第30話 シャンプーとリンス

 香織と一緒に地下へと降りて行く。

 今日は香織用に懐中電灯で照らしながら降りたぜ。


 部屋の中心部へ行くと、いつもの様に明かりが灯り、総司爺ちゃんが姿を現した。


「いつも思うが本当に時間きっちりに訪れるのぅ」

「異世界が楽しすぎるからしょうがないぜ!」


「私もワクワクが止まらないです」

「そうか、それなら良かった。俊樹に頼まれておった物は出来上がっておるぞ。転移門を二組と、念話リングを五組じゃ。転移門の使い方は、そのシートを広げれば良いだけじゃぞ、そんなペラペラな布の様な感じじゃが広げれば勝手に自立するでの」


「総司爺ちゃんありがとうな。今回は王都への護衛が始まるから、楽しみだぜ」

「わしも俊樹の小説の一読者として、新展開が楽しみじゃぞ」


「それじゃぁ行って来るな」

「気を付けるんじゃぞ」



 俺は香織と共に青い扉をくぐり抜け、異世界へ向かった。


「香織、そう言えば今回は何か香織が買って来た物はあるのか?」

「勿論よ、美容関係の品物を中心に取り揃えて来たわよ。メインは髪の毛用のアイテムだね。マリアちゃんとシスターの髪の毛が見た目より手触りが良く無かったし、シャンプーとリンスの良い物を使えばきっとサラサラな髪の毛になって魅力十倍増しになるよ」


「そっか、髪の毛も大事だよな。他にも用意したのか?」

「そうね王都に行ったら、ネイルでも流行らせようかと思ってるよ」


「まぁ向こうに着いてから一度日本に戻って仕入れをしても構わないしな」

「それが出来るって凄い儲け話になりそうだよね」


「でもさ、逆に王都で買い付けて、日本で売れる物とか合ったら凄いんだけどね?」

「うーん。それも考えるんだけど今は爺ちゃんに買って貰える魔石だけでも十分だしなぁ。こっちの世界の物を売って、妙に日本で目立っちゃうと大変そうだろ?」


「そうだねぇ、魔法薬とかで治療とかしちゃうと、薬事法とかで捕まっちゃうのかな?」

「病気を治しますを謳い文句にして、商売したら駄目だろうけど、健康食品的な位置づけで売るか、宗教でも始めたら大丈夫かな?」


「宗教は勘弁だよ…… 健康食品なら、悪く無いかもね?」

「効能はうたえないぞ?」


「そこは、ほら口コミで」

「なんだか怪しい違法薬物の売人みたいだな」


「表向きだけでもさ、輸入品の工芸品店みたいなの始めたらどうかな? 意外に当たるかもよ?」

「そうかな? その辺りは香織に任すけど、従業員とか雇って秘密を知る人間が増えるのは困るな」


「そうだよね、母さんが旦過市場で働いてるから、ちょっと情報聞いて見るよ」

「叔母さんくらいだったら、まぁいいかもな。そろそろ行こうぜ」


「了解」


 俺と香織はそれぞれ転移門を家の中に一枚ずつ広げて、対の門はインベントリにしまった。

 窓から外に飛び降りたが、今日はレベルが上がって身体能力も上がったリュミエルはしっかり着地出来たぜ。


『マリア、何してるかな?』

『あ、テネブルお帰りなさい。今はね明日からの王都行に必要そうな物を買い揃えてたよ』


『そうか、合流したいけど何処に行ったらいいかな?』

『少し狩りもしたいでしょ? 冒険者ギルドの前でいいかな?』


『了解』


 俺はリュミエルと二匹で、冒険者ギルドの前に行き、マリアの来るのを待った。

「ねぇ俊樹兄ちゃん。昨日は聞けなかったけど、いつもおトイレとかどうしてるの?」

「あー猫だからな、人目のない所で適当にして砂掛けてるぜ」


「やっぱりそうだよね。私も草むらとかでしなきゃだめだよね?」

「まぁ犬だからな」


「ハードル高いね」

「慣れれば開放感が癖になるさ」


「その感覚が日本で出ちゃったら大変な事になりそうだね」

「逮捕されそうだな」


「気を付けなきゃね」


 俺達が冒険者ギルドについて五分程でマリアも現れた。


「お待たせテネブル、ちょっと時間が遅いから近くでこなせる討伐を受けるね」

「解った」


 香織にリードを付けて、俺は抱っこされてギルドへと入った。

 今日のマリアはメークもしていて、一段と可愛いぜ。

 赤いちょっと大きめのフレームの眼鏡もマリアにはよく似合っている。


 でも匂いがすると討伐には邪魔だから、香水は使えないよな。

 マリアもその辺りは理解していて、匂いの強い物は使って居なかった。


 俺達は、東門から外に出た。

 この東門は出て五分もすると林が広がり、街近辺の割に比較的強い魔物が生息するらしくて、一番不人気な門なんだって。


「マリアここはどんな敵が多いんだ?」

「昆虫系と爬虫類系だよ。どっちもちょっと苦手なんだけどね。弓が使えるようになったから少しは戦えるかと思って、受けて来たよ」


「そうか、でもさマリアは出来れば写真撮影を中心に頑張って欲しいかな? 俺が倒して、リュミエルがマリアをガードするから」

「解ったよ」


 現れた敵は、大きなトカゲと言うより小型の恐竜と言う感じの魔物や、ゾウガメの様な魔物。

 色の毒毒しいカエルが中心で、虫はトノサマバッタの巨大なのと、スズメバチの様な魔物が多かった。


 スズメバチは十匹単位で群れているのでちょっと手強かったぜ。

 俺はミスリルエッジを咥えジャンプしながら戦ったけどリュミエルのエアカッターで倒した敵の方が多かった。

 カエルの毒を喰らって、ちょっと焦ったけどマリアのキュアが速攻で回復してくれたぜ。


 街から近い所なので、暗くなり始める十九時頃まで狩りを続けた。

 三時間弱で百五十匹ほどの敵を倒して、回収をリュミエルに任せたからかなり効率は良い。

 

 ギルドで買取を済ませると孤児院へ寄った。

 今日の戦果のお肉を持って行くためだ。

 それと明日は朝が早いから、キャロルママとシスターや子供達に挨拶をしておきたいんだって。


 マリアは律儀だよな。


 孤児院に着くと、丁度今日お風呂の工事が出来上がったようで早速入ってみようって話になった。

 キャロルママを最初にマリアとシスターで支えて入れてあげて、風呂上りにハイヒールを掛けベッドで休ませた。


「マリア王都行は危険も多いから気を付けなさいよ? いざと成ったらサンチェス爺なんか置き去りにして逃げてもいいんだからね?」

「ママ、流石にそれはダメだと思うよ? 私がそんな事しちゃうと孤児院の子達が冒険者に成りたいと言っても、駄目になるかもだし」


「それでも、怪我はしないようにね?」

「私にはテネブルとリュミエルが居るから大丈夫だよ」


「テネブル、リュミエル、マリアをよろしくね」

「「任して」」


 二人で声を揃えて返事したけど、当然聞こえる音は「ニャン」と「ワウー」だったぜ。


 その後は子供達を入れてあげて、最後にマリアとシスターと俺とリュミエルで入った。


「実に絶景だったぜ」


 俺がマリアの胸に目が釘付けになっていると、リュミエルが水を掛けて来た。


「妬いたのか?」

「別に……」


 そうそう大事な事を忘れそうだったぜ。

 俺は三セットの念話リングを取り出しリュミエルのプレートの鎖に二個を通し、マリアにリュミエルとの念話が出来る一個と、シスターに俺とリュミエルに繋がるリングを二個渡した。

 これで相互会話可能だぜ。

「シスター、マリアちょっと試して欲しい物があります」

「どんなの?」


 そう言ってリュミエルがシャンプーとリンスを取り出し、使い方を説明すると、お互いの髪を洗いあってたよ。

 美人2人が裸でお互いの髪を洗いあう姿とか、ご褒美過ぎるぜ。

 激しく写真に収めたい。


 俺とリュミエルもマリアに捕まって、シャンプーされた。

 すっげぇ気持ち良かったぜ。


 この世界では石鹸も一般的ではないみたいだな。

 次は石鹸も持って来ておこう。


 お風呂上りにはリュミエルが風魔法のエアーで髪を乾かしてあげると、シスターのブロンドとマリアの赤い髪が、ふんわりとサラサラになって凄いいい匂いもしてた。

 二人とも大喜びだったよ。

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