第17話 少女
友人A が長期休みに、地元の某アパレル店舗で店員さんのバイトをした時の話です。
ある平日の昼下がり、お客さんもほとんどおらず、スタッフは順番でお昼休憩に入り、のんびりとした雰囲気が漂っていたそうです。
正社員の人が奥のレジ辺りで仕事をし、バイトに慣れてきたAは表の方で、服をたたみ直していました。
店にはお仕着せの、有線の音楽が軽快に流れ、たまにお客さんが店の前を通り過ぎて行っていました。
(あ、このカーディガン可愛いな、買おうっかな)
そんなことを考えながら、平台の上の服をたたんでいると、店の横手の方からお客さんが店の中に入ってきた気配がしました。
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ〜!」
条件反射になった言葉を口にすると、店の奥にいたスタッフも顔を上げて、追唱しました。
ところが
店の中には誰もいません。
「も〜、Aちゃん!ヤダァ!」
正社員のスタッフは、可笑しそうに笑います。
「あれぇ?」
(おかしいなぁ)
その時はそれで終わったのですが、しばらくして、やはり暇な昼下がりの日、誰か人が入ってきた気配で声をかけましたが、また誰もいなかったそうです。
「あれぇ?まただ〜!」
その時、一緒にいたのは、前回の新人さんのスタッフではなく、サブ店長さんや古参のバイトさん達だったそうなのですが。
「おかしいなぁ、こう髪の毛がボブで……」
Aが手振り身振りで、目の端を横切って行ったお客さんの風体を言うと、皆の顔色が、明らかに悪くなっていくのです。
「そうそう!ボブでね!こういう服よね!」
中の一人が大きく頷きます。
気がつくと、隣の店の女の子が呼ばれてきています。
「うちの店にも来るの!そのボブの子」
その店舗の入っているビルの店では、前々から、同じことが起きていたそうです。
ふっとした時に、目の端をその子が横切って、「いらっしゃいませ」と声を出して、顔を上げると誰もいないそうです。
そのビルの屋上から、昔、飛び降りた女の子がいたという噂があり、その子では無いかと内々では囁かれていたそうです。
その後、スタッフの提案で、お祓いがされたそうです。
Aは二度とそこのバイトをしなかったので、結末は分かりませんが、もし、中国地方のアパレル店舗で、見えないボブの女の子を目の端で捉えることがあれば……
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