第44話 ポルシェって電話で買う物か?
ひと眠りした俺はそれでも朝の九時には目を覚ましていた。
昨日は執筆に集中したから、感想に目を通して無かったのもあって取り敢えず顔を洗って歯を磨くとパソコンに向かい感想欄をチェックした。
『イラストの美麗さに毎話感動しています。イラスト集とか発売されたら絶対買いますね!』 asuka030303
『イラストはストック結構ありますので、需要が有る様なら考えたいです!』 テネブル
『総合一位おめでとうございます。テネブルの冒険にワクワクします。ただ無双過ぎるので、偶にはピンチ展開とか欲しいかなって思います』 nobu
『ありがとうございます!自分自身が一番びっくりしています。テネブルのピンチは突然訪れるかも知れませんね!』 テネブル
『もし書籍化されたら予約しますね! 書店系列ごとの特典はイラスト集希望です! コンプリートしまっせ』 浪速商人
『もし、書籍化出来た時には参考にさせて貰います!』 テネブル
『異世界でホカ弁とか、現実味薄いですよね? 猫や犬が弁当とか食べたら塩分ヤバく無いですか?』 管理栄養士アキ
『ポーションのある世界だから、きっと大丈夫な筈です』 テネブル
『何だか展開に脈絡が薄い所が、逆にリアリティを感じます。イラストはきっとコンピューター処理した写真で確定だと思いますが、一体どこに行けば撮影できるのでしょうか? まさか本当に……』 フライングバード
『まさか神作家のフライングバード先生ですか? 拙作に目を通して頂きありがとうございます。私自身古くからの先生のファンでした』 テネブル
まさかの晃子からの感想が入るとはビビったぜ。
焦って質問内容と関係ない、返事しちまったぞ。
まさか俺だとは思って無いだろうし、大丈夫なはず……だよな?
感想を書き込んでからインスタントのコーヒーを淹れていると、電話がかかって来た。
名古屋で会社勤めをしてた頃の昔の同僚で今は外車販売の営業やってるって言ってたやつだ。
『もしもし青木か? いきなりどうした』
『いやぁ、お前が会社辞めたって聞いてなあそこの会社一応大手の子会社だから、結構退職金あっただろ? どうだ車買わないか? 良いのあるぜ』
『地獄耳だな、五年振りくらいの電話が営業電話ってのがお前らしいぜ。車は丁度いいの無いか探してたところだ』
『お? マジかよ。予算とかあるのか?』
『一応はな、ちょっと余裕あるから今買おうと思ってたのはレクサスのLC500のオープンの奴だ』
『ちょっ、お前あれ一千五百万だろ? なんでそんな凄い予算なんだよ?』
『心機一転で自分に気合入れる為かな?』
『そんな予算有るならもう少しだけ出せないか? メチャ凄いのあるぞ』
『どんなのだ?」
「ポルシェだが最新の992ターボSで、うちの顧客が注文して仕入れたんだが、納車前に本人が急な事故で亡くなってな。登録まで済んだ新古車扱いで、三千万の車が二千万で出せる』
『走行してないならそんなに価値落ちないだろ?』
『先方がさ手付一千万入れてて、当然返そうとしたんだが『迷惑料と主人が欲しがった車を乗る方に援助させて頂きたい』とか、訳解らない理由でな。うちの社長も長い付き合いの顧客だったから、その申し出を受けたって訳だ。それでも今の時代二千万を車に出せる奴って少ないからな。だが早いもん勝ちだ』
『そうか、それって納車はすぐ出来るのか?』
『ああ、整備も登録も終わってるからな、支払い方法の確認が出来れば即納車可能だ』
『今俺は小倉だがこっちまで持って来るなら買うぞ。キャッシュだ』
『おい、キャッシュって俺に二千万の現金を運ばせるつもりかよ? 流石にビビるから振り込みにして欲しいぞ』
『そうか、しょうがねぇな。じゃぁそれでOKだ。先に振り込んだ方が良いか?』
『いや、納車後で頼む。電話してみて良かったぜ』
『お前が持って来るのか?』
『そうだな物が物だけに車載車に同乗して行くぞ。住所教えてくれ』
『最短でいつ納車だ?』
『三日後の午前なら、到着する』
『解った。その時には居る様にする。よろしく頼むな』
あり得ない話だが、あり得ない体験を続けてる今の俺には、きっとこれも運命なんだろうと思って電話一本で二千万の車の購入を決めた。
実際は三千万だけどな!
車の問題も片付いて少しほっとしたな。
えーと向こうに持って行くもので何か気になってたのは……
「あ、そうそう歯ブラシと石鹸だな。それと自動巻きの時計か」
バイクに乗って、薬局で石鹸と歯ブラシ、歯磨き粉などを買い揃え、その後でデパートへ行き、時計を見た。
元々俺は時計なんかよく知らないけどロレックスやオメガなら聞いた事有るぞ。
後はセイコーとシチズンなら国産だし動作に安心できるかもな。
ロレックスのショップに行き、手ごろでシンプルだったオイスターパーペチュアルと言うモデルを男女用で一つづつ購入した。
手頃と言っても六十万位したけどな!
国産は意外に自動巻きで日付表示無しのデザインって少ないんだよな。
安いのが有れば大量に買ってもいいんだけど、それは売れる見込みが立ってからでいいか?
取り敢えずはこれでいいかな?
サンチェスさんに物を見てもらってから今後の展開は考えよう。
向こうには午後三時ごろに戻るとして、後四時間あるな。
もう少し感想にレス付けようかな?
そう思い帰宅した。
パソコンの電源を入れると新着メッセージを確認した。
小説サイトの方じゃ無くてパソコンメールの方だけどな。
昨日返事をしておいた出版社からの連絡が来ていた。
『一度お会いして、今後の出版までのスケジュールなどの詳細を詰めて行きたいと思いますので、お電話で連絡をさせて頂いてよろしいでしょうか? 付きましては、ご連絡先のお電話番号と、テネブル先生のご本名をお伺いしてよろしいでしょうか?』
との内容だったので、メールをするより電話かな? と思いメールに記載してあった電話番号に電話をしてみた。
担当の杉下と言う編集さんが電話口に立ち、連絡先や本名を伝え、一度編集部へと出向く事になった。
当然だが、東京の会社なので新幹線での移動になる。
今は王都から帰って来るまでは無理だな。
と思い、二週間後に伺う事を約束して電話を切った。
なんだか先生と呼ばれると照れ臭いぜ。
電話を切りリビングのテーブルの上をふと見ると、女性週刊誌が置かれていて、記事の見出しが目に入った。
ベストセラー作家の売れる小説の書き方。
というタイトルに目が留まった。
話題がタイムリーだし、ちょっと気になったので、目次を見てページを開くと、週刊誌の記者と作家の対談形式の記事で、作家は元嫁だった……
当然この対談では書籍作家としての名前、俺と結婚する前の旧姓で『西山晃子』先生として出ていたが、ファンの間では『フライングバード』のペンネームと同一人物である事は公然の事実で、この対談でも公表していた。
その対談記事を読んで俺は少し思う所が有った。
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