第14話 マンデラ・エフェクト

マンデラ・エフェクトというのをご存知でしょうか。

「事実と異なる記憶を不特定多数の人が共有している現象」で、南アフリカのマンデラ大統領が存命中、80年代に獄中死しているという誤った記憶を、関係性のない人が多数、持っていた事に由来します。


 友人Aに聞いた話です。かなりフェイクを入れています。


Aが実家に帰省した折、元同級生のBと会う話になったそうです。

それが奇妙な話で……


その日より少し前、Bは高校時代の元カノのCの家族から、すぐ来て欲しいと連絡があったそうです。訝しく思いつつも、Cの家族の取り乱し方が気になって、久しぶりにCの自宅へ伺いました。

すると、申し訳なさそうなCの両親に促され、C家のリビングに入ると、座っていたCが、泣きながらBに抱きついてきたそうです。

「Bくん、酷い!それで子供は?〇〇はどこ?」


「子供?」

当然Bは驚いて、聞き返しました。Bは子供どころか、結婚もしていませんので、何を言っているのか、さっぱりわからなかったのです。


「私たち、高校を卒業して、結婚したじゃない!朝起きたら、あなたが子供を連れていなくなってて。親に連絡をしたら、帰ってこいと言われて」


「ごめんなさいね」

Cの両親は申し訳なさそうに謝ります。

「Bくんとは高校時代に別れたって、何度言っても、信じないのよ」


「統合失調症?」

その話を聞いたAが、Bに尋ねると、彼は多分と頷きました。


「でも、それが気持ち悪いことに」

Bが続けます。

「会った事もないAのことを、不倫相手だって思い込んでてさ。もし何かあったらって思って」

「え?うそ。マジで?」


Aは、目の前のコップをひっくり返す勢いで、身を乗り出しました。

Bは元カノが送ってきた、Aを罵るLINEを見せてくれたそうです。


「なんかよく分からんけど、ほんとゴメンな」


「え〜、Bに謝られる事じゃないけどさ。なんで、よりによってあたしなの?」


「いや、ほら、俺たち、大学に入った頃付き合ってたじゃん」

「は?なにそれ」

「え?付き合ってたじゃん。帰省した時に偶然会ってさ」


Aは、血が一気に下がり、背中を椅子の背に押し付けました。


そして、気味悪く見つめました。


事細かに、付き合う過程を、デートの様子を話すBを。

中学卒業後、久しぶりに会ったBを。




耐え切れなく、逃げるように店を飛び出すと、Bを着拒して、家で母親にダメ元で確認すると

「あ〜?そういえば、帰省した時に、Bくんに偶然会ったって言ってたような気がするけど……」



これがAが地元に帰省しない理由だそうです。


誰の記憶が正しいのでしょうか。













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