第43話 『書籍化打診のお知らせ』
俺は魔法陣の中央に大量の魔石を出すと、爺ちゃんが姿を現した。
「王都行は順調か?」
「ああ、色々イベント盛りだくさんだから、小説も
「それは楽しみじゃな。今日は三十二キログラムもあるじゃ無いか。ほれ三百二十万だ。それとな、魔導具を作る為の材料がちょっと心細くなってきたから、向こうの世界でミスリルとオリハルコンを手に入れて来てくれんか? 安くは無いが、その分はこっちの円で買い取ってやるぞ」
「マジか爺ちゃん? 向こうのお金で購入してこっちのお金に出来るなら助かるぜ。何処に行ったら手に入るんだ?」
「ゴーレム系の敵を倒すか、ダンジョンの宝箱か、もしくは商業ギルドで買いつけたら良いぞ」
「そうかサンチェスさんに聞いて、商業ギルドで手に入れるのが一番現実的だな。次に帰って来た時に持って来るぜ」
爺ちゃんとの会話を終えて土蔵から出るとまっすぐにパソコンに向かった。
早速自分の小説をチェックする。
「うほーダントツで一位じゃないか。メッチャ嬉しいぜ。週刊でも二位まで上がって来てるな」
二位には香織の言葉通りに『フライングバード』さんこと晃子の小説が三位を大きく引き離すポイントで載っている。
当然の様に週刊と月間では断トツの一位に君臨している。
しっかし……このタイトル……俺のも結構痛いけど晃子も大概だな。
『侯爵令嬢として転生した私は世界中のイケメンを全て膝まづかせて逆ハー女王と呼ばれるの! 既婚? 寝取るに決まってるでしょ( ゚Д゚)』
性格に問題がありそうなタイトルだよな……
タグなんか、ボーイズラブ、ガールズラブ、調教、寝取り、逆ざまぁ、チート、主人公最エロとか、殆ど18禁物との差が解らんな。
俺との結婚生活では性生活に関しては淡白な印象だったのに、このタグ見てるとどんなエロエロ星人だよって思うぞ。
しかもこのタイトルにブクマが五万件以上ついてるとか、世の女性が求めている物が理解できないぜ……
そう言えば香織も読者だって言ってたな……
更に作者名で検索してみれば百位以内に四作品。
累計でも十位以内に二作品とまさにこの投稿小説サイトの中でもトップクリエーターと言っても良いだろう。
元々商業作家だったのもあるけど、プロフィールで見た投稿作品の十二作品が最新作以外全て書籍化もされていた。
長期連載作品なんか十八巻まで発売中とか、まさにモンスターだぜ。
よくこんなに恋愛物で新しいアイデアが浮かぶよな?
まぁ人は人だ。
俺は自分のできる事をやるだけだぜ。
異世界画像使い放題の俺のアドバンテージは十分に文章力の足りない部分を補ってくれるだろうしな。
まずマリアから回収して来た、SDカードをスロットに差し込んで、写真データを読み込み、イラスト風に修正を掛けて行く。
人物写真は切り抜き加工をしてから使う事にしたぜ。
商隊の様子や強盗との戦闘、サンチェスさんやラビットホーンのメンバーの写真、それと向こうの世界の雄大な風景を収めた写真など、様々な画像データを加工して行ったぜ。
ちょっと処理にかかる時間が気になるな。お金はあるんだし最新の画像処理に特化したスペックを持つパソコンに買い替えたほうがいいな。
今のノートパソコンで画像処理をしてると結構熱を持つし、データが飛ぶリスクを考えるとデスクトップのハイエンドモデルとかの方が実用性高いな。
写真加工が終ったら取り敢えずパソコン買いに行くか。
執筆時間は……ポーション飲みながら徹夜するかな?
ポーションを作るには錬金術士が必要だってマリアが言ってたけど、あの世界のルールだと、もしかしたら薬草とかの材料を集めて、それらしい作業を繰り返していたら、後天的に身に付く可能性もありそうだよな。
写真の加工が終わるとZGPに乗ってパソコンショップまで出かけた。
ハイエンドで32インチモニターとの組み合わせで四十万円程度の物を買って帰り早速梱包をほどいた。
一時間ほどでセッティングも終わり、現在時刻はお昼の十二時か。
そう言えば向こうの人達って、時計とかどうしてるんだろうな?
見張り番の交代の時は砂時計だったし、サンチェスさんですら、腕時計なんてして無かった。
明日の昼にでも、時計の専門店で自動巻きタイプの物を、何個か買って、サンチェスさんに価値を聞いた見ようかな?
時間は確かマリアとの会話でも普通に二十四時間方式で会話が出来ていたし概念は同じだと思う。
月と曜日は聞いてないな。
時刻だけで、日付表示をしない物を選んで持って行くか?
早速セッティングが終ったパソコンを立ち上げると投稿サイトを開く。
先程は気が付かなかったが、お知らせが感想とメッセージボックスに新着メッセージがあります。
って言うのが赤く付いていた。
感想を開くと、この二日間でまた六十件程の感想が入っていた。
これ全部読むだけでも一時間以上かかるよな? ちょっと後回しだ……
そしてメッセージボックスをクリックすると……
「書籍化打診のお知らせ」
え? mjk こいつは……
噂に聞いたあれですか?
しかも……
同じタイトルのメッセージが八件程もあった。
これは……
間違いないぜ。
俺は俺の中で決めてた事が有る。
もし書籍化するとしたら、出版社が大きかろうと小さかろうと、最初に声が掛かった所で頑張ってみようと。
でもちょっと気になったから、全部メッセージは開いて見たぜ。
どこもラノベ好きの俺からしてみたら、聞いた事のある出版社の名前が並んでいた。
一瞬呆けてしまったぜ。
当然一番最初にメッセージを送って来てくれた所も開く。
この会社も、俺的にはラノベ業界大手のイメージがある所だった。
返事を書き込んだ。
他の所には『お声掛けありがとうございます。現在他社様からのお問い合わせを受けておりまして、今回はそちらでお話を薦めさせて頂こうと思っております』と言う返信メールを送って置いた。
まだ夢のようだが、ここで舞い上がっている暇はないぜ。
俺は、頑張って小説の続きを執筆した。
結局明け方の四時頃まで掛けて、一気に八話分も書き溜めたぜ。
今回は盗賊達との戦いや救出した女性達の写真も使用して、リアリティもイベント性も結構高いし、反応が楽しみだぜ。
雄大な風景写真のイメージを採用したページもある。
ポーション飲んでるからあまり眠くは無かったけど、向こうの世界に戻ってからがちょっときついかと思い横になって目を瞑った。
昨日の香織の言葉が頭をよぎる。
晃子って確かに執筆活動に全てを注いでた所あったよな。
結婚生活をしていた当時は、家事も殆ど俺の方がやってたし、本当に小説の為に、離婚した女性の心情を知る為に、離婚を決断したんだろうか?
そうなると、俺の存在っていったい何だったんだろうな?
まぁ今更考えてもしょうがねぇか。
今は黒猫テネブルな俺が人生とニャン生を力いっぱい楽しんでるんだしな!
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