第18話 現代の俺の変化?
青い扉から地下室の中央部分に進み魔石を置くと部屋に灯りがともる。
三度目ともなると慣れた感じがするな。
明かりが灯ると総司爺ちゃんの姿も現れた。
「俊樹、お前アルザスに出合ったのか? 奴はわしの弟子じゃ」
「ただいま爺ちゃん。マジか知り合いとかで生きてる人が居るとかすげぇな。てか爺ちゃん俺の小説ちゃんとチェックしてるんだな」
「勿論じゃよ。もう少し話数増やしたらレビューも書き込んでやるぞ?」
「それはちょっと嬉しいかも」
「今回は結構あるな。魔石が五キログラムか五十万円だ。順調に稼いでおるな」
「サンキュー爺ちゃん助かるぜ」
「何か欲しい魔導具などは思い付いたか?」
「今の所はまだ思いつかないな。黒猫の姿は思ったより優秀だから、別に困る事が起こらないからな」
「解った。困る事が有れば頼るんじゃぞ?」
「ありがとう爺ちゃん」
◇◆◇◆
地下室から出ると、香織に連絡を入れた。
バイクを香織の家に置きっぱなしなのもあったし、サンチェスさんと話したこの世界の美容品の相談をしてみたいのもあったからな。
「香織。今日はこの後時間は取れるか?」
「大丈夫だよ、美味しい食事に連れて行ってくれるならね?」
「ああ、好きな所に予約をしておけ。今からタクシーで向かうから三十分後くらいに出掛けれるように準備しておいてくれ」
「解ったぁ、まだシャワー浴びて無いから一時間後にして欲しいかな?」
「了解だ」
約束通り一時間後に香織の家にタクシーで向かう。
「運転手さん、そのままもう少し待っててもらえますか?」
「構いませんよ」
タクシーに待って貰い、香織を迎えに行った。
すぐに出て来た香織を乗せて「化粧品とかを買うならどこがお勧めだ?」と聞くと「普段使いでブランドとかが決まってたら薬局でいいけど、新しいのを探したい時は百貨店だね」と言うので、紫川沿いの老舗百貨店へと出かけた。
「食事の場所は決めたのか?」
「うん一度行って見たいと思ってた駅の裏の高層ホテルの最上階のレストラン予約したよ」
「まじか? ドレスコードとか無いだろうな俺随分ラフな格好だぞ」
「あ、確か無かったはずだけど一応小倉では一番いいとこだからもう少しきちんとした方が良いかもね? ついでに服も買っちゃえばいいじゃん。私が見立ててあげるよ」
「まぁ滅多に服を買おうとか思わないからそれでいいか」
「でもさ俊樹兄ちゃん。化粧品なんてどうするの? まさか目覚めた?」
「ちょっとな知り合いの外国の人が居てそこではちょっと文化水準が低くて日本で出回ってる様な化粧品は無いそうなんだ。比較的裕福な人は多いみたいだから、商売になるかも知れないと思ってな」
「へぇそうなんだ。でもさ現代社会なんだからネットで世界中からお取り寄せできるじゃん? ネットも無い国なの?」
そんな話をしてるうちに百貨店へと付いてタクシー代は三千円ほどだったけど、五千円札で払って「お釣りは結構です」と伝えると、凄い笑顔で「またお願いします」と言い走り去って行った。
「俊樹兄ちゃんって、そんなキャラだったっけ? 随分行動がかっこいいね」
「まぁ男も四十を過ぎるとそれなりになるんだよ」
「ええ? ニートなのに?」
「そこは触れなくていいだろ」
流石に香織は意識高い系女子だけあって、化粧品等の知識も豊富だった。
「どんなメークをしたいのかな? 普段使いのナチュラルメークなのかパーティーメークなのかで、使う品物も根本的に変わるからね」
「そうだな、俺は良く解んないし取り敢えずは一番基になるのってなんだ?」
「化粧水と乳液とファンデーションとルージュかな? 若い子ならリップの透明感のあるのとかが良いかもね」
「そうか、香水とかってどうなのかな?」
「有名どころのブランドなら間違い無いから何種類か選んでみるね」
「うん頼む」
コスメ系の商品を選んだ後は、メンズフロアに行ってニューヨーク系のブランドでワンセット揃えて貰った。
「博多まで行けばブランドは何でもあるけど、小倉はこのデパート以外だと余りないからね」と言ってた。
でも、折角だし少しゆとりのある生活も体験してみたいから、香織に任せてみるのもいいかな? と思った。
小説のネタにもどこかで使えそうだしな。
「香織、明後日は時間取れるか?」
「うん、大丈夫だよ」
「夕方から博多に出掛けて買い物して、翌日の昼帰りとかでもいいか?」
「え? それって一緒に泊まるって事?」
「馬鹿、部屋はちゃんと別に取る」
「なんだ、ちょっと期待したのに」
「従妹に欲情しねぇぜ」
「私の服も買ってくれたりするの?」
「ああ、それくらいはアドバイス料でプレゼントさせてもらうさ」
「ふーん。やっぱ俊樹兄ちゃんなんか変わったよね。普通にかっこいいと思うよ、思考が」
「そうか? お金なんて必要以上に持っててもしょうがないしな?」
「なんだか、私のイメージの中じゃ老後の安定した生活の為に貯めて置こう! 的な考え方すると思ってたのに」
買い物を終えて、リーガロイヤルホテルの最上階にあるレストランで、フレンチのディナーを楽しみ、ソムリエの薦めるがままに、ワインも一本空けた。
フレンチなんて、縁遠いと思ってたけど、一流と呼ばれるレストランのコース料理は、十分満足する感じだったな。
初夏が旬のイサキを使った料理が特にお気に入りだったぜ。
居酒屋で食べる料理とは、一味も二味も違うよな!
その後は少し飲み足りないと思ったから、同じホテル内のバーに場所を移して、少し香織の話を聞いて見る事にした。
俺はジャックダニエルをダブルのロックで、香織はドライマティーニを頼んで乾杯した。
高級なバーではロック用の氷も一つずつ手で削りだした丸く大きな氷を使っていて、グラスも高級そうな感じだったぜ。
「ねぇ俊樹兄ちゃんは自分で気づいてる?」
「ん? 何をだ」
「見た目だよ。伯父さんのお葬式から二週間くらいしか経って無いけど、その時に感じたイメージと今の俊樹兄ちゃんの雰囲気ってハッキリ言って別人みたいだよ?」
「え? どういう事だ。俺は何も感じて無いけど」
「凄い若返ってるよ?」
「そうかな? 気のせいだよきっと。ほら今はさっき買ったばかりのちょっと高めの服とか着てるから、きっとそのせいさ」
「メチャ身体も引き締まって、逞しく感じるよ?」
「あー暇だから筋トレはやってるしな」
「まぁいいか、でもさ今の俊樹兄ちゃんなら、私本気で付き合いたいって思うからね?」
「香織ならもっといい男がきっと現れるさ」
「いい女だとは思ってくれてるのかな?」
「おう、それは間違いないぜ」
「じゃぁ焦らずじっくり攻略するよ」
「怖いな。香織はやりたい事とかあるのか?」
「勿論あるよ。でも今はそれ以上になんだか俊樹兄ちゃんが気になるな」
「そうか、じゃぁさ少しバイト頼まれてくれないか?」
「バイトってどんな?」
「簡単に言えば俺のサポートかな? 色々時間が足りなくてさ俺の頼みを聞いてくれればいいさ」
「いいけど、週一はラジオの仕事が入ってるからそれは優先させてもらうよ?」
「勿論構わない。給料はそうだな月に五十万でどうだ? 活動に使う実費は別に請求してくれていいからな」
「それって愛人契約みたいな感じだね」
「そっちは別に求めたりしないから安心しろ」
「ふーん。なんだかそう言われちゃうと振り向かせたくなっちゃうよね」
「由美叔母さんが、心配するだろ」
「あらお母さんは、結構本気で俊樹に貰ってもらえば? って言ってたよ」
「マジかよ。今の所はそう難しく考えないで良いさ」
結局今日も飲んじゃったから、またバイクは香織の家の倉庫におきっぱなしになっちやったぜ。
向こうの世界の魔法薬で酔い覚ましの効果のあるのって無いかな? マリアに聞いて見よう。
帰ってからパソコンの電源を入れてアクセス数を確認すると更にブクマが千件は増えていた。
このサイトの方式だとブクマが一日半くらいの間で千件も増えてるともしかして……と思ってランキングページに飛んでみた。
おーすげぇ! 俺自身初めての事だがジャンル別で五位、総合でも七位にランクインしていた。
感想も五十件ほど貰ってる。
「うわぁあ」
これは、全部返信してたら執筆時間がとれねぇぜ。
初めての嬉しい悲鳴だった。
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