第88話 買いまくりの一日

 翌朝、三人で朝ご飯を食べるとタクシーを呼び小倉駅へと向かった。

新幹線の切符を買いホームに上がると、まだ少し時間が有ったので今のうちに香織に頼んで司法書士の赤城先生に連絡を取って貰った。


『赤城先生、朝早くからすみません』

『構いませんよ、もう事務所に来ていましたし』


『お願いがあるんですが、不動産物件の取得をしたいので手続きその他の事をお願いしたいのですが、よろしかったでしょうか?』

『構いませんが物件などはもうお決まりなのですか?』


『はい、不動産会社の所有している物件で、既に先方との話も済んでいますので、登記関係や税金関係の事は私じゃさっぱりわからないから、後は間に入って頂いて取引を完了させて頂きたいと思っております』

『そうですか。了解しました。早速先方へ連絡を差し上げて、確認後に着手させて頂きたいと思います』


 俺が鮎川の名刺を香織に渡し、連絡先などを伝えて電話を切った。

 俺は、その間に同じように、鮎川に連絡を行い今日中に赤城と言う司法書士の先生から連絡が入る事を伝へ、その後の物件取得までの手続きを赤城先生とやり取りして欲しい事を伝えた。


 さぁ、今日は博多で思いっきり豪勢に買い物するぞ。


「なんだかすごい楽しみだね。なんか考えただけでワクワクしちゃうよ」

「あ、そう言えばさ俊樹兄ちゃんクレジットカード作らない?」


「持ってるぞ普通に、この間会社用の法人カードも作ったじゃん? あれも違うのか?」

 そう言ってJCBの普通のカードを見せた。

「そう言うのじゃ無くて、ラグジュアリーカードっていう種類の専属のコンシェルジュが付いてたりする、ハイクオリティカードだよ。法人カードは別に今のでいいけど、私と俊樹兄ちゃんでそれぞれラグジュアリーカード作っておいたら、何処の買い物でも面倒が無くなるから」

「まぁ香織が有った方が良いと思うなら作ろう」


 俺がそう返事をすると香織がスマホをいじって「ここに申し込むね」と言って俺も同じサイトを開いて申し込みを済ませた。


「それだと良い事有るのか?」

「使う金額が大きければ大きい程、利点はあると思うよ。今回みたいな高額の買い物したい時なんかは事前にカード会社のコンシェルジュから、連絡入れて貰ったりしてると特別な商品なんかも見せて貰いやすいとかあるみたいだし」


「へぇ、セレブな世界の構造が良く解らないからその辺は任せる」


  その会話が終わる頃には新幹線は博多駅へと到着した。

 地下鉄で天神まで出るとまだショップが開店する時間には早いので、カフェで時間を潰しながら、今日行く予定の店を聞いた。


「最初にハリーウインストンとショパールのショップを見たいよね。後はデパートの時計フロアを廻って、全部で百個くらい買えば取り敢えずは大丈夫そうだよね」

「香織お姉ちゃん私も何個か決めていいかな? ちょっとちやほやされてみたいし!」


「全然構わないよ、どんどん決めて貰って良いからね。俊樹兄ちゃんも男性用のは決めて行ってよ?」

「ああ、俺は小市民だから、逆にちやほやされるのは苦手なんだがな」


「すぐ慣れちゃうよ」


 そう言いながら、時間も丁度良くなったので、香織に付いて百貨店巡りが始まった。


 時計に一千万円超えるような値段の物が存在する事に結構ビビったが、それでもどんどん選んでいく香織と飛鳥は凄いと思ったぜ。

俺も男性用の時計は選んだけど、結局セイコーとロレックスの二つのブランドに絞った。だって他のブランドのはお洒落なんだけど、肝心の時間が見にくい気がするしロレックスのごつさが向こうの世界にも合ってる気がするからな。


 女性的な考えだと、アクセサリーの一つだから全く基準が違うんだろけどな?


 それでも俺もロレックスでダイアが散りばめてあるような時計も何個か選んだ。

 きっと王族とかが買いそうだからな。


 なんだかんだで午前中だけで一億円を超える額の買い物をしてしまったぜ。

 そのすべてを現金で支払った俺も俺だけどな。


 香織がロレックスのショップで一番高額だった時計を見て「これも買っとけば?」って言って来たけど、新品価格で4880万円って値段を見て流石に時計でその値段はどうなの? と思ってちょっと保留にしてしまった。


 微妙に小市民だよな。


 昼過ぎに青木から電話が掛かって来たので、タクシーで博多港に近い場所にある青木が支店長として赴任して来た外車専門の代理店へと向かった。


 海外の高級車を取り扱う店の責任者らしく、イタリアブランドのスーツに身を包んだ青木の姿は、男の俺が見ても格好いいと思ってしまったぜ。


 俺達が到着するとロビーの真ん中のソファーに案内され、高級そうなショートケーキが運ばれてきて紅茶とコーヒーのどちらが良いか尋ねて来た。


 俺はコーヒー、香織と飛鳥は紅茶を頼み、青木は車を回してくると言って席を離れた。


「パパ、青木さんって凄いダンディなおじさま感出してるよね。カッコいいな」

「俺もあんな恰好した方が良いか?」


「どうかな? パパは普段のパパでも十分カッコいいよ?」

「ちょっと疑問形入ってたぞ?」


 ケーキを食べた後は、店の敷地に並んでいた車を一通り見て回ったが、俺が気になったのは、やっぱりフェラーリだな。

 残念ながらランボルギーニは置いて無かった。


 青木が俺のレンジローバーを正面に回して来た。

 ホワイトのボディにシルバーのアクセントが入っていて、ロングボディの車体は迫力満点だ。


「パパ、この車もカッコいいね凄いよ」

「気に入ってくれたか? 安心したぞ」


 ナンバープレートは1と書かれていて、ちょっと嬉しかったぜ。


「青木。折角だからこの車で一緒に昼飯出掛けようぜ」

「おう、ちょっと受付の子に伝えて来るな」


「支払いは振り込みが良いか? それともここで現金で払おうか?」

「税込み三千八百万くらいになるから数えさせたら『苛めですか?』って言われてしまいそうだ。振り込みで頼む」


「解った。しょうがないな」


 全従業員に深く頭を下げられながら、販売店を出発しキャナルシティに併設するグランドハイアット福岡に向かった。


「飛鳥ちゃんは奥田の娘さんなんだって? 初めまして青木です。お父さんに似なくてよかったね」


「おい、青木三千五百万の車買った顧客にその扱いは酷いだろ?」

「こんな感じの方がお前も気楽だろ?」


「まぁそうだな」


 ランチでも一人五千円するコースを頼み、会話を楽しみながら食事をした。


「青木は結婚してたんだっけ?」

「いや、お前と同じだ。転職した時に離婚したから今は一人だ」


「再婚とか考えないのか?」

「そうだな、ここでそれなりの役職になれたし、そろそろいい出会いがあれば考えてもいいけど、一人も慣れれば気楽なんだよな」


「そっか、話は変わるけどさ、高級車専門のレンタカーって需要有ると思うか?」

「お、俺にとっては、凄い美味しい話に聞こえるな」


「少し余裕があるから色々な車に乗って楽しみたいと思うけど、体は一つだし色々買っても勿体ないだろ? だから乗って無い車は貸してしまえばいいんじゃないかと思ってな」

「それなぁ、結構保険代とかが高くなるから、商売として儲かるのか? って聞かれたら、儲かるならうちの会社がとっくに手を付けてる。としか言えないな」


「そうだろうな」

「でも空いてる車を貸し出して、少しでも投資回収をしようって考えなら、全然ありだと思うぞ。うちは売るのがメインだから、その方が確実に利益を出せるってだけだからな」


「さっき少しだけ見たけど、中古も結構数揃ってたよな」

「ああ。常時五十台は在庫があるからな」


「飛鳥の好みの車を一台選ばせようと思うから、食べ終わったら案内してくれ」

「まじかよ、レンタルするならそれでも数が全然足らないだろ? もう何台か見繕ってくれてもいいんだぞ?」


「そうだな。まとめて買ったら安くなるとかあるのか?」

「その辺りは当然考えるさ。でも992とレンジローバーもレンタル出すのか? そうなると折角のナンバーも取り直しになるけど」


「あ、それがあるんだな。今の二台はこのままで、他に買う中古だけでやった方が良いかな」

「そうだな、そっちの方がお薦めだ。取り敢えず一度うちのショップに戻って気に入ったのが有れば頼むぞ。無ければ東京と横浜の在庫からも運べるし、オークションで好きなの引っ張って来るからな」


 昼食後は青木の店に戻って、取り敢えず飛鳥と香織に一台ずつ気に入ったのを選ばせてみた。


 飛鳥は、さっき俺が気になってたフェラーリを選んだ。

 458イタリアと言うモデルで五年落ちだったけど、走行距離も少なく傷一つない感じで大事に乗られていた感じがする。

 値段は、中古で二千三百万程だ。


 香織は英国車のアストンマーチンを選んだ。

 DB11と言うモデルでまだ三年落ちだった。

 値段は一千八百万程だ。


 二人ともスポーティなのを選んだから、俺は渋い所を狙うかと思いロールスロイスゴーストと言う車に目が行った。

 十年落ちだったけど、十万キロも走って無いし内装も十分に綺麗だ。

 ちょっと優雅な感じもするし、何といってもブランド名がロールスロイスだしな。


 青木に三台とも買うから納車の準備して置いてくれと言ったら、流石にドン引きしてたぜ。

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