第4話 一狩りしてみた

 街から出ると門の外には大量のリヤカーのような荷車が並べてあった。

 きっと冒険者が獲物を運ぶために利用するのかな?

 番をしていた男にいくらかのお金を払い、荷車を曳いてジョニーたちのパーティーは移動を始めた。


 そうかぁこの世界では、インベントリやマジックバッグなんて言うのは一般的では無いんだな。

 黒猫な俺は目立たない様にその様子を眺めていた。


 外に出てから改めて街を眺める。

 町の周りは高さ五メートル程もある壁が円形に取り囲んでいて、二百メートル毎に物見櫓ものみやぐらの様な小屋が作ってある。

 街の直径はざっと四キロメートルほどかな?

 それなりには広いぜ。


 俺は、目立たない様に道路脇の草むらの中を通って、ジョニーたちのパーティの後を追った。


 町から出て三分もしないうちに最初の魔物と遭遇した。

 お約束のスライムだな。


 ラノベ知識が間違いなければ透き通った体内にある核を攻撃すればいいはずだが、ジェシカと言う魔法使いの女の子が火の魔法で瞬殺した。


 すげぇ! 魔法ってやっぱり存在するんだな。

 異世界で見た初めての魔法に感動したぜ。


 だがこれじゃ俺は使えないから、倒し方としては参考にならないかも。


 そういえば、ラーニングスキルって見るだけじゃダメなのかな?

 攻撃を受けなければならないとなると、結構ハードル高いぜ?


 それとも確率的な問題とかあるのかもしれないし、その辺は追々解るだろうな。


 ジョニー達ののパーティは、あまり強そうにはない敵を倒しながら、順調に進んでいる。

 俺も何か狩りをして見たいなと思うが、この黒猫の身体で果たして戦闘なんか出来るのかな?


 少し街道から離れた位置をジョニー達のパーティに平行して進んでみた。

 するとすぐに俺の前に野ネズミの様な魔物が現れた。


 猫な俺からしてみれば、最初に倒す敵はネズミがやっぱりベストだろ?

 インベントリからミスリルエッジを取り出し口に咥えた。


 ネズミと言っても大きさは俺よりでかい。

 首筋を狙えばきっと何とかなるだろうと思って、 走り寄った。


 不思議だ。


 初めての戦闘なのに、恐怖感は沸かない。

 これは俺が黒猫だったからなのか?


 狩猟をする事が当然の生き物だからなのか、敵のネズミを見るだけで血が騒ぐ。

 人間の俺だったらどうだったろう?


 きっと猫より大型の動物を前にして、取り敢えず殺そうとは日本人の感覚では思わないよな?


 そう言う意味でなら、俺が初めての異世界を黒猫の姿で経験するのも、悪く無いのかも知れないと思った。


 そして俺の狙い通り、ミスリルエッジは敵のネズミの首筋を一撃で切り裂き倒す事に成功した。


 ワイルドラットレベル3を倒しました。

 経験値三百を獲得。

 レベルが上がりました。

 レベルが上がりました。

 レベルが上がりました。

 レベルが上がりました。


 ぇ? 何故だ?? たった一匹でレベルが四つも上がったぞ?

 成長促進の効果なのか?


 おっといけない、魔石を取り出さなきゃな。

 やり方が解らないから、取り敢えずこのままインベントリに放り込もう。


 そしてジョニー達のパーティに平行して進みながら、途中で出会った敵を殲滅する事を繰り返し、ジョニー達が歩みを止める場所に辿り着いた頃には、俺のレベルも十五を迎えていた。



『ステータス』と念じてみる。


 奥田俊樹 


 種族 黒猫 

 レベル  15 


 攻撃力 150  (+30) 

 防御力 150  (+30) 

 敏捷性 200  (+40) 


 魔法攻撃力 50     

 魔法防御力 50    

 知能   150   

 運    150    

 SP     0

スキル 身体強化2

攻撃力、防御力、敏捷性に二十パーセントのボーナス

称号  異世界からの訪問者


装備 

ミスリルエッジ

攻撃力 100+基礎ステータスの攻撃力を二十パーセント高める 


これに装備分がプラスされる事を思えば結構いけてる気がするな。

そもそもここに辿り着くまで一番強い敵でもレベル十を超えて無かったしな。

参考の為にジョニーのステータスでも見てみるか。



 ジョニー 


 種族 人間 

 レベル   30 

 冒険者ランクC


 攻撃力  250 

 防御力  250 

 敏捷性  150 


 魔法攻撃力 100     

 魔法防御力 100  

 知能    100    

 運     100    

 SP   1050


スキル 剣術

剣を使っていると剣技を覚える


称号 女衒ぜげん

女性に信用されやすくなる


ん? 違和感があるな、レベル30とか俺の倍もあるのに弱く無いか?

SPってなんだ? そこに本来振られるはずのポイントが貯まって、使えないのか……



それに、女衒ってなんかろくでもない予感しかしないぜ。


取り敢えずは目を離さない様にしなきゃな。

あの可愛いヒーラーの女の子が何もされなければいいんだが?


 ◇◆◇◆ 


辿り着いた場所には鬱蒼とした森の入口だった。


「あの? ここって山賊が居るって噂の森ですよね?」

「ああ、そんなのただの噂さ。俺達は最近はいつもここの中で狩りをしてるんだ。リンダやジェシカも一緒にね」


「そうだよ街道の魔物よりちょっとだけ強いけど、その分魔石もアイテムも良い物が取れるから、効率のいい狩場って事だね」

「そうなんですか……私なんかでも大丈夫なのかな?」


「基本は今までと同じように見てればいいよ。もし俺達が怪我をしたら回復はよろしく頼むよ」

「はい。解りました」


 それから二時間程の時間を狩りに費やし、荷車が満杯になったのでそろそろ引き上げようとした時だった。


「おいジョニー、今日も俺達の縄張りでしっかりと稼いだようだな」


 山賊が現れたようだが、何だか雰囲気的に知り合い同士の会話の様だな。

 もう少し様子を見るか。


「バドゥか、今月分はもう払っただろ」

「ああ、それがな、お頭が今月からここの入場料は値上げするって言いだしたから追加で貰わないとな」


「おいおいそれじゃ約束が違うぞ」

「約束だぁ? そんな事は俺は知らないお頭に直接言えばいいさ」


「ああ解った。いつもと同じ条件でいいのか?」

「そうだ女を一人か、荷車一杯の獲物だ」


「今日はチョット金が必要だから、獲物は持って帰りたいな。しょうがないこの娘で払おう」

「ぇ?」


 当り前のようにそう言ったジョニーをびっくりしたような表情で見るヒーラーちゃん。


「あんたみたいな初心者に無条件でおこぼれを分けたりする訳無いじゃない? こんな時の為の保険で連れて来てるだけだから、大人しく諦めてね」


 リンダと呼ばれた拳闘士に後ろから羽交い絞めにされたヒーラーちゃんのみぞおちに、ジョニーは剣の柄を打ち付け意識を奪った。


「それじゃぁ確かに払ったぞ、女の口止めは頼んで置くぞ?」

「俺達に散々おもちゃにされて奴隷で売り飛ばされるんだ。何も言いたくは無くなるさ。でもこの娘は乳もでかいし顔も中々だな。俺達に回ってくるまでにお頭に壊されちまうかもな」


「まだ俺の味見も済んでない娘を渡したんだから、次は少し安くしろよ? おっとその娘の冒険者証を貰って置かなきゃな。死亡届を出さないといけないからな」


 やっぱり屑だったか……

 さてどうやって助けよう。

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