第45話 晃子に連絡とってみた

 ちょっと雑誌の対談記事で気になってしまって長い事連絡をする事も無かった元嫁のアドレスに連絡をしてみる事にした。


『久しぶりに連絡するが元気そうだな。雑誌の対談記事で見かけて連絡した。飛鳥ももう高校生だよな、入学祝もしてやって無くて済まん。一度会って話をしたいが、都合のいい日はあるか? 復縁を求めたり、お金の無心じゃ無いから、安心してくれ』


 なんとも味気のないメールだが、五年ぶりの連絡では何言って良いかわからないしな……


 俺が気になった対談記事はこんな内容だった


記者「売れる小説の肝って言うか、ここを外したらだめって言うのはありますか?」


西山「全ての人がそうかと聞かれたら解りませんが、私が大事にしている事はリアリズムです。いくら創作の世界と言えど、自分が体験した事も無い事を、どんなに言葉を並べて書いても、嘘臭くなります。それでは読者の心は掴めません」


記者「しかしそれでは、異世界でのお話などは全て嘘臭くなって、読者がつかないという事になりませんか?」


西山「ほとんどの小説には、人物が出てきますよね? その人物の心理描写をすれば、場所は問題無いと思いますよ? ステージを現代に置き換えて、同じようなシチュエーションでの、登場人物の心情を学ぶ事は出来る筈です」


記者「先生は、恋愛物を主体で書かれていますけど、同性愛や、TS、不倫、離婚などと言ったテーマ。女性主人公の逆ハーレムなどの作品が多数見受けられますが、経験されてるという事ですか?」


西山「詳細はご想像にお任せいたしますが、ある程度は実際に身を置いて見て、またそういう方達とのお付き合いをさせていただく中で、大きく参考にさせて頂いております」



 離婚の理由は、ほぼ香織の予想で間違っていないだろう。

 逆ハーレム体験って、どんなシチュエーションだよ?

 百合や不倫もやってるって事か?


 そんな環境に飛鳥を、まだ高校二年生の子を一緒に住まわせるって、それはダメだろう?

 今まで全然連絡もせずに関わって来なかった俺が、今更口出しするのも滑稽な話だが、それでも気になる。

 飛鳥が実際どう思っているのか聞いて見たい。

 本人がそれでいいなら構わないが、寂しかったりつらい思いをしているなら、小倉で過して貰う方が良いと思う。



 メールの返事は、意外に直ぐに戻って来た。

『あら? 久しぶりね。あなたも元気そうで安心したわ。今は書籍の推敲すいこうで少し仕事立て込んでるけど、二週間後以降であれば、時間は取れるわよ』


『そうか、俺も二週間後の方が都合が良い。丁度東京へ行く用事もあるから、その時にまた連絡するな』


『了解よ』


 メールでのやり取りを終え、ちょっと予定より早めだったけど、こういう少し鬱々とした気分の時は、異世界でスカッとした方が絶対いいよな! と思い、土蔵から地下へと降りた。


 総司爺ちゃんが姿を現す。

「俊樹、こっちの世界でお前にコンタクトを取ろうとしている者とかはまだおらぬか?」

「いや、出版社からの問い合わせと、車のセールスマンくらいかな?」


「そうか、ならいいが、そろそろ勘の鋭い連中は俊樹の存在に気付く可能性もあるから、あまりスキを見せないようにな?」

「爺ちゃん? もしかしてさ、俺達以外にもあっちの事を知ってる存在っているのか?」


「うむ、少なくとも三人はな。当然わしと同じ様にこの世界での生命活動は終えているが、三人とも力のある者じゃから、そのうち何らかの動きは見せるじゃろう」

「爺ちゃん。俺どうしたらいいんだ?」


「それは俊樹の自由だ。思う様に生きろ。かつてわしがそうした様に、お前の父や祖父がそうであった様に、お前の人生はお前だけの物だ。後悔せぬようにな」

「解った、俺なりに一生懸命やってみるさ」


 ◇◆◇◆ 


 そう言い残して、青い扉をくぐって行く。

 早速香織に念話した。


『香織ちょっと予定より早いが戻って来た。転移門を頼む』

『俊樹兄ちゃん、お帰り。ちょっと待ってね二分後くらいに潜って』


『了解だ』


 そして二分後に潜って行くと、裏路地の様な場所だった。

「あれ、ここってどこだ?」

「ここは冒険者ギルドの横の路地だよ。時間があったからマリアと二人で少し出かけてみようかと思ってたの」


「そうか。なら俺も一緒に行くぜ」

「じゃぁマリアちゃんのとこに行こうよ」


 マリアはギルドで依頼書を眺めていた。


「あ、テネブルお帰りなさい早かったんだね」

「ただいまマリア。もう依頼は受けたのか?」


「まだだよ。薬草採取とかはここじゃ地理情報が解んないし討伐はリュミエルと二人だと危険かも? とか思って決められなかったの」

「そうか、無理をしたら駄目だからな。ちょっと希望があるけどいい?」


「どんな?」

「ダンジョンは街の側にあるんだろ? どんなところなのか見てみたいんだ」


「私も解らないから聞いて見るね」


 マリアがギルドの受付嬢に聞いてくれて、場所を教えて貰った。


「歩いても十分くらいの距離だね。行って見ようか?」

「うん」


 俺とリュミエルも返事をして、早速ダンジョンへと向かった。

 今の時点で俺のレベルは42、リュミエルは25、マリアは24だ。


 成長促進の効果はパーティメンバーには通用しないみたいだけど、それでも結構なハイペースで上がってるよな。


「香織、魔法はまだ次のは覚えていないのか?」

「うん、エアとウインドエッジだけだよ」


「そうか、マリアに聞いたか? 俺とマリアも攻撃魔法覚えたの」

「えーそうなの? 聞いてないよ。どうやって覚えたの?」


「スクロールだ」

「あれって高いんでしょ? 良く買えたね」


「ほら、盗賊の洞窟から回収してきた宝箱の中にあってさ、サンチェスさんが使ってしまえば解らないからって言いだして、俺とマリアが二つづつ覚えた」

「いいなぁ、魔法だけは俊樹兄ちゃんに勝てるかな? とか思ってたのになぁ」


「いや、最初のギフトが違うからそれは無いと思うぞ。俺は身体強化だけど、香織は魔法強化だろ?」

「あ、そう言えばそうだね。じゃぁ私は魔法で頑張るね」


「期待してるぞ」


 そんな会話をしているうちに、ダンジョンへと到着した。

 ダンジョンの前は屋台が並び、いい匂いが漂っていて、ギルドの買取専門の出張所や、アイテムショップなども並んでる。

 想像以上に賑わって居るぜ。


 中に潜る冒険者は半数以上が獣人で、人間は二割ほどかな?

 エルフやドワーフなども多い。


 一言で獣人と言っても種類は様々だよな。

 ひときわ目を引くのは象の獣人とキリンの獣人だ。元の獣の特性を引き継いでいて体が大きい。

 キリンって、弱点晒し過ぎで魔物が居るところに潜るとか、結構危険そうだよね。


 屋台も気になったが、俺達は取り敢えず潜る事にした。

 一層は、鑑定してみたが精々レベル5までの敵しかいないな。


 二層でレベル10、三層でレベル20、四層でレベル40までの魔物が確認できた。

 これだと、この下はレベル80の敵まで現れる事になるな……


 俺達は、四層で狩りをして、三時間程度で六十匹程の魔物を狩る事が出来た。

 地上での狩りと大きく違う点があった。


 死体が残らないのだ。

 どんな仕組みかは解らないが、倒した魔物は光の粒子になって消えていく。


 そしてその場には偶にドロップ品が残された。

 魔核が多いが、肉や、ポーション、キュアポーションと言ったものもドロップされる。

 ポーションやキュアポーションには、ランクが存在していて殆どがランク①だけど偶に②や③の数字の物が現れる。


 ③でハイヒールと同等らしい。


 だが全身が残る地上の方が、お金儲けには良いのかな?

 

 と思ったけど、恐らく経験値はダンジョンの方が高いと思う。

 この三時間で俺はレベル46、香織はレベル30、マリアはレベル26まで上った。

 無理をする必要もないので、引き上げる事にしたけど、ダンジョンだと自分の強さに応じた狩りも可能だと思えば便利だよね!

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