第63話 久しぶりの我が家

 帰りの道中では香織は二度ほど日本に戻ってラジオの仕事をしに行ったが、俺は一度も帰らずに、ずっとサンチェスさんに同行していた。


 街道沿いに現れる獲物も倒し続けて帰ったので、ファンダリアに到着した時点で俺のレベルは63まで上がっていた。


 マリアのレベルも28になっていて、リュミエルのレベルは39だ。

 リュミエルはレベルが30を超えた時に新たな魔法を習得していた。


 風魔法の範囲魔法のトルネードと、補助魔法だ。

 現時点では、シールド、マジックシールド、ブースト②と三つの能力が使える。

 ブーストはバフ系の魔法で、基礎ステータスが割合で上昇する優れものだ。

 現状②で二十パーセントの上昇効果がある。


「ラビットホーンの皆さん今回はありがとうございました。皆さんのおかげでいっぱい勉強が出来ました」

「俺達の方が助けられる事ばっかりだったよ。次に一緒の依頼を受ける事が合ったらよろしく頼むな」


「はい。あ、ちょっとお待ちくださいテネブルが、モンスターの売却代金を半分受け取って欲しいんですって」

「あぁそれな、前にも言ったけどほとんどテネブルが倒したんだしいいよ」


「受け取ってくれないなら一緒の依頼受けないって言ってますけど……」

「ああ、じゃぁしょうがないな受け取るよ。装備に注ぎ込んでもっと強くなっておくからな」


 結局半額と言えども五百万ゴールド程の報酬を受け取る事になったラビットホーンのメンバー達は抜群の笑顔で次の再開を約束して帰って行った。


「マリア、俺と香織も三日間ほど自分の世界で用事を済ませて来るから、マリアはチュールちゃんとバルバロッサの女性達の事をよろしく頼むね」

「うん解った、ゆっくりしてきてね」


「テネブル、リュミエル、早く帰って来てね」

「チュールちゃんも元気にね」


 って返事したけど、「ニャァニャニャア」「バウワウワン」としか聞こえなかったはずだぜ!


 そして俺は久しぶりに日本へと戻る。

 ちょっと色々忙しい三日間になりそうだ。


 ◇◆◇◆ 


「爺ちゃん戻ったよ」

「俊樹、今回は随分間が空いたのぅ」


「その分香織が帰って来てただろ」

「うむ、香織が言っておったが、アルザスも一緒に戻って来たのか?」


「うん、爺ちゃんの話したら古代魔法を覚えるまで俺に付きまとうみたいな事言ってたぞ。あ、爺ちゃん、アルザス先生に転移門一つ使わせても良いか?」

「まだ自力では出来ぬのか、修業が足らぬのアルザス。しょうがないのう一つ作っておいてやるぞ」


「きっと喜ぶぞ、爺ちゃんはまだ向こうの世界へはいけないのか?」

「ああ、今は、わしの依り代で使うオートマタを開発中じゃが、とにかく材料が色々掛かるからの。アルザスに仙桃と聖水が欲しいと伝えておいてくれ」


「あ、爺ちゃん。それならあるぞ。エリクサーの材料に使おうと思って買った」

「持っておるのか? 俊樹、それを譲ってくれ。それとな、アルザスから聞いたのであろうが仙桃はいいとして聖水ではエリクサーは超低確率でしか成功せぬぞ。ユグドラシルのしずくを手に入れねばな」


「そうなんだ。ありがとう」

「防具も出来ておるぞ。ほれワイバーンの皮をベースにオリハルコンで補強した腹巻じゃ。腹側にしか無いように見えるが、防御力は全身上がるからの」


「ありがとう爺ちゃん」

「香織のもあるぞ。ビキニのトップ型の防具じゃ、滅多にないじゃろうが二本足で立ち上がった時の女性らしさを引き立てるフォルムを考えたぞ」


「装着した姿を想像すると微妙な気もするけど、ありがとうお爺ちゃん」

「爺ちゃん、魔核もそこそこあるけど今回はミスリルとオリハルコンをたくさん買って来たぞ」


「そうか助かる。全部出してくれ」


 結局三億ゴールド分のミスリルとオリハルコン、仙桃、聖水、魔核を合わせて全部で五億二千万円もの金額になった。


「俊樹も十分に金持ちになったのぅ。まだ冒険は続けるのか? 危険だと思えば辞めてもいいんじゃぞ?」

「いや、楽しくてしょうがない。たとえお金にならなくても続けたいくらいだ」


「そうか、くれぐれも気を付けるんじゃぞ?」

「心配してくれてありがとうな爺ちゃん」


 ◇◆◇◆ 


 俺は香織と共に家へ戻った。


「久しぶりにゆっくりできそうだな。まぁ俺は小説書いたり東京行ったりしなきゃならないが」

「え? 東京? 何しに行くの?」


「言って無かったっけ?」

「うん」


「書籍化の誘いがあって打ち合わせだ。香織も無関係じゃないぞ。晃子が香織の新番組の初回ゲストだろ?」

「それは聞いてるよ」


「その話で出版社が俺と晃子が元夫婦って気付いたみたいでな。晃子は俺のこと知らずに香織の番組の時にもう一人のゲストでラノベ作家のテネブルを指名したみたいで出版社で顔合わせもある」

「ええ? 大丈夫なの?」


「別に喧嘩して別れたわけでも無いし。俺は気にしない事にしたが、ちょっと飛鳥の事で聞きたい事はあるからな」

「そうなんだぁ……ねぇ、俊樹兄ちゃん。元鞘になればいいとか思ってる?」


「気になるか?」

「そりゃぁそうだよ」


「心配するな、それは絶対にないから」

「そっか。信じるよ。私はちょっと会社に行ってくるね。郵便物とかのチェックだけだけど」


「ああ解った。俺は画像加工して、明日の朝まで小説書くよ。睡眠は新幹線で取るから」

「じゃぁ帰りにデパートでちょっといいお惣菜とか選んでくるね。ビールとワインも」


 香織が出かけるのを見送ると、丁度不動産屋の鮎川さんが倉庫に来た。


「あれ? 奥田君の車に乗っていた女性って奥田君の新しい奥さんとか?」

「いや、従妹だ。ちょっと仕事の都合で今は此処で一緒に暮らしてる」


「へぇ、付き合ったりはして無いの?」

「なんだ、気になるのか?」


「アラフォー女はそんなネタでご飯三杯は食べれるよ?」

「確かに好きそうだな……」


「俺はもう一台別な車買おうと思ってるからな」

「お金持ちだねぇ」


「そう言えばさ、この倉庫なんだけど、俺がお金出すからシャッターを無線式で開閉できるタイプに買えても良いか?」

「全然いいけど安くないよ?」


「まぁ安く貸して貰ってるからサービスだよ」

「へぇ、格好いいね」


「今度食事行こうな、好きなとこ決めて一週間前くらいに教えてくれれば、都合付けておくから」

「解ったよ、楽しみにしとくね」


「あ、鮎川、不動産屋ならシャッター業者とか詳しいだろ? 紹介してくれ」

「うん。連絡入れさせるね」


 鮎川が帰った後に俺は写真の加工から初めて、がっつり小説の書き貯めをした。

 今回は王都のパーティの様子や、下着の着替えの様子なんかも結構大量にあるから読者受けが楽しみだな。


 辺境伯や王都の商人さん達の写真の印刷もしておいたよ。

 A3サイズで印刷してラミネート加工をしたものが一枚十万ゴールドで売れるから、結構なぼろもうけだ。


 次に行く時に転移門をアルザス先生の王都の家とファンダリアで借りる所に設置すれば移動も楽だしな。

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