第42話 冒険者ギルドカノン支部
朝を迎えた。
良く晴れた気持ちのいい朝だぜ。
しかしこの世界の空気の旨さは、日本では絶対に味わえないレベルだよな。
最近はめっきり本数も減らしたが、中々辞められないタバコで毒され切ってる俺の肺も、この世界のテネブルの身体では、流石にタバコは吸わないから、めちゃ体調も良く感じるぜ。
でも向こうに戻るとやっぱり吸うんだろうな……
特に執筆中が一番ヤバいぜ。
言葉の言い回しとかで、煮詰まっちまうと取り敢えず咥えちまうからな……
今日の予定では、昼前には次の街に到着して一泊後は、その街の商業ギルドで打ち合わせがあるらしいから、二泊の予定だ。
その間に今度は俺が日本に戻るぜ。
小説サイトを見るのが楽しみだ。
ストックも少なくなってるから、ガッツリ書き溜めないとな。
今はイラストを掲載しだして一話二千文字程度で纏めてるから、大体二時間で一話のペースで、一日五話程度は執筆できるし、ストックを貯めて置かなくちゃな!
そして今日の朝食も弁当だ。
「この食事に慣れてしまうと、テネブルの居ない旅の時がつらく感じるぞ」
「お、今日のスープは変わった香りがするな」
「えーと、そのスープは味噌汁と言って、このお米のご飯には凄く相性が良いらしいですよ」
「へぇ、マリアはこんな風に米を煮る事が出来るのかい?」
「えーと、これは煮るんじゃ無くて炊くって言うらしいんですけど、蓋つきのお鍋でお水の量をちゃんと量って、火加減を気にしたら出来るそうですよ」
「そうか、今度お米の炊き方を教えてくれよ」
「私もまだ炊いた事無いので、リュミエルに習って置きますね。チェダーさん」
「え? テネブルだけでなくこの犬も会話できるのか? しかも犬なのに料理の知識があるのか?」
「あ、はい一応他の人には言わないで下さいね? ゴーダさん」
「まぁ言っても信じて貰えそうにないから、言わないさ」
「じゃがマリア、このお弁当なる物に入っておるおかずの数々は、どれももし王都やファンダリアで、同じ物を出す商売を始めるなら、かなり儲かる商売になりそうじゃぞ?」
「そうなんですか? サンチェスさん」
「勿論じゃ、どの料理もコショーが使って有る物が多いし、こんなにしっかりとした味付けの料理なぞ、王都の一流店でも中々お目にかからぬからな」
朝食を終えると隊列を整え予定通りに次の街へと到着した。
このカノンの街はファンダリアに匹敵する程の大きな町だ。
護衛の俺達は、この街に到着してから翌々日の朝まで自由時間となった。
俺はインベントリの中に大量に入って居た魔物の死体の納品をしておこうと思い、マリアに頼んで冒険者ギルドへと向かった。
「なぁマリアこの街は、亜人の人が多いよね」
「そうだね、このカノンは昔大きな戦争が有った時の主戦場になった場所で、その時の傭兵や戦闘奴隷で集められた人が、元になってるらしいよ。今でも国中の争いごとの時に傭兵を派遣するのが主な収益なんだって」
「そうなんだぁ冒険者も多いの?」
「能力アップが比較的しやすい、ダンジョンが近くに存在するから、傭兵の人達は普段はダンジョンを探索する事で、鍛えながら収入を確保してるんだって」
「ダンジョンかぁ、そのうち一回行って見たいな。スクロールとかはダンジョンじゃ無いと手に入らないんでしょ?」
「そうだね、発見される物は殆どダンジョンに現れる宝箱かららしいよ」
「そう言えば一昨日俺達が覚えた魔法のスクロールも宝箱に入ってたけど、あの状態で置いてあるのかな?」
「どうなんだろうね? 私はダンジョンには入った事無いから、知識不足だよゴメンネ」
俺達はカノンの街の冒険者ギルドに入って行くと、ギルドの中は街中よりも更に亜人比率が高く人間の方が圧倒的に少なく感じた。
受付カウンターに並ぶギルドスタッフも、獣人の女の子が対応していた。
あの耳は狐耳だな。
うーん……激しく触ってみたいぜ。
「こんにちは冒険者ギルドカノン支部受付を担当していますコリーンです。今日はどんなご用件でしょうか?」
「あの…… 買取お願いしたいんですけど?」
マリアが受付で声を掛けた。
「買取ですね、商品はどちらに?」
「ちょっと量が多いので、保管庫のような場所で出させて欲しいのですが?」
「ここのご利用は初めてですよね?」
「はい普段はファンダリアで活動しています。今回は護衛依頼の途中で立ち寄りました」
「護衛依頼中に大量な納品ですか? どうやって運んだのかな?」
「一応、運搬法は秘密でお願いします」
「あ、ごめんなさい。それでは保管室へご案内しますね」
そう言って保管室へ案内するために立ち上がったギルドの職員さんには……
フッサフサの柔らかそうな狐尻尾が垂れ下がっていた。
思わず反射的に尻尾に飛びついちまったぜ。
「ひゃぅ」
「あ、ゴメンなさい。テネブルいきなり何するのよ」
「ハッ、ごめんマリア、目の前で揺れるふさふさしっぽに、我を忘れてしまった」
リュミエルが横でジト目で見て来た。
「変態」
ばっさり斬られたぜ。
「あ、大丈夫ですけど、しっぽは触らない様にお願いしますね」
保管庫に案内されると、俺はいつもの様にインベントリから、綺麗に部位別に分けられた魔物素材を、部屋の中に広げた。
「この猫ちゃん、アイテムボックス持ちなんですか? 凄い……しかもこんな容量が入るアイテムボックスなんか私見た事無いですよ。ちょっと量が多いので査定にお時間いただきますね。この解体技術も凄いですね。骨や牙も磨き上げたように綺麗ですし、評価は最高レベルでさせていただきます」
「はい、よろしくお願いします。食堂に居ますので査定が終ったらお呼びください」
そう伝えて、俺はマリアとリュミエルと一緒に食堂に向かった。
「俊樹兄ちゃん。あれは無いと思うよ?」
「ゴメン。揺れるふさふさ尻尾を見た瞬間に
「それって本能的なの?」
「だと思う」
「戦闘の時にマタタビとか猫じゃらし使われたらヤバくない?」
「まぁ魔物はそんなの用意しないだろうし、それを普通に持ち歩く人間も居ないと……思う」
「あ、テネブル。テイマーさんなら持ってる可能性もあるよ?」
「マジかよ……」
そして俺は一度日本へ戻る事にして、その間のマリアの事をリュミエルに頼んだ。
「私は明日サンチェスさんの付き添いでお化粧のデモンストレーションをする事になってるから、リュミエルにもお願いするね」
「大丈夫よ、向こうからちょっと沢山仕入れて来たからね」
「よしじゃぁ俺は明日の昼過ぎまで家に帰って来るな」
「気を付けてねテネブル」
ギルドの外で建物の陰に入り、転移門を広げファンダリアの家へと戻ると、青い扉をくぐり日本へと戻った。
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