第38話 大好きな人のために
これは38話のBくんが亡くなった後の話です。
Bくんが亡くなって、数年経った頃のことです。
おばあちゃんの体調が悪くなり、入院をすることになりました。
一旦落ち着いたのですが、生命に危険がある状況になり、親族に連絡がありました。
知らせを受けたAも、家族と一緒にお父さんの運転する車で、病院に急ぎました。
ところが、その時間帯は混んでいないはずの道が、ちょうど緊急事態宣言が解除になった土日だったせいか混んでいて、いつもより遅くなりそうでした。
「こんな日にかぎって……間に合わないってことないよね?」
妹さんが手を握り締めながら、涙目で聞いてきました。
「困ったね。下手したら小一時間くらいかかりそうだ」
お父さんも情けなさそうに言います。
「脇道とかに入れないの?カーナビは?」
「カーナビは、何メートル先とかいうのが苦手でよく間違うし、反対に時間がかかるかもしれない」
お父さんは申し訳なさそうに言いました。
みんなおばあちゃんのことが大好きでしたので、車の中は重苦しく、沈痛な空気が流れていました。
(お願い!Bくん……おばあちゃんに会わせて!)
突然思いついて、Aは心の中で祈りました。
Bくんのことを思い出すと、優しいBくんとおばあちゃんとの思い出が胸に溢れてきて、涙が溢れそうになりました。
どのくらい、そうしていたでしょうか。Aは妹の悲鳴のような声で、ハッと目を開きました。
「あ!あれ、Bくん?」
目を開けると、Bくんが少し向こうに立っていて、斜め右を指差しているように見えたそうです。
「お、お父さんにも見えるよ!」
お父さんもびっくりして、叫びました。
「ね、お父さん!あれ、あそこに移動しろってことじゃない?」
Aが催促するとお父さんも頷いて言いました。
「よし!頑張ってみるよ」
それから、Bくんの指差す通りに車を移動させたA達は、普段程度の時間で病院に着くことができ、おばあちゃんに無事に会えました。
その後おばあちゃんはみんなに見送られ、Bくんのもとへ旅立って行かれたそうです。
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