第10話 マリアのランクアップ

 俺はマリアと共に狩りを終えて街へと戻っていた。

 もうすっかり薄暗くなってきているが、街道沿いは街に近い場所では灯の魔導具が設置している様で、道だけは視界が無くならない程度には明るかった。


「ねぇテネブルっていくつなのかな? 見た目は子猫だけど、話してると結構年上な感じがするよね?」

「ああ。マリアよりは年上だ。この世界だと猫だし歳は関係無いけどな」


 なんとなく四十二歳の親父だとは言いにくいぜ……


「そろそろ街に付くけど、解体前の魔物は街に入る前の荷車を借りる所の横に解体所があるから、そこで解体して貰うか、場所だけ借りて自分で解体するかで値段が違うんだよね」

「そうなんだな、ちょっと聞くけどアイテムボックスは中に入れた魔物を取り出す時に、勝手に解体をしてくれたりはしないのか?」


「え? 何それ、そんな事出来ないよ。入れた物がそのまま出せるだけで十分便利だし」

「そうなのか……やっぱり俺のは少し違うみたいだな。解体は中で勝手にやってくれるから、解体して有る物は何処に持って行けばいいんだ? 後さマジックバッグってこの世界では売ってるの?」


「えぇ! テネブルのアイテムボックスってそんなに凄い事出来るんだね!! 解体してあるのはギルドの買取カウンターに持って行けばいいよ。マジックバッグは魔導具店で売ってるけど小さいのでも結構高いよ。一メートル四方まで入るランク1のマジックバッグでも五百万ゴールド で、現在存在が確認されている一番大きなバッグは百メートル四方まで入るんだって値段はオークションでも幾らの価値になるか想像がつかないけどね」


「そうかぁ、俺のはアイテムボックスじゃ無くてインベントリって言うんだけどね。ギルドの買取カウンターにさ、沢山のドロップ品を納品したりすると、怪しまれないかな?」


「一応ギルドのカウンターの人には守秘義務があって、持ち込まれたアイテムや持ち込んだ方法なんかは他言できない事になってるから、大丈夫だと思うよ? ギルドマスターとかには知られちゃうけど」

「ふむ……この国のギルドって言うのは信用できるのかな?」


「えーとね、ギルドって言うのは国に所属してなくて世界中で活動できるんだよね。ただし国外での冒険が認められるのはB級以上だけどね」

「そうなんだね」


 冒険者ギルドまで戻った俺とマリアは、買取カウンターに行き、ちょっと納品が多いことを告げると個室に案内された。


「マリアちゃん、アイテムは何処なのかな?」


 買取担当の職員のお姉さんに言われたマリアは「一応確認ですけど、納品方法とかは秘密なんですよね?」と確認してくれた。

「勿論だよ。もし私の口からそんな事が漏れたってバレちゃうとすぐ首になっちゃうからね」


 それを確認するとマリアが「テネブルお願い」と言ったので、種類ごとに魔石と魔物の内臓以外の売れそうなものをすべて部屋の中に出して行った。


 この世界ではゲームの様に、お金やアイテムがドロップする事は無いけど、マリアがダンジョンの話をしてたから、ダンジョンは又別なんだろうな? と思う。

 

「え? 凄いねマリアちゃん。この子の能力なの?」

「はい、くれぐれも秘密でお願いします」


「解ったわ。薬草と毒消し草も鮮度が凄いわね。今抜いてきたような鮮度が保たれてるわ。それに魔物の皮やお肉も最高の技術を持った解体のプロの人でもこんなに上手には出来ないレベルだよ。量も凄いしちょっと査定するから待っててね」


 それから30分ほどの時間をかけて、アイテムの査定が終った。

 この査定をする部屋と、ギルドのアイテム保管庫は劣化防止の魔法がかけてあるそうで、この部屋の中だと薬草や肉なども劣化をする事が無いんだって。


 そんな魔法があるなら、魔導具のマジックバッグなんかはもっと進化できそうだけどな? って思ったぜ。


「マリアちゃん。今日の買取価格の総額は百二十万ゴールドだよ。凄いね」

「え? そんなにあるんですか?」


「こんな量のアイテムは荷車で何台分だと思ってるの? それに状態も全部最高ランクでの査定だからね」

「ありがとうございます」


「あ、それとねこの量の買取だと、マリアちゃんの冒険者ランクが二つ上がるよ。冒険者証書き換えるから、待っててね」

「本当ですか? 凄く嬉しいです」


 二ランクアップのDランクの冒険者証を渡して貰って、買い取り金額の百二十万ゴールドを受け取ると、俺はマリアと一緒に家に帰った。


 マリアの家だよ?


「テネブル本当にありがとう。こんなお金を手にする事が出来るなんてメチャ嬉しいよ。もう少し早くテネブルに出合えてたら、シスターがつらい思いしなくても済んだのにな。でもそれを言ってもしょうがないよね」

「マリアはこれからもっともっと強くなれるさ。俺と一緒にな。マリアここにはお風呂って無いのか?」


「お風呂は貴族様の家じゃないと無いよ。私達だと大衆浴場に行くんだけど、安く無いから、週に2回行ければいい位だね。孤児院に居た頃は井戸水で体を拭くだけだったよ」

「でもこれからは。お金は安定して稼げるようになると思うし、もう少し綺麗な家に引っ越さないか?」


「テネブルはずっと私と一緒に居てくれるの?」

「ああ、少なくともマリアが一人でちゃんと稼いでいけるようになるまでは、一緒に居るよ」


「ありがとう。それなら明日にでも少し探してみようか?」

「賛成だ。お風呂のある部屋が良いぞ、俺は浴場には行けないし」


 今日はマリアも疲れたのかベッドの中で俺を抱っこしながら、いつの間にか寝込んでいた。

 マリアのおっぱいは本当にフワフワで極楽だぜ!


 俺もマリアの腕の中でゆっくりと眠りについた。


 あ、商店街見に行くの忘れた。


 まぁ薬草栽培を思いついたし、明日の金貸しとの交渉が終ったら、そこから手を付ければ良いかな?

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