第52話 電話の向こう2

 51話の続きで、AさんがBさんより聞いた話です。前回に続き、フェイクが入っています。


これはBさんがおばさんから、聞いた話になります。


  Bさんのおばさんは三人兄妹で、1番下の妹は少し歳が離れて生まれたそうです。

おばさんが高校生の時に、かねてより体を悪くしていたお母さんが亡くなってしまいました。

おばさんとBさんのお父さんは、勿論ショックだったのですが、下の妹がまだ10歳にもなってなかったので、みんなで力を合わせて、フォローしていこうと決意したそうです。


ところで、お母さんがここ数年、入退院を繰り返していたために、お母さんの父母である、おじいさんとおばあさんが家の近くに引っ越してきて、なにかと面倒をみてくれていたそうです。


妹はおじいさんとおばあさんの家に帰り、上の2人が帰宅したら、迎えに行くという形で、それはお母さんが亡くなってからも変わりませんでした。


その日はたまたまおばさんとBさんのお父さんが、揃って迎えに行きました。


するとおばあさんが、

「あら?じゃあ、今日はお父さんなのね。」 

と言いました。

2人は意味がわからず、おばあさんに問いかけると


生前、お母さんは体調が良い時には夕方になると、妹に電話をかけてくれていたそうです。

それは亡くなっても変わらず続いていたので、てっきり上の2人、あるいはお父さんがしてあげているのだと思っていたということでした。


丁度おりしも、妹は電話をしているところだと言うので、2人は家にあがり

「ねぇ、妹ちゃん。それ、お父さん?」

と聞くと

「お母さんだよ!」

2人は顔を見あわせると

「じゃあ、私たちも替わってほしいな?」

「いいよ!お母さん?お姉ちゃんたちにもかわるね?!」

そういうと、受話器を差し出してきました。


「もしもし?あの……おかあさん?」

おばさんは震える手でうけとると、声をかけました。

しかし応えはありませんでした。

でもおばさんは、電話の向こうにお母さんがいるように感じたそうです。


それはBさんのお父さんも同じだったらしく、

「お母さん、ありがとうね。俺ら、がんばるからね。」

と泣きながら、声をかけていたそうです。


なお、お父さんはお母さんが電話していたことを、看護師さんから聞いて知っていたそうですが、自分が代わりにかけようという考えは浮かばなかったそうです。


それからしばらく、その電話は時折かかり続け、気がつくとかからなくなっていたそうです。



 また、前回の話に戻りますが、その話をしてBさんはAさんに、意識がなくなっている時に、Aさんの電話に出たのかもしれないと言ったそうです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る