第46話 ダンジョン出口での出来事
俺達はダンジョンから出るとダンジョンのそばにある買取所に向かい納品をする事にした。
マリアがギルドカードを提示して納品を行う。
ここでは解体の手間が無いため、品質が安定していて一律同じ額で引き取って貰えるけど意外にポーションの値段が高い事にびっくりした。
「魔法を使える人は少ないし、回復魔法持ちは全体で見れば百人に一人だから滅多にいないんだよね」
「ポーションは魔法が使えなくてもヒールと同じ効果が出るから冒険者には必需品なの」
「それならマリアみたいな回復魔法使える人っって、もっとパーティ需要在りそうだけどね?」
「それはほとんど戦える人がいないからだよ、パーティが四人までって制限があるから戦えて魔法が使える人は人気だけど、そうじゃ無かったら分け前とか考えるとポーションの方が安くなる感じかな?」
「そうなんだね」
「薬草が畑でできる様になったら、ポーションを作れるスキルが欲しいよね」
「錬金術か調合のスキルが無いと成功しないから中々ハードルは高いよね。後天的に芽生える為には、実際にポーションを作れる人に弟子入りして長くお手伝いをしていると芽生える可能性があるらしいよ?」
俺ならラーニングで何とかできそうだし、俺が出来る様になったら、子供達にでも手伝わせたら、何人かはスキル身に付くかもね。
買取金額は魔石以外の物で二十万ゴールドほどあった。
やっぱり俺のインベントリが有るのが前提条件だけど、狩りで稼ぐ金額は外の方が効率よさそうだね。
マリアが今換金したお金で屋台の料理を食べようと言い出したので、俺とリュミエルもうなずいて一緒に屋台を眺めていると、ちょっと不思議な光景に出くわした。
「ねぇマリア、子供達が沢山いるのは何をしてるの?」
「あの子達はポーターの仕事をしてるんだよ」
「ポーターって荷物持ちかな?」
「そうだね、冒険者さんたちのパーティに付いて行ってドロップ品や炊事道具とかテントとかを運ぶんだけど結構大変な仕事だよ」
「そうだろうね」
「成人するまでは冒険者証を作れないからポーターじゃ無いとダンジョンに入れないからね」
「危なくないの?」
「そりゃ危ないよ、荷物を持ってるから足は遅くなるし、荷物を置いてきたら報酬はもらえないし、それで亡くなる子供達も多いんだよ」
「そっかぁ……この世界で生きていくのは大変なんだね。話は変わるけどマリア、ダンジョンでも写真は結構撮れた?」
「うん、一杯撮ったよ」
「ありがとう」
屋台で買った羊肉の様なお肉を串に刺して焼いてあるのが美味しかったけど、コショーは使って無いのでメリハリが少し足りないな。
お好み焼きみたいな感じの物もあったし、結構食文化って日本に近い感じかも?
「お前のせいで今日の稼ぎがパーじゃねぇか、だから猫人属の女の子なんか嫌だって言ったんだ! 荷物とドロップアイテムの分は弁償させるからな!!」
そんな事を大きな声で言ってる熊人属と狼人属が二人づつのパーティが居た。
そのパーティーの足元には猫人属の女の子が身体を怪我してかなり出血してる様子だった。
マリアが走り寄って、女の子にヒールを掛ける。
傷口は見る間に治り、女の子の顔色も戻った。
その姿を買取カウンターの人が見てて叫んだ。
「お嬢ちゃん早くここから離れなさい大変な事になるよ」
「え? なんで? 駄目だったの??」
「今の治療は頼まれても無いのに無料でしたでしょ? あの子だけ治療したら治療代を払えない様なけが人が押し寄せて来るよ。常識なんか通じないからね」
その言葉を聞いた俺は香織に指示を出した。
「香織、その猫人属の女の子を背中に乗せて、街の方に走れ! 俺はマリアを庇いながら追いかける」
「了解」
直ぐに大きくなったリュミエルが女の子を背中に乗せて走った。
「マリアも街に向かって走れ、俺は他の人を足止めする」
「あ、うん。なんかごめんねテネブル」
そう言ってマリアも走り出した。
ギルド職員の人が言ったように多くの人が「無料なら俺も治療しろ。一人だけとか不公平な事は許さない」とか好き勝手な事を言いながら押し寄せて来た。
俺は、その人たちの前に立って、ミスリルエッジを取り出しファイヤを纏わせて立ちはだかった。
「なんだこの猫、魔法使いやがったぞ。捕まえたら売れるんじゃねぇか?」
そう言いだした獣人の言葉に、一斉に人々が俺に向かって来た。
別に敵対してるわけでもないので、俺はマリアが走ったのと別方向に誘導しながら避け続けた。
マリアが十分に離れた事を確認して俺を追っかけている連中を引き離すと、俺も街へと向かった。
念話で連絡を入れた。
「リュミエル、マリア、街の手前で合流しよう門の所で待ってて」
「解ったよ、テネブル」
門の前で一緒になって、猫人属の女の子がお礼を言って来た。
「ありがとうお姉ちゃん。ワンちゃん猫ちゃん」
まだ十歳くらいだろう、白い折れ耳がちょこんと頭の上にのって、尻尾が揺れている。
思わず尻尾に反応して飛びつきたくなったが、香織が気配を察知してブロックした。
「駄目、俊樹兄ちゃん」
「あ、また我を忘れてしまったぜ。もう大丈夫だ」
やばいな。
猫の本能が揺れるしっぽには
俺がマリアに伝えて、マリアが女の子に話しかける。
「何があったのか街の中でお話聞かせて貰えるかな? 美味しい物でも食べながら」
「あ、私お金ないから、食べ物はいいです……」
そう言った直後に猫耳娘のお腹が『キュルルルゥグルゥ』と鳴った。
「お腹すいてるんじゃん。大丈夫だよ私のおごりだから」
「で、でも、さっきの治療のお金も払えないし……」
「大丈夫だから行こ?」
「う、うん……」
ようやく素直におごられる気になったようだ。
俺と香織もいるから、オープンテラスの食堂に行き、きっと遠慮して一番安い物しか食べないだろうと思ったマリアが、適当に沢山の注文をした。
俺とリュミエル用のミルクもな!
「何があったの?」
料理が来るまでの間に少し話を聞く事にした。
「あの狼人属と熊人属の人達のポーターで付いて行ったんですけど、三層で強い敵が現れて、撤退するって言いだして走り出しちゃって、私はテントとか持ってたから走れなくて、追いつかれて荷物を滅茶苦茶に壊されて、荷物の中の食料を食べてる間に逃げたんですけど、もうパーティの人達は居なくなってて、一人で三層から入口まで戻る間にも一杯魔物が出て、一杯怪我しちゃったんです。出口の所でパーティの人達が居て『俺達の荷物とドロップアイテムはどうしたんだ』って騒ぎだして私は怪我しててもう倒れる寸前だったところに、お姉さんが魔法をかけてくれたんです」
「それは大変だったわね。でもそんな状況だと、あの場所でポーターをやろうとしたら間違いなく言いがかり付けられて絡まれちゃうよ」
「どうしよう……私」
そう言った時に、料理がたくさん届いた。
「取り敢えず食べなさい。全部食べてもいいからね」
マリアが言うと、ちょっと考えた後で意を決した様に食べ始めた。
「どう美味しい?」
「うん、美味しいですご飯三日ぶりだから……」
「家は? 家族は居ないの?」
「お父さんとお母さんとお兄ちゃんは傭兵で出かけて行ってもう二年も帰ってこないんです。一緒に行った人たちはとっくに帰って来てるけど」
「家は自分の家なの?」
「傭兵に行く時に子供達を預かってくれる、この街の託児所に預けられてたんだけど、預けてたお金が足らなくなったから出て行かされました」
「じゃぁどうやって寝てるの?」
「お外で寝てます。ポーターの仕事に付けた時はご飯も食べれるけど、仕事がなかったら、ずっとご飯も食べれないです」
俺はマリアに言った。
「この子さぁ、連れていけないかな?」
「え? 王都まで?」
「うん」
この子の潜在能力に興味のある部分を見つけたんだ!
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