第27話 ホカ弁

 香織と一緒に中央部分に進み、今まで以上に大量の魔石を魔法陣の中央にインベントリから取り出した。


 部屋に明りが灯り、総司爺ちゃんも姿を現した。

 香織が自分の姿を確認して、ちゃんと人の姿に戻って居る事に安心している。


「良かったぁ、無事に戻れたよ。戻った時に裸だったりしたらどうしようとか思っちゃったよ」

「その可能性は俺は想像しなかったな」


「だって俊樹兄ちゃんは男だから別にいいでしょ? 私が裸だと大変な事になるからね?」

「ま、まぁそうだな……」


「おぬしら楽しそうじゃな」

「爺ちゃんただいま」


「今回も大量に持って来たな。どれ、二十六キログラムかほれ、二百六十万円だ。どうじゃ今回は欲しい物はあるか?」

「あ、今回はあるぞ。爺ちゃん念話器を後五セットくらい作って置いて貰えるかな? 後な王都への護衛依頼を受けたんだけど、それだと往復で二週間以上かかるから、小説の更新も出来ないし、香織だって王都へ行くとこっちでのラジオ番組の問題とかあるからさ、何かいい解決方法は無いかな?」


「成程な、そうじゃの転移門と言うアイテムを作っておこうかの。この青い扉の向こうの部屋に扉を設置して、対になる扉を常に俊樹と香織がインベントリの中に持っておれば、お互いの元へは瞬時に移動できるようになるであろう。勿論扉をくぐる前に念話で連絡を入れて、扉をインベントリから出しておかねばならぬがの」

「それすげぇ便利じゃ無いか、爺ちゃん頼んでいいか?」


「解った明日のこのくらいの時間までに作って置こう」


 ◇◆◇◆ 


 俺は香織と共に土蔵から家に戻った。


「ねぇ俊樹兄ちゃん、私さ取りあえずこっちの家に住んでも構わないかな?」

「由美叔母さんに何て言うんだ?」


「母さんは俊樹兄ちゃんと一緒ならむしろ安心すると思うよ?」

「そうなんだ。俺は別に構わないけど、まだ当面は節度のある関係で居ようぜ」


「ふーん。催しちゃったら言ってくれれば構わないよ?」

「いやいや、まだ香織は若いんだから、俺よりももっといい相手と知り合う可能性だってある。このまま三カ月はお互いを信用するための期間にしておこうぜ?」


「まぁ俊樹兄ちゃんがそう言うなら、別に構わないけど私は束縛したりしないから、自由に遊んできていいからね?」

「へぇ、でも俺も束縛したりはしないが、自由に他の男と遊ばれると嫌だぞ?」


「あれ? 妬いてくれるんだ」

「その感情が無ければ、それは愛し合っているとは言えないさ」


「でも、ハーレムだって目指せるんじゃない? そんなに稼ぐなら」

「まぁ他の奴がどう思うかは勝手だが、お互いを信用しあえない結婚生活は長持ちしないからな。俺は既にバツイチだからもし再婚するなら一生添い遂げる事が出来る相手って言うのが前提条件だぜ」


「意外にしっかり考えてるんだね」

「俺は今日の出来事を小説に纏めたいから、一度家に戻って来いよ。博多に出掛けてからずっと由美叔母さんにも連絡してないだろ?」


「あ、そうだね。インベントリってこの世界でも使えるんだよね? 荷物もまとめてから戻って来るよ。ご飯はどうする?」

「そうだな。香織が戻って来てから一度出かけようか? 外食で構わないだろ?」


「そうだね、私あんまり家事得意じゃ無いからね。その方が助かるかも」

「じゃぁそういう事で」


 タクシーを呼んで、香織に取り敢えず百万円程のお金を渡し、必要な物が有れば買い揃えて置くように伝えて、見送った。

 俺は、パソコンの電源を入れて小説サイトを開く。

 更にブクマは増えていた。

 感想も大量に書き込まれている。


 こりゃとても全部に返信とか不可能だなぁ。

 加工ソフトでイラスト風に仕上げた挿絵の評判が、中々いいぜ。


 じゃぁ早速今回の写真も加工して使おうかな。

 香織のパグ姿の写真とかマリアの眼鏡っ子姿とか素材は盛りだくさんだぜ。


 孤児院の子供達やキャロルママたちの写真も欲しいな。

 勢揃いで記念撮影とか頼んでおこう。


 それなら俺達も写りたいし、三脚が必要かな?


 インベントリって時間停止機能もあるし、今から向こうの世界で護衛任務で出かけるなら、作り立ての弁当でも大量に購入して、保管しておこうかな?

 美容関係の事は香織に任せればいいし、なんだか充実してるよな。


 ◇◆◇◆ 


 夕方の十八時頃に、香織から電話がかかって来た。


「遅くなってごめんね、向こうに持って行きたいものとか色々書き出していたら、すっかり時間が過ぎちゃってたよ」

「ああ、気にするな。俺は執筆始めたら時間の感覚何て無くなっちゃうからな」


「そうなんだ。三十分くらいで着くから出かけられるようにしておいてね?」

「了解だ」


 約束通りに香織が三十分程で到着したから、そのままタクシーで小倉駅まで出かけて食事をする事にした。

 ちょっと小洒落た居酒屋で、ビールで乾杯してお腹を満たしたながら話をした。


「俊樹兄ちゃん。こんなにワクワクするのなんて、もう何年ぶりだろうって言うくらいに楽しいよ」

「そうか、魔物を殺したりしたのも事実だから、結構落ち込んでないのか心配したけど、大丈夫なようだな」


「それね、俊樹兄ちゃんも書いてたけど、きっと人間じゃ無かったから感覚的に違うんじゃないかな? って思うんだよね。想像してみたんだよ人間の俊樹兄ちゃんと香織が魔物を殺す姿。身震いしちゃったよ。でも、テネブルとリュミエルが魔物を倒す姿を想像すると、ワクワクするんだよね」

「それなら、大丈夫か。俺は今回の王都行に合わせてな、ホカ弁を大量に買い込んでおこうと思うんだけど、どう思う?」


「それ良いんじゃないの? 私も異世界ファンタジー物結構読んでるから、外での食事の手間とか考えたら、良い選択だって解るよ。総勢二十人くらいの旅になるんでしょ? 片道一週間として半分は街での宿泊になるでしょうけど、それでも三百食分くらいは、あったほうが良いかもね?」

「そんなに要るのか? じゃぁ予約しないと無理かな?」


「今のうちに頼んだらどうかな? 一軒じゃ無理でも何軒かに分けて注文したら、明日の午前中に取りに行くで大丈夫なんじゃない?」


 早速ネットで調べて、小倉の弁当屋さんに五件程電話をして、朝の十時くらいに用意できる弁当を作れるだけでいいからと言う注文をした。

 少し不審がられたから、今から先に現金払いで、お金を払いに行く事を告げその時にメニュー見ながら、種類も色々指定したぜ。

 タクシーで弁当屋巡りとか、余り出来ない体験だな!


 その後は、そのままタクシーで帰宅をすると、空き部屋に香織が荷物を出して、俺と香織の共同生活が始まった。

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