第4話 龍

 私は、信長公推しですので、安土城跡をたまに訪れます。

天主跡から眺める琵琶湖も趣きがありますが、対岸の和邇から安土城の辺りを眺めるのも、また良いものです。

 

 時の壁の向こうの、朝倉攻めに向かわれる織田軍の背中を見るように蒼く迫る山々を眺めたり、遥か昔に歩まれた道を踏みしめたり、時空に思いを遊ばせていました。


 柔らかな光を受けて、煌めく琵琶湖の湖面を眺めながら、のんびりと気持ちの良い昼下りです。

気がつくと人影は消え、波の音と、クワックワという鳥の声が聴こえてくるだけです。


湖面に遊んでいた鳥が、空へ飛んで行きました。


ふと、気がつくと、目の前に、とんでもなく美しいモノが通りすぎていっているのに気が付きました。


それは流れる水でした。

流れる水が、一つの形を作って、それが連続しています。

それは……鱗に見えました。

キラキラ、キラキラ、光を受けて、流れる水の鱗が、私の前を通り過ぎて行きます。


目を上げると、そこには、細い透明な水の鬣をはやし、虹の色を湛えた瞳を持つ、龍の姿がありました。


それが光り輝きながら、目の前を通り過ぎて行きます。


そして、その先に白いブラウスを着た、小柄な女性が居ました。


ああ、あの美しい龍は、あの人の龍なんだな……と不思議に、そう感じました。


その人が近づくと、龍の姿は消えていました。


後で聞いた話ですが、芸術系の方を守護する龍は、白い龍だそうです。

あの女性はアクセサリー系のデザイナーさんだったので、きっと発展してるでしょうね。

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