第69話 飛鳥の異世界デビュー

「飛鳥、今から裏の土蔵の地下に行って、俺達の高祖父、飛鳥から見れば五世の祖ごせいのそになる大おじいちゃんと会う事になる」

「えーっと五世の祖って言葉が良く解らないんだけど」


「あーそうだな、飛鳥から見たらひい爺ちゃんのお爺ちゃんだ」

「えーっ、一体何歳なの?」


「生きてた時から数えれば二百歳くらいだな」

「それって、もしかしたら幽霊とかそんな感じ?」


「それとはちょっと違うけど、まぁ会ってみれば分かる。そんなに怖くは無いからな」


 そして俺達は三人で土蔵から地下へと降りた。

 中央まで行き部屋に明かりが灯ると、お爺ちゃんが姿を現す。


「爺ちゃん戻った」

「おお、俊樹に香織待って居ったぞ。ん? また人を連れて来たのか。おお俊樹の娘か、わしから見れば来孫らいそんになるな。飛鳥ちゃんじゃったかな」


「えーと、初めましてお爺ちゃんのひいお爺ちゃん。なんで私の名前知ってるんですか?」

「自分の子孫の事は見守っておるからじゃ。飛鳥も行くのか?」


「うん、パパの小説見てて、あの世界が本当にあるって聞いたら、行かない選択なんて無いです」

「そうか、じゃが危険な世界じゃし何が有ろうと自己責任じゃぞ? どんな姿になるのかさえも想像がつかぬ」


「うん、それはパパからも聞いたけど行って見たいの」

「俊樹、飛鳥をしっかり守ってやるのじゃぞ」


「ああ。爺ちゃん当然だ。俺の命に代えても守る」

「お、そう言えば転移門は出来上がってるから渡しておくな。それと念話リングは、前の時に余分に作って居たから、飛鳥用に三つ渡して置くぞ」


「爺ちゃんありがとう助かるよ。後さ、アルザス先生って爺ちゃんに会いたがってるけど、なんて伝える?」

「そのうち行くと言って置け」


「解ったよ」


 そして俺達は青い扉を潜り抜けた。


 ◇◆◇◆ 


「え? 私何になったの、テネブルとリュミエルが凄い大きく見えるんだけど」


「青いな」

「青いね」


「青いって何?」


 そう言って取り敢えず手を伸ばそうとした私は、『ぱさっ』という音と共に、羽が広がった事に気付いた。


「えっ、ええぇ」


「鏡見てみろ」


 俺は飛鳥を、姿見の前に連れて行った。


「鳩?」

「そうだな。俺にも鳩に見える」


「ねぇ飛鳥ちゃん。ステータス確認してんみなよ」

「うん」


【ステータスオープン】

 奥田飛鳥 


 種族 青鳩 

 レベル   1


 攻撃力   5

 防御力   5

 敏捷性  20

 魔法攻撃力 5

 魔法防御力 5

 知能   10

 運    20

 SP    0


スキル 幸運 

称号  異世界からの訪問者

    幸せの青い鳥


「何だか戦うのは出来なさそうな感じ?」

「そうか、まぁ俺としては飛鳥に戦いなんてして欲しくないから逆に安心したかもな。戦いは俺に任せておけばいい」


「うん。頼りにしてるよパパ」

「称号を鑑定してみてくれ」


「解ったよ」


【鑑定】異世界からの訪問者


異世界から訪れた者に与えられる称号。

鑑定、インベントリ、言語理解、成長促進、透明化の能力が与えられる。


「あれ、小説で見たパパや香織お姉ちゃんとも違うよ、透明化って言うのがある」

「飛べるし、見えないんだったら、かなり安全に過ごせそうだね。部屋の中に飛鳥ちゃん用の武器が無いかな?」


「あ、これかな?」

ミスリル製の筒の様な物が置いてあった。


「何だろうこれ?」


『ミスリルパイプ』 運 プラス百 基礎ステータスの運を二十パーセント高める


 音波で状態異常攻撃や味方の鼓舞が行える。

 空気を圧縮し、属性を乗せて打ち出す事も可能。


「何だか運に特化してるけど、武器として見ても結構凄いな。遠距離武器だし良かったんじゃないか? マリアに連絡するな」


『マリア、戻ったよ』

『テネブルお帰りなさい、三日も会えなかったら寂しかったよ』


『今どこにいるんだ?』

『孤児院の子供達と薬草畑だよ。凄いんだよ、もう薬草が生えて来てるよ』


『へぇそうなんだ。成功して良かったな。俺達も今から行くね』

『うん。待ってるよ』


 飛鳥は俺の頭の上に止まった状態で、俺は香織と一緒に歩いて、西門の外の薬草畑へと向かった。

 青々と茂った薬草が一面に広がっていて、とても綺麗だ。


 でも育てるのに結構な量の魔物の内臓を、撒かなければ駄目みたいで、孤児院の男の子たちが、なたや包丁で血まみれになりながら、肥料を畑にまいている。

 そんなに楽な仕事は無いって事だな……



「テネブル、リュミエル、お帰りなさーい。あれ? テネブルの上に止まってる鳥はどうしたの?」

「ああ、マリア。新しい仲間だ。後で従魔登録して置いてくれよ」


「わー綺麗な青色でとってもかわいいね。よろしくねー」

「マリアちゃんよろしくー!」


 そう飛鳥は挨拶したけど、その場に流れた音は「クークルックー」だった……


 俺はインベントリから念話リングを出して、飛鳥の脚に嵌めてあげ、もう片方をマリアに渡した。

 細いリングなので、俺のと香織のと一緒に、左手の小指に嵌めていた。


「飛鳥、マリアに何か話しかけてみてくれ」

「うん」


「マリアちゃんよろしくね」

「こちらこそー」


 それからみんなで歩いて街へ戻ったが、飛鳥は飛んでみたいと言って、空に羽ばたいた。


 すると、すぐに大きな鳥が飛んでくるのが見えた。


『飛鳥、透明化を使え』


 俺は飛鳥に念話で伝えた。

 すると飛んでいた飛鳥が、俺の目からも見えなくなった。


 香織がすぐに風魔法を使い鷲の様な鳥を狙って、撃ち落とした。

 香織の魔法もかなり強くなってるよな、と思いながら礼を言った。


「ありがとう香織」

「飛鳥ちゃんを守るのは当然の義務だからね」


 落ちて来た鳥は孤児院の子供達に上げた。

「今日の夜のおかずになるね!」

 って言って嬉しそうだった。


 飛鳥が透明化を解いて、俺の頭の上に戻って来た。


「ちょっと怖かったよ」

「そりゃそうだろうな。飛んでる時は、透明化してたほうが安全そうだから、そうしろよ?」


「うん、解ったパパ」


 その後は、子供達を孤児院に送り届けて、マリアと冒険者ギルドに向かった。

「従魔登録してくるね」と言って、マリアが俺を抱いてカウンターに並んでいる間も、飛鳥は香織の頭の上でキョロキョロ興味深そうに周りを見ていた。


 久しぶりにマリアに抱っこされると落ち着くぜ。

 やっぱりふわふわだよな!


 初めての異世界は見るもの聞くもの何でも珍しいから、俺も香織もそうだったなと、自分の時の事を思い出しているとマリアが戻って来た。


「従魔登録終わったよ。あなたの名前は『シエル』だよ。よろしくねシエル」

 と言いながらプレートを首に掛けて上げてた。


「素敵な名前をありがとう。マリアちゃん。これからよろしくね」と返事をしてた。


 確かフランス語で『空』だったかな? 

 飛鳥にぴったりのいい名前だと思う。

 

 飛鳥の異世界生活が楽しい体験になってくれればいいな、と思いながらマリアとシエルを見つめてたぜ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る