第87話 頼まれちゃったな

「そうですか……奥田さんはその力をこの世界で使ったりはしないんですか?」

「使わなければならないような状況が来れば使うかもしれませんが、今は平和な日本ですから過ぎた力は必要ないと思ってますね」


「私達がどうやってこの世界に渡って来たのかというご質問ですが、この大島が私達の世界のことわりつかさどる存在と契約した事による能力です」

「それは世界の管理者の様な存在ですか? いわゆる神?」


「その辺りは私達もはっきりとは断言できませんが神の様な存在ですかね」

「それで複数存在する並列世界ですか? その中からこの世界を訪れ、私を見つけ出したのには理由が?」


「そうですね当然気になりますよね。並列世界の構築に関してあらゆる次元の、あらゆる世界の中で最も豊富な知識を持った存在が、この世界に渡った事が分かりまして。彼なら異なることわりへの手がかりも見つけてるのでは無いかと思って伺ったのです」

「誰ですか? それ」


「こちらに来てから知った事なんですが……普通にこの世界では死んだことになってると思いますが、『坂本竜馬』という人物ですね。幕末の志士としてこの世界でも結構有名な存在の筈ですが」

「ああ、なんとなく話が繋がった気がします」


「そうですか、それでは私の探している『柊心愛』と『真田希』の情報は手に入りそうですか?」

「恐らくですが大丈夫かと思います。今は何も言える事は有りませんので。一週間後に連絡を差し上げるという事でお願いします。私も色々と忙しいので」


「ありがとうございます。では一週間後に連絡をお待ちしています」


 俺は冴羽と大島さんと言うマリアを凌駕する胸部を備えた女性と別れ、ハスラーに乗り家に帰った。


 ◇◆◇◆ 


「ただいま」

 倉庫に992が止まっていたのを確認していたので、俺は玄関を開けて部屋の中に聞こえる様に声を掛けた。


「お帰りなさいパパ」

「俊樹兄ちゃんお帰り、デートは楽しかった? でもバイクは置いてあったけど一度帰ってからまた出かけてたの?」


「ああ、デートのつもりは無かったんだけどな。久しぶりにバイクで走るのは気持ちよかったぞ。今度、香織にも紹介するな。仕事の件も少し手伝ってもらう約束もしたし、お互い顔を知っておいた方が何かと良いだろうからな」

「ふーん。まぁ俊樹兄ちゃんがそう思うなら私は全然嫌じゃ無いけどね」


「パパ、私にも紹介してくれるの? 香織姉ちゃんに続くお義母さん候補として私も会って置きたいな?」

「だから違うって」


「今日は香織お姉ちゃんと一緒に、ポルシェで鳥栖まで行ったんだよ。香織お姉ちゃんが結構なスピード狂だって解ってびっくりだよ」

「だってさ、リュミエルですっかりレベルアップしちゃってるから、動体視力や反応速度が全部向上してるし、それに応えてくれるマシンが有ったら、やって見たくなるでしょ?」


「やっぱり香織もかなり能力はアップしてるんだな。オリンピックとかF1レーサーを目指すとか言い出すなよ? 流石に不自然だから」

「そりゃぁ三十過ぎてからいきなり覚醒しました! って言ったら不自然極まりないけど飛鳥ちゃんならアリなんじゃない?」


「まぁなぁ……飛鳥はそんな事で目立ちたいか?」

「嫌だよ、チュールちゃん達と遊ぶ時間の方が絶対楽しそうだし、自分で努力して手に入れた能力じゃ無いんだから、一生懸命人生掛けて練習してきた人たちに悪いじゃん」


「それでね俊樹兄ちゃん。今日は鳥栖のアウトレットモールまで行って来たんだけど、駐車場にポルシェ停めて二人共お洒落してセレブっぽい装いで歩いたら、凄い声かけられたんだよ」

「おいおい、知らない奴について行ったりしてないだろうな?」


「流石にそれは無いよ。でもお化粧品や下着関係なんかは結構大量に買っちゃったよ。会社のカードで払って置いたけど良いよね?」

「ああ、それは全然構わないけど、会社の口座の残高は大丈夫か? 足りない様だったら俺が坂口さんに頼んで五億くらい会社の口座に入る様にしておくぞ? 出所のはっきりしてないお金を余り使ってしまうと、税務署がうるさそうだからな」


「そうだね、少し余裕があった方がいいかもね」

「解った」


「明日は何時から行くの?」 

「そうだな、向こうで車引き取りがあるから、朝八時だいの新幹線で行きたいな。俺は車屋の青木と少し飲みたいから、博多での用事が済んだら香織が運転して帰ってて欲しいけど大丈夫か?」


「全然、大丈夫だよ」

「飛鳥、次に買う車を飛鳥に選んで欲しいから、何でも好きな車決めておいてくれ」


「え、マジで? 超嬉しいんだけど」

「あ、香織。ここから北に三百メートルほど行った所にでかい倉庫が有ったの知ってるか?」


「国道沿いの通りの所?」


「ああそうだ」

「知ってるよ。前にリサイクルショップやってた時に何度か行ったし」


「そうかそれなら話が早い。あそこも鮎川の不動産屋が扱ってたから買ったぞ。今からはレギュラー商品って言うか、向こうに頻繁に持ってくような物は卸の業者から、直接取引してあの倉庫に放り込んどこうと思うんだ。荷受けとかは鮎川がやってくれるって話だし」

「へぇ、本当にちゃんと仕事の話してたんだね」


「なんだ疑ってたのか?」

「そりゃぁね」


「食事はどうする? まだだろ?」

「へへぇ、香織姉ちゃんと一緒に色々買ってきて作ったんだよ」


「へー凄いじゃん。それなら早速食べようぜ。もう腹ペコだよ」


 それから俺達は三人で食卓を囲み、手作り料理と旨いビールを楽しんだ。


「ごちそう様! 香織、料理苦手だって言ってたけど全然美味しかったよ」

「殆ど飛鳥ちゃんだよ。私は下ごしらえとかだけだから」


「パパ。見直した?」

「おう、見直したって言うか、予想以上に素敵な娘に育ってくれてて嬉しいぜ」


「ある意味ママに感謝だね。ママにはいつも、買い物も、作るのも一緒に手伝わされてたからね『ママだって仕事しながら頑張ってるんだから手伝いなさいよ!』って言うセリフを一日三回は聞いてたからね」

「それは、まぁしょうがないな。でもそのお陰で俺がうまい料理食べれるなら、少し晃子にも感謝だな」


 そんな話をしてると、車屋の青木から電話が掛かって来た。


「どうした青木?」

「明日の納車は取りに来るで間違いなかったよな? 朝一でナンバー取って来るから、昼前には大丈夫だけどな」


「ああ、間違いない。昼前だな。朝から博多には行ってるから準備できたら電話してくれ、そのタイミングで向かうよ」

「了解だ。この車一台売れただけで、今月の販売額首位はほぼ確定だから、本当に助かったぞ」


「まぁ転勤祝いだからな。お前のとこって中古も扱うんだよな?」

「主に下取り車が中心だけど、無い車種だったらオークションから引っ張ってきたりもするぞ」


「そうか、明日は俺の従妹と娘も一緒に顔を出すからな。ご機嫌取ってたらいい事が有るかも知れないぞ?」

「マジか。美味しいケーキでも用意しとくよ」


「なんだかちょっとの間に、すっかり一流営業マンになったな。支店長を任されるだけはあるって事か?」

「元々アポ取りだけは、ずっとトップだったからな。いざ車を前にしちまうと車愛が強すぎて語りが熱くなっちまうんだよ」


「駄目とは言わないが程々にな。明日の夜は明けておけよ。一緒に中洲に出ようぜ」

「ああ、楽しみにしとく」


 その後はシャワーを浴びて、小説の続きと、キャプチャー画像の処理を頑張ったぜ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る