第13話 香織と食事

 結局力技で解決しちゃったけど、サンチェスさん達のお陰で今後金貸しの連中に付き纏われることも無いだろう。


「キャロル、さっきの土地の権利証は今この場で破棄しておくな」

「サンチェス、そのままにして置いてもらえないかい? 土地にかかる税金はちゃんとミザリーに払わせるから、今は男手の無いこの孤児院は今回の様に、悪いやつらに狙われやすいから商業ギルドのマスターの持ち物であればちょっかいを出す奴もいないし助かるよ」


「そう言う事ならそれで構わないが、わしに何かがあった時にわしの遺産になってしまうから、わしが死んだらミザリーが相続するように書類を残しておくな」

「助かるよ」


 問題は解決したけど困った事実が一つ残った。

 借金の返済に充てるつもりで売った鏡の代金千五百万ゴールドが、マリアの手元に残ってしまって、マリアがどうしようと言い出した。

 俺はマリアに助言してみたぜ。


「この孤児院の為に用意したんだから、ここの為に使うのが一番いいぜ」ってね。


 マリアはみんなが見てる前で、シスターとママにサンチェスさんから受け取ったお金を先程の百五十万ゴールドを引いた千三百五十万ゴールド出して「これで孤児院の古くなった所とかの修理をして、みんながお風呂に入れるようにお風呂も作りましょう。私の家だと、お風呂作るほどの場所も無いから、ここに場所貸して下さい。残ったお金はママの治療費や、私の弟や妹たちが毎日三食をきちんと食べれるように使って下さい」

「マリアこんな大金をどうしたの? 気持ちは有り難いけど今そんな贅沢をしてしまうと、このお金が無くなった時にきっとまた困るだけだから」


「これからは、ここの子供達でもちゃんと生活費を稼げるように、私に協力して貰うから大丈夫だよ。みんなも私のお手伝いしてくれるよね?」


 マリアが子供達に問いかけるとみんなが「「「うん」」」と元気に返事をした。

「ママ、シスターそう言う事ですから、これは私の先行投資です。いっぱい稼がして貰わないといけないからね!」

「マリアありがとう……」


 シスターの目はウルウルしてた。

 美人の涙は尊いぜ!


 アルザス先生とサンチェスさんも、馬車に乗って帰って行った。

 今回のお礼にサンチェスさんには、少し儲け話を持ってこないとな!


 今は十三時か、問題も片付いたし一度向こうに戻ろう。

「マリア、今日は一度自分の世界に戻るね。また明日来るよ。一人で冒険なんかはしたら駄目だよ?」

「テネブルありがとう。明日絶対戻って来てよ?」


「ああ、必ずね」


 俺は自分の世界へ戻る為に、自分の家へと戻り青い扉を通って地下室へと戻って来た。

 今回手に入れた魔石を魔法陣の中へと置くと、総司爺ちゃんが現れた。


「ほぉ今日も頑張ってきたようじゃの。二キログラム分の魔石か、ほら二十万円じゃ、冒険の内容はお主の小説で読ませて貰うから、今は教えなくて良い。何か必要な物はあるか?」

「爺ちゃんありがとう。念話の指輪のお陰で随分助かったぜ。爺ちゃんは俺の行ってる青い扉の世界の事は知っているのか?」


「おう、知っておるぞ。だがわしが教えるよりも実際に自分の目で見て自分の心で感じ取った情報の方が大事じゃ。自分で必要と思った物を言え」

「そうか、それなら今日はまだ頼みたい物は無いかな。明日行った時に考えて置くよ。爺ちゃんお金ありがとうな」


「その金はお前の働きに見合った正当な対価じゃから、礼は必要ないぞ。明日もまた頑張って稼ぐが良い」

「解った」


 そう言って俺は倉庫へと昇って行き、家でシャワーを浴びた。


 二日で三十万円も稼いじゃったな。

 異世界最高だぜ。


 久しぶりに旨い寿司でも食べたいと思って、香織に電話してみた。


「香織、寿司でも食いに行かないか?」

「回って無い所なら行きたい!」


「OK迎えに行くから準備して置け」

「一時間後に来てね。女は準備に時間かかるんだからね」


 十六時過ぎにバイクで、香織の家へと向かう。

 小倉でも結構街中の旦過市場の側なので、そこからは歩いて行動する事にした。


「えー歩くの? タクシーで行こうよ?」

「久しぶりの小倉の街を、自分の足で歩きたいんだよ。彼女とかだったら言えないけど、香織なら言いやすいからな」


「しょうが無いね。あ、『もり田』で予約取れたから」

「遠慮なしだな、でも旨い寿司喰いたかったから嬉しい」


 小倉前の寿司を食べさせてくれる老舗中の老舗で、俺は噂でしか聞いた事の無いような有名店だが、懐には少し余裕があるしいいだろう。

 

 小倉の街を香織と二人で歩くが、昔の様な人通りの多さは無いな。

 少し寂しいぜ。


 でも街は少し清潔感が増したような気がするな。

 昔いた頃は、活気はあったけど危険な空気感も半端無かったしな。

 

 俺が高校時代はパンチパーマ掛けるのが当たり前だったからな。

 今時はそんな奴らも見かけないし、博多との差も無くなったように感じるぜ。


 香織と食べた鮨は、最高に旨かった。

 今までのサラリーマン生活では恐らく一生口にすることも無かっただろうな。


 これからは異世界での稼ぎもあるんだし、こっちの世界では思いっきり楽しむ事にしようかな。


「香織は今はなんの仕事してるんだ?」

「フリーでイベント関係の司会とかそんな仕事受けてるよ、後はエフエム局で番組を週に一本だけ持ってるくらいだね、帯番組じゃ無いし殆ど稼ぎは無いけどね」


「凄いなラジオで番組持ってるとか、十分に自慢できるじゃん」

「でも収入は殆ど無いから、こんなお店は奢りじゃ無いと来れないよ」


「そんなもんなだな、番組持ってたりしたらセレブな生活できるとか思うのは俺だけなのかな?」

「全国区の帯番組でも持たないとセレブにはなれないよ」


「そうなんだな、まぁ頑張れ」

「俊樹兄ちゃんは仕事しないの?」


「今の所は考えて無いな」

「ええ? 頑張って稼いでくれないと私がたかれないじゃん」


「それくらいは何とかなる」

「へぇそうなんだ。じゃぁ安心して奢って貰うね」


「俺も色々な店に行って見たいし、気になるとこが有ったら予約入れて置いてくれ。予約した日時はこっちに居るようにするから」

「あれ? 俊樹兄ちゃん何もして無いし、純二伯父ちゃんの家に住んでるんだよね? こっちに居る様にってどういう事なの?」


「男には秘密があるもんなんだよ」

「へぇ、そのうち教えてよね?」

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