第3話 黒猫な俺
さて…… どうするかな? 爺ちゃんが消えた後も部屋の中の照明はまだついたままだった。
部屋の中にある扉は三つ。
赤、青、黄色の三色だ。
信号かよ!
それなら、進めは青一択だな。
黄色や赤だとヤバイ状況になりそうだしな。
そして俺は青い扉を開けてみた。
◇◆◇◆
「なんだこれは?」
部屋の中に入った俺は、戸惑った。
ここは巨人の国なのか?
明らかにテーブルやベッドの様な物があるのは確認できるのだが、俺の目線から見ればベッドの高さでも俺の視線の高さの三倍近い。
窓や扉もやたら高さが高い。
だが、ちょっと違和感を感じた。
俺何で四つん這いで立ってる?
足元に視線を落とす。
毛が生えてた。
しかも黒い短毛だ。
前足を上げてみた。
「肉球かよ!」
どうしたもんだ…… 鏡は無いのか? 俺は部屋の中を見回す。
鏡は見つからなかったが、金属製の武器らしきものがあった。
光沢のある輝きを放ってる。
なんだこの武器?
そう思った瞬間脳裏に情報が流れた。
【ミスリルエッジ】
攻撃力 百 プラス基礎ステータスの攻撃力を二十パーセント高める。
魔法融和性が高く発動媒体にも出来、魔法を纏わせて使うことも出来る。
ん? 中々最初に手に入る武器としてはぶっ壊れ性能じゃねぇか?
俺のラノベ知識から導き出した答えはそう思わせた。
待てよ…… この武器が鑑定出来たって事はだ。
『ステータスオープン』
奥田俊樹
種族 黒猫
レベル 1
攻撃力 10
防御力 10
敏捷性 20
魔法攻撃力 5
魔法防御力 5
知能 10
運 10
SP 0
スキル 身体強化
称号 異世界からの訪問者
こ、これは……
喜んでいいのか、悲しむべきなのか非常に判断に迷う。
まずは、異世界転移出来た事は素直に喜ぼう。
だが……
何故、黒猫なんだ。
ここで考えても仕方ないか……
自分で自分の姿が黒猫である事を確認してしまうと、なんだか猫っぽい動きが出来る様な気がしてきた。
このミスリルエッジも両側に鋭い刃がついて真ん中に加えるのにちょうどいいような取っ手部分がある。
きっと…… この姿に合わせた武器なんだろうな?
口でミスリルエッジを咥え、ベッドの上に飛び上がってみる。
流石、猫の身体だな。
結構高くジャンプ出来そうな気がするぜ。
部屋の中を見渡してみても、これ以上は何も無さそうだし、外に出てみるか……
◇◆◇◆
俺は、木製の窓を外側に押し上げるよな感じで、開けてみると街の様子を見る事が出来た。
結構人通りが多い。
お約束の中世ヨーロッパの様な街並みだ。
レンガ造りや石造りの建物が中心で、石畳の道路には馬車の姿もある。
困ったな……
外に出たいが、ミスリルエッジを咥えた状態で外に出ると、危険動物で簡単に殺されそうだぜ。
レベル1だしな。
しまう事は出来ないのか?
そう思った時に、脳裏に再び情報が浮かんだ。
『インベントリを使用しますか?』
OK、やっぱりこれはお約束だよな!
だが…… スキルでも別にインベントリなんて書いてなかったな?
って事はだ…… 怪しそうなのは称号か?
鑑定できるのか?
『称号 異世界からの訪問者』の詳細と念じてみる。
異世界から訪れた者に与えられる称号。
鑑定、インベントリ、言語理解、成長促進、ラーニングの能力が与えられる。
ほう、十分にチートな能力っぽいな。
取り敢えずインベントリにミスリルエッジをしまって、窓から外に出てみた。
五メートルほど離れて振り返ると俺が出て来た家の姿が消え、そこには石造りの建物があった。
「え? ヤバイ戻れるのか??」
そう思い、慌てて引き返す。
石造りの家の側まで戻ると、一瞬視界がぼやけて俺が出て来た木造の小屋が現れた。
中々の謎仕様だぜ。
まぁ戻れる事が確認できたので、この石造りの家の位置をしっかりと記憶して、街に散策に出た。
まぁ何て言うか、正に絵に描いたような異世界の街だな。
道行く人たちの種族は七割ほどが普通の人間かな。
残りの三割程は、エルフ、ドワーフ、獣人って感じだ。
獣人の女の子の耳としっぽがたまらなくそそられるぜ。
首筋に入れ墨があり、比較的みすぼらしい服装をしているのは奴隷なのかな?
騎士のような姿の人も居るし、貴族っぽい恰好の人も居る。
これは…… 小説のネタには困らないかもな。
しかし建物の中には流石に入れないよな。
どうしよう? 狩りをするにしても少しは情報が欲しいよな。
きっとこの街には、冒険者ギルド的な場所が存在してるはずだ。
その場所を見つけて、冒険者っぽい人間に付いて行くのがベストかな?
それから三十分程の時間、街を彷徨っていると、いかにもな建物を見つけた。
看板が出ている。
『冒険者ギルド ファンダリア支部』
言語理解のお陰で普通に日本語に認識されるな。
中に入る事は出来ないので、今から冒険に向かいそうなパーティを待つ事にする。
三十分ほど眺めていると何組かは出てきたが、基本ガチムチのおっさんが多くて、いまいち着いて行く気にならなかった。
まぁあまり選り好みをしてもしょうがないか? 次に出て来たパーティーに付いて行こう。
そう決めて待つと二分後くらいに四人組がギルドから出て来た。
男一人に女の子三人まだ若い子達だった。
『ハーレムかよ! もげれば良いのに』と心の中で突っ込みつつも付いて行く。
歩きながら会話をして居る声が耳に入る。
「あのぉ? 本当に私なんかを連れて行ってもらって良かったんですか? 若手では一番の実力と言われてるジョニーさんのパーティに」
「ああ、可愛い女性であるだけで俺の側に居る資格は十分さ、それに君は回復魔法が使えるんだろ? うちはリンダとジェシカがどちらも攻撃特化だからサポート出来る女の子をずっと探してたんだよ。まだレベルは低いだろうし今日はゆっくりとうちのパーティに慣れて貰えればいいよ」
俺はそんなやり取りを聞きながら、目立たない様に付いて行った。
でも、ジョニーとヒーラーの女の子の会話を聞きながら、他の女の子二人がちょっと黒い笑みを浮かべてたのが気になるなぁ……
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