第91話 帝都広いな!

 俺達は青い扉をくぐって拠点の部屋へと移動した。


「ちょっとテネブル、色々聞いて無い話がいきなりいっぱい出てきてびっくりしちゃったよ」

「ああスマン。向こうであまりこっちの世界の話をすると、どっからボロが出るか解らないから、話さなかった」


「テネブル、今からどうするの?」

「マリアと合流したら、サンチェスさんの所に顔を出して一度一緒に王都へ行く。その後はちょっとシエルに頼まなきゃならないが、帝国まで飛んで貰って着いたら転移門で、俺達三人だけで帝国に行く事になるな」


「マリアちゃんは行かないの?」

「護衛任務を受けて行くのであれば問題は無いんだけど、それだと時間がかかりすぎるから今回はお留守番だな」


「パパ! 私頑張るね」

「おう、今回はシエルが一番大事なポジションだから、よろしくな」


 俺はマリアに念話で連絡した。


『マリア戻ったよ』

『テネブル、久しぶりだね。三日も来ないから心配したんだよ』


『ごめんねマリア。今から合流したいけど何処?』

『今はビューティサロンでお手伝いだよ』


『解った。すぐ行くね』


 俺達がビューティーサロンに到着するとヤバい状況だった。

 女性ばかりが長蛇の列を作ってる。

 その行列を目当てに屋台が出店するほどだった。


「凄いな……」

「テネブル、日増しにどんどんお客さん増えて来ちゃって超大変なんだよ」


 びっくりだな、まさかここまでとは。


「シスターは大丈夫なの?」

「シスターもバルバロッサのお姉さん達も、みんな超楽しそうにやってるから大丈夫だよ」


「下着は、もう売り始めたの?」

「あ、それね。昨日売りに出したら、半日も持たずに全部売れちゃったよ」


「凄いな。こっちでは安い商品しか出していなかったけど、高いのでも売れそうな感じ?」

「あれば何でも売れると思うよ?」


「解った」


 俺はちょっと予定を変更する事にした。


「リュミエル、ちょっといいか?」

「どうしたのテネブル」


「リュミエルは明日向こう戻んなきゃいけないだろ?」

「うん。そうだね。オンエアがあるし」


「だから商品を王都で一度出したら、そのままこっちでマリアとシスターを手伝って下着関係の事とかをやってくれ」

「大丈夫?」


「うん。他の件はシエルと何とかするよ。一回サンチェスさんの所に行こう」

「解ったよ」


 俺はマリアと一緒にサンチェスさんの所に顔を出すと、すぐに一緒に出掛ける事に了承を貰った。


 そのまま、アルザス先生の家まで出かけて、一度王都のサンチェスさんのお店へ行くと、サンチェスさんだけしか入れない部屋へ、大量の高級時計と鏡、下着類、化粧品を出した。


「何と凄い量だな。これだけの物を売りさばけば、一体どれ程の金額になるか、想像しただけで身震いするぞ」

「サンチェスさん。オークションが終ったら、マリアの口座に入金をお願いします。それと魔法金属を出来る限り仕入れておいて頂けますか?」


「解ったその件は了解じゃ。値崩れを防ぐために少しずつ放出する事にはなるが構わぬか?」

「解りました」


 マリアとリュミエルはファンダリアの街に帰って行き、サンチェスさんは忙しそうに、お店の人に指示を出していた。


 そして俺はシエルにサンチェスさんから用意して貰った地図を見せて、帝国の首都に向けて飛んで貰った。


 鳩と黒猫なら何処に居ても全然不自然さは無いから大丈夫だよな?


 ◇◆◇◆ 


「うわー気持ちいいなぁ」


 私は今、王都から帝都へ向けての空を飛んでいる。

 透明化のスキルを使ってるから外敵に襲われる心配もなさそうだよ。


 二時間程飛んでいると帝国の街並みも見えてくるようになった。

大きな街だなぁ。

 王都と比べても倍以上はありそうだよね。


 上空から見ると正に碁盤の目の様に縦横にしっかりと道が通っていて中央部分に主要な大きな建物が集中しているような造りかな?


 街の大きさは、どうだろ一辺でも十キロメートル程はありそうな大きさかな? 形はほぼ正方形って言ってもいい感じだね。

 街の中央にある王城のような建物の横に大きな広場がある。

 恐らく騎士とかの練兵場的な設備かな?


 そう思ってみていると、とてつもなく大きな光の塊が、その広場を埋め尽くした。


「ヤバッ」っと思って慌てて街の中心部からは離れた公園の様な場所の木の枝に止まってパパに念話をした。


『到着したよ』

『了解だシエル。危険は無かったか?』


『到着までは大丈夫だったけど、ついさっき街の中央部分で凄い光が見えたから何かあったかもね?』

『すぐ転移門を広げてくれ、危ないから一人で近づくなよ?』


『はーい』


 念話を終えて転移門を広げた。

 パパは自分の転移門で拠点に戻って、そのまま私の転移門に入って来たみたいだ。


  ◇◆◇◆ 


「シエルありがとう。早速さっきシエルが言ってた方向へ向かおう」

「OKテネブル。こっちだよ」


 俺はシエルが飛び上がって、方向を確認した後にゆっくり目に飛び始めたので、見失わない様に追走した。

 少し走ると大きな城が見えて来たので、もうここからはシエルの先導も必要ない。

 シエルを呼び戻して俺の頭の上に乗って貰った状態で走った。

 

「シエル、恐らく俺が今探してる人は、勇者と呼ばれる人の実力を凌駕した存在だ。絶対ではないけど、見かける事が出来れば念話は通じると思う。さっきシエルの言ってた広場の光とか十分に怪しいと思うから、ちょっともう一回上空から確認して貰えるか?」

「うん」


 シエルが再び飛び立ち、俺も周囲を見て回っていると、再び広場から大きな光が見えた。


 あ、成程な。

 結界内部で大きな魔法を使って、結界全体が光って見えたのが、シエルが言ってた光の正体だろう。

 中の様子が見たいな。


『シエル、中に居る人達は見えるか?』

『うん、魔導士みたいな人達が二十人くらいと騎士の恰好をした人達が五十人くらい。後は、どっちか言うと現代風な格好をした人が男女二人づつかな? あれ? テネブル中に入っちゃった?』


『いやさっきの所に居るぞ』

『えーテネブルにそっくりな黒猫が一匹いるよ? 全く見分けがつかないよ』


『マジかよ。シエル、ちょっと念話でその黒猫に意識を向けてみてくれ』

『うん。やって見る』


『きゃあああぁ』

『どうしたシエル』


『あ、あのね、パパ。念話をパパそっくりの子に向けて飛ばすイメージをしたらね……』

『うん。どうした』


『ニャジラになっちゃった』

『なんだそれ? 意味解らん』


『あ、五十メートルサイズの大きさになっちゃったの』

『なんだと? 五十メートルサイズだとしたら、リュミエルに当てはめて考えたら、LVが千を超えてる計算になるぞ?』


『あ、私に意識が飛んで来た。ちょっと待っててパパ』


 ◇◆◇◆ 


『誰にゃ』

『お話しできるのかな?』


『青い鳩にゃ?』

『そうだよ』


『あなたは、そこに居る四人の現代人っぽい人の仲間なの?』

『ご主人様たちのかっこを現代人って言うにゃか?』


『うん、恐らく私も同じようなとこから来てるはずだから、ご主人様って言う人と話せる?』

『ちょっと聞いて見るにゃ。念話を青い鳩に飛ばして貰ったら良いにゃか?』


『うん。それで大丈夫なはず』


 ◇◆◇◆ 


「おいTBいきなり巨大化してどうしたんだ」

「ご主人様、上空に青い鳩が居るにゃ」


「ああ、居るな。それがどうした?」 

「よく見るにゃカメラ持ってるニャ」


「ん? マジか。しかもあれ現代日本の最新型のアクションカメラだな、どう見ても」

「岩崎さん何かあったの?」


「おう、翔、あの鳩見てみろ」

「あ、カメラ持ってるじゃん」


「えーどうしたの翔君?」

「希、あの鳩見てみろよ」


「あ、カメラ?」

「な? 不自然だろ」


「TB、それで何か話したのか?」 

「ご主人様に念話送って欲しいらしいニャ」


「解った。ちょっとやって見る」



『おい、聞こえるか?』

『あ、はい聞こえます。現代日本から来られてますか?』


『ああ、そうだ』

『ちょっと外に出られますか? そこの猫ちゃんとそっくりの黒猫が居るのでそこまで来て欲しいんですけど』


『ん。解った。行こう』

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