第95話 動画再生数がヤバいんですけど?

 鮎川とそばを食べて帰宅すると小説の執筆を始めた。

 でも、今回の展開だと俺がテネブルじゃない時の、こっちの世界での話を一切書いてない状態だと、話のつながりが唐突過ぎて纏めるのが大変だな。


 まぁそれを言ってしまえば、リュミエルの登場やシエルの登場も話の繋がり的には唐突な感じがあったから何とか修正したいな。

 今回の書籍版一巻ではリュミエルの登場辺りまでしか無いから、シエルの登場には少しそれらしいエピソードを書き加えるかな?


 岩崎さん達に関しては異世界召喚された勇者メンバーがメッチャ頑張って邪神倒しました! の一行で終わらすパターンも在りかも知れない。

 基本は俺とマリアの異世界スローライフ的な展開の方がイラストとのマッチングが良いからな。


 そんな事を考えていると飛鳥が俺を呼ぶ声が聞こえた。


「パパ! ちょっと来て大変な事になっちゃってるよ」

「どうしたんだ? 飛鳥」


「これ見てよ! 私の動画チャンネルの再生回数」

「ん? マジかよ……」


 そこに表示されていた再生回数は僅か三日間で四百万視聴と言うとんでもない数字だった。


「これって……一体どれくらいのお金になるんだろ?」

「確か、前に見たこのサイトで動画投稿してる人のエッセイで、一視聴0.1円くらいにはなるって言ってたな」


「でも……日増しに視聴数凄い増えてるし、昨日の夜アップした二つ目の動画なんて初日から百万超えてるよ……これ週一とかアップしてたら私のチューバーとしての収入でも一千万円とか行っちゃう感じになったりしちゃうの?」

「あー俺もその辺りはあんまり詳しく無いけど、それぐらいの視聴数が付くと、サポートしてくる企業とかも現れるだろうし、もっと多くなるかもな? ぶっちゃけて言えば動画でバズっちまうと俺の小説なんかとは桁が違う収入になるよ」


「どうしようパパ?」

「頑張って使え。日本経済の発展の為に!」


「パパの小説ってさ。本にして売る以外だとこんな動画サイトみたいなPVによる収入みたいなのは無いの?」

「それは利用するサイトによって違うかな」


「じゃぁお金になる所以外は投稿する人いなくなっちゃったりしないの?」

「うーん? 将来的には解らないけど、今は一番大手のサイトはお金にならないけど、投稿者は多いんだよね。だから俺みたいに最初から書籍化を目指してなかったりすると、少しでも見て貰えそうな所って言う安易な理由で選んだな」


「そうなんだね。ママみたいに凄い人気のある人は勿体なく無いのかな?」

「ああ、晃子の場合は書籍化されるのが前提だからPVで稼ぐ事より書籍販売の為の広告宣伝費だと思ってるんじゃないかな?」


「そうなんだね」

「まぁ俺は殆ど偶然イラストとの相関関係で人気が出たけど、もしこの小説がイラスト無しだったらって考えると、総合順位で十位は厳しいくらいだと思うよ」


「そっかぁそれでも総合十位とかほぼ書籍化作品ばっかりだから、パパも文章だけでも行けてたって事じゃ無いの?」

「どうかな? タラレバの話はやって見ないと解らないとしか言えないな」


 ◇◆◇◆ 


 心愛ちゃんと希ちゃんは、こっちの世界ではずっと飛鳥と一緒に部屋に籠って晃子の小説を読んだり、動画の編集の様子を眺めたりして過ごしている。


「冴羽さん達が言ってたけどさ、心愛ちゃんの世界も結構大変なんだろ?」

「あー確かに大変でしたけど……」


「あれ? 過去形?」

「昨日、岩崎さんと翔君が来てくれたじゃ無いですか、私の世界に」


「うん、何かあったの?」

「ラスボスが平和的な話し合いでの解決を望むって言ってきました」


「なにそれ?」

「私達が四人揃ってる状態だと、戦いとかなったら次元空間自体が消滅するって事で、向こうも一切人類に対して手出しをしないから、こっちにも干渉するな? 的な感じです」


「凄いね……ラノベ展開にすら、ならないじゃん」

「でも結局ダンジョンは残っちゃってるし、スタンピードで外に出た魔物も残ってますから気は抜けないですよ」


「そっか。それに比べたらこの世界は恵まれてるな」

「でも、何があるかは解らないですから、ほら、結局竜馬さんなんかは、岩崎さんと繋がりがあるみたいだし、岩崎さんの世界のダンジョンは、その竜馬さんが作り上げたらしいですよ?」


「まじ? 爺ちゃんとよく話して、対応を考えるしかないな」


 ◇◆◇◆ 


「俊樹兄ちゃん、ちょっといいかな?」

「どうした香織」


「あのね、東京で収録するラジオ番組なんだけど生放送でしょ? だから話があんまり脱線しない様に、大体のシナリオが上がって来たから、確認して置いて欲しいの。晃子姉さんがメインゲストだから、大体は晃子姉さんの希望に沿った形だよ」

「ああ、解った。読んでおくな」


「あのね、俊樹兄ちゃんは不安はないの?」


「どんな不安だ?」

「晃子さんとの対談、結構ガッツリ恋愛観を語りたいみたいだよ?」


「そっか。まぁ元嫁だし、結婚してる時に大して何もしてやれなかったから、今回は晃子の盛り立て役に徹して乗り切るよ」

「そう言ってくれるなら助かるけど、全国ネットだから反響はそれなりにあると思うよ」


「解った。まぁ当たって砕けろだ」

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