第50話 1枚のコイン

 又聞きで、非常に曖昧な話になります。

その上話をまとめていて、なんとも言えない奇妙感がお伝えできてるのか、自信がなく……

力量不足で、本当にすみません。

ちなみにこのA氏は、ミカン畑の「先輩A」です。



───────


 Aさんは大学時代、Bさんという同級生がいました。Bさんはとてもマイペースで、授業としてグループで何かするという時も、悪気はないようなのですが、勝手にことを進めるようなところがありました。また、言動も個性的というより、くそ真面目な変人という感じで、変わった人だなぁと思われていたそうです。


とはいうものの、Aさんの通っていたのは、芸術系で、他の大学ならヒソヒソされていたかもしれませんが、個性の塊みたいな人々が集まっていましたので、先生を含めて、そう気にする人はいなかったそうです。


そして時が流れて無事に卒業し、就職する人は就職して、Aさんも働き始めました。


Aさんが久しぶりにBさんを見かけたのは、卒業後しばらく経った頃でした。

某人気カフェでコーヒーを飲んでいると、Bさんのような人が近くに座っているのに気がつきました。Aさんはスルーしようかとも思ったのですが、なんとなく好奇心から声をかけてみたそうです。


BさんはAさんのことがわからないようでしたが、隣に席をあけて、座るように勧めてくれました。

彼がそんな社交的な振る舞いをするとは思わなかったAさんは、とてもビックリしました。


「丁度良い。誰かに話しておきたいと思っていたんや」

Bさんは、Aさんの方も見ず、呟くように言いました。

「運命かな。」


厨二くさい……

普通ならそう思うだろうに、彼の変人オーラにそんな言葉は浮かばなかったそうです。


「これを見て。」

Bさんは一枚のコインを出すと、それをAさんに渡しました。


それはなんの変哲もない、百円玉でした。

Aさんが困惑しつつ、裏表ひっくりかえしつつながめていると、Bさんは細い爪で一点をコツコツと叩きました。


「え?これ偽造コイン?」

Aさんは、ますます困惑してしまいました。

それは絶対ありえないものが刻まれていました。

しかし、少なくとも、Bさんは道徳の教科書や、ボーイスカウトとかが推奨するような非常に真面目で、正義感が強く、ウケ狙いで嘘をついたり、変な冗談をいう人ではなかったのです。


「本物。」

そういうと、Bさんはその硬貨を取り戻し、席を立ちました。

「え?本物って、お前、そんなはずないだろ?」

唖然としているAさんを一度振り返ると、

「世の中はこれから、SFのようなことが起こる。想像できる備えをしておくといいかもな。」


ニヤと笑うと、足早に店を出て行ったそうです。


慌てて、その跡を追おうとしたAさんですが、集団が入っていて、見失い追うことができなかったそうです。



Bさんが持っていた硬貨ですが、年号ではなく西暦が、しかも未来のものが書かれていたそうです。

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