第22話 博多って都会だなぁ

 俺は翌朝九時前には目を覚まして、先日香織に選んでもらった服へ着替えてタクシーを呼び小倉駅へ向かった。


 駅のカフェで約束の時間までの暇を潰しながらスマホでAhooニュースをチェックする。

 収まりかけた流行り病が、またぶり返して猛威を振るっていたりして、明るい話題は少ないな。

 芸能ネタも最近の話題は不倫関係ばかりだし、何が楽しくてこのネタで盛り上がるんだろ?

 そんな事は夫婦間の問題であって第三者が騒ぐような話じゃなくないか? って思うけど、まぁ興味のある人が多いからネタになってるのかな?


 異世界の魔法薬なんかでこの世界の病気への特効薬になったりはしないのかな?

 もし効果があったとしても、薬事法やらなんやらで商売にする事は出来ないだろうけどな。


 十時前になり、香織からラインで連絡が入った。

 新幹線口の券売機の前で合流して、ホームへと向かう。


 小倉から博多は一駅で二十分も掛からずに到着するから近いよな。


「俊樹兄ちゃんおはよう、今日の予定は決めてるの?」

「いや、取り敢えず博多駅前の大型家電ショップでデジカメを一台買ってから昼食に行こうぜ。その後は俺と香織の服を何着か買いたいから、俺にはさっぱり分かんないし香織に任せる」


「OK、ちょっといい服選んじゃっても大丈夫かな?」

「ああ構わないぞ」


「俊樹兄ちゃん一体どうしちゃったの? そんな男前の行動するキャラじゃ無かったような気がするけどなぁ?」

「そうか? 気のせいだよ」


 駅前の家電ショップで、デジカメを眺めているが種類が多すぎて良く解んないから、店員さんを呼んで聞いて見た。


「乾電池駆動のカメラで出来るだけ小振りで、衝撃や耐水性能に優れてるのを欲しいんだけど?」

「それでしたらこの辺りの商品がお勧めです」


 そう言って、各有名メーカーの商品を何種類か出して来た。

 防水防塵業務用デジタルカメラと言うのが有って、いかにも頑丈そうでその割に重くも無かったので、リコーのG800と言うモデルを選んだ。

 スタイルや性能ならもっといい製品もあったのだが、乾電池で駆動できることが基本条件だし選択肢は少ないぜ。

 

「俺の用事は済んだから、食事に行こうぜ」

「了解、じゃぁお昼は中華でいいかな?」


「いいぞ」


 比較的新しいビル内にある、かつて料理の鉄人と呼ばれた人の経営するお店でランチを食べた。

 サラリーマン時代の感覚では十分に高額な昼食だけど、値段以上の満足感はあったと思う。

 お昼から酔っぱらわない程度にビールも飲み、満足だ。

 香織もお酒には強い方なので、今日は運転をすることも無いし、俺に付き合ってビールを飲んでくれた。


 やっぱり一人だけより一緒に飲める方が楽しいよな!

 ランチを食べ終わり食後のコーヒーを飲みにカフェへと場所を移して、香織に話しかけた。


「なぁちょっとこの写真見て欲しいんだけど」

「いいよ、綺麗な外人の女の子だね。アメリカ系って言うよりは北欧系の子なのかな? で、この子がどうしたの?」


「ほら一昨日化粧品を買う時に言ってた国の子達なんだけどさ、俺って化粧の事とかサッパリわからないから、後はどんな風にするのが良いのかな? って思ってさ」

「へぇ、俊樹兄ちゃんとどんな繋がりなんかは解らないけど、これだけベースが良いと出来るだけ自然な感じで、後は目元と眉毛を整えたら十分なんじゃないかな? まつ毛なんかもこれってナチュラルでこんなに長くてカールしてるんでしょ?」


「うん。そうだと思う。出来たらアイメークとかの化粧品を用意して実際に香織がメイクしてる様子を撮影させて貰えば、その画像を視ながら自分達で出来ると思うんだよな。それとこの二人の女の子に似合いそうなワンピースとパンツルックの洋服を、二着ずつくらい選んで欲しいかな?」

「いいけど、なんでそれを俊樹兄ちゃんが買ってあげるのか意味解んないな? 二人ともまだ未成年っぽいよね? 手を出すのは犯罪だよ?」


「あーそこは大丈夫だ。手は出せないし」

「ふーん。ますます意味不明だけどまぁいいや」


「あ、パンツルックの方はちょっとした農作業なんかしても大丈夫な感じが良いな。身長はシスター服の子が百七十センチメートルくらいで、胸の大きな子が百六十センチメートルくらいだな」

「解ったよ。高級なのがいいのかな? それともカジュアル系?」


「今回はカジュアル系で頼む」


「私は、少しフォーマル系の服が欲しいけど良い?」

「ああ、香織は自分で好きなのを選べ。あ、忘れてた。香織って視力はどうだったっけ?」


「私は今はコンタクト入れてるけど、近視の乱視で酷いもんだよ」

「お、それはいいかも。コンタクト外した時に使う眼鏡って持ってるか?」


「うんあるよ」

「それって借りれないかな?」


「私もメガネはそれしか無いから困るけど、今時のカジュアル眼鏡ショップなら、すぐ作れるから行って見る?」

「ああ。よろしく頼む」


 二人で、タクシーに乗り込みショッピングセンターへと立ち寄った。


 まずは眼鏡ショップに行って、香織の視力に合わせた感じで二つほど作ってもらう事にした。


「今の眼鏡ってこんなに安くできるんだな?」

「そうだよね、今までの値段って何だったんだろうと思うっちゃうよ」


 眼鏡をレンズ込みで近視と乱視に対応出来るよな物でも八千円もしないとか時代の変化を感じるよな。

 でも、いまだに昔からある眼鏡店では値段も変わってないんだけど何が違うのかがさっぱり解んないぜ。


 良く最近のコマーシャルで見かけるけど虫眼鏡タイプの眼鏡を一万円くらいで売ってるメーカーもあるけど、あれだって百均に並んでる老眼鏡との差が解らないから、眼鏡業界って謎が多いよな。


 マリアとシスターに着せる服はこのショッピングモールで買い揃えて貰い、コスメも十人分くらいで十代から四十代くらいまで対応できるような感じで揃えて貰った。


 後はお化粧動画を撮影して持って行くのにタブレットも二台ほど買っておいた。

 これはまだマリアとシスター以外には見せれないな。


 その後は中洲から天神に向けて二人で歩いて見る事にした。

「結構有名どころのブランドって何でも揃ってるんだな。小倉と随分雰囲気が違うぜ」

「そうね、残念だけど小倉はブランドショップって少ないよね」


 天神の街で俺と香織の服も二着ずつ買い揃えて、なんだかんだで百万円程使っちゃったけど、まぁ俺の日当にも届かない程度だからいいだろう。


「あのね、俊樹兄ちゃん。流石に私でも解るよ?」

「ん? なにが」


「異世界転移が自由に出来ちゃったりしてるでしょ?」

「え? 何でそう思う」


「何で手ぶらなのかな? あんなに買い物してるのに」

「あ、まぁ……そう言う事だ。一応内緒な」


「ふーん、私は行けないの?」

「どうだろ? 無理じゃ無いとは思うけど、危険はあるからお薦めは出来ない」


「でも、戻って来れるんだよね?」

「まぁ今の所は大丈夫だけどな」


「ねぇ後でちょっと詳しく話を聞かせてくれないかな?」

「うーん、あ、そうだ香織ってWEB小説とか読むか?」


「うん結構読むよ。時間は無駄にあるからね」

「そうか、それならこの小説読んでみてくれ、それ書いてるの俺なんだ。ほぼ実話だ」


「え? まじ? その小説私ブクマしてるよ。しかも感想も書いたし。テネブルさんって俊樹兄ちゃんなの?」

「お、読者様かよ! 嬉しいぜ」


「じゃぁさ、俊樹兄ちゃんってその世界では猫なの?」

「あ、まぁそうだ。そう言えば写真もあるぞ? 見てみるか?」


「きゃぁ何この子猫。めっちゃ可愛いじゃん。でもこの姿で人殺したりしちゃったんだね……」

「あぁ……まぁ……そう言う世界だからな」


「こっちで人殺さないでよ?」

「きっと大丈夫なはずだ」


 その後は中洲のちょっと洒落た居酒屋でイカの生き造りを楽しんで旨い日本酒で盛り上がった。

 焼酎も良いけど、俺は日本酒派なんだよな。

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