩が住んでおられたのですが、その頃、体を壊されて一旦地元に帰っていたのです。
後日、確かめましたが、先輩は帰っておられず、その部屋は無人のままでした。
その先輩は、後に中退をされて、行方は分かりません。
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