第11話 朝ご飯は笑顔の為に必要でしょ?
朝を迎えた。
この世界での朝は、初めて迎えたが空気がとてもうまいぜ。
俺は家の周りを散歩すると、朝市が開かれていてとても活気があった。
黒猫の俺は匂いにつられて魚を売ってたおばちゃんの側にやって来たら「あら、見ない顔の猫だね。これが欲しいのかい?」と言って魚の切り身を一切れ俺の前に出してくれた。
俺は「ありがとうおばちゃん!」と言って口で魚の切り身を受け取った。
当然聞こえた音は「ニャニャア」だけどな!
そのうちお礼をして上げようと心に誓ったぜ。
マリアの家に戻ると、井戸水を組んで来たマリアが顔を洗ってた。
「テネブルおはよう。ちょっと体を拭くからあまり見ないでね?」
俺は「ニャ」と短く返事して窓際にしゃがんだぜ。
マリアはちょっと恥ずかしそうな表情をしながら、濡らした布で体を拭いている。
やっぱり凄いな。
ブルンブルン揺れてるぜ。
正に眼福だ。
幸せな一時を過ごした後で、マリアが声を掛けて来た。
「ねぇテネブル、今日大丈夫かな? 金貸しの連中ちゃんと今後近寄らない様になるのかな」
「そうだな、ちゃんと終わるまでは心配だろうけど、金を払ってその上でまだ何か言って来るようなら、俺がジョニー達と同じ運命を辿らせてやるぜ」
「ちょっとそれ怖いよ。理不尽ではあるけど、出来ればテネブルに余り人を傷つけて欲しくは無いかな?」
「そうか……まぁ出来るだけ気を付けよう」
一度マリアと共に、孤児院へと向かうと子供達が不安そうな表情で庭に居た。
「シスターは居るかな?」
「ママと病院に行って来るって言ってたよ」
「そう、みんな心配しなくても私とシスターに任せておけばいいからね。私も少しママの顔を見たいからここで待たせて貰うね」
「本当? 俺達ここから追い出されないの? 今からもシスターも一緒にみんな一緒に居れるの?」
「うん。大丈夫だよもしここが無くなってもみんなが一緒に居れるようにはするから、安心しなさい」
「マリア姉ちゃん。ありがとう」
少しだけ子供達に笑顔が戻った。
「みんな、朝ご飯は食べたの?」
「あ、朝のご飯は今は無いんだ。お昼だけだよ」
「え? そんなみんなお腹空いてるでしょ。今から作るからみんな手伝って」
「食べる物が無いよ?」
「大丈夫買いに行こう、男の子は荷物持ちで付いて来て、女の子はシスターとママの分も作るから食器とか用意しておいてね」
「「はーい」」
ご飯を作ると知らせたら、みんなの顔に笑顔が戻った。
朝俺が覗いた市場で、子供達とシスターとママの分の食材を買い込んで、孤児院に戻って早速用意した。
お魚と貝がたっぷり入った雑炊のような料理だった。
朝、俺に魚をくれたおばちゃんの所で買ったぜ!
少しは恩返しが出来たかな?
出来上がった頃にシスターが車いすを押して戻って来た。
ママは凄く痩せていて顔色も悪かった。
「マリアちゃん朝からどうしたの?」
「みんなの朝ご飯を作ってたよ。今からは毎日三食ちゃんと食べようよシスター。食材は私が用意するから」
「マリアちゃん……今日で出て行かなくちゃならないかもしれないのに……」
ママが口を開いた。
「マリア、ありがとう。ここの出身者のあなたが優しい子に育ってくれて、本当に嬉しいよ。でもね、もうここを卒業したんだから、自分の幸せの為に一生懸命になりなさい」
「ママ? 私の幸せはママやシスター、私の大事な弟や妹たちが笑顔いっぱいでここで過ごす事だよ? その為にする苦労は苦労じゃ無いの。私の自己満足だから気にしないでね。ちょっと顔色があまり良くないから、ヒール掛けるね」
そう言いながらヒールを掛けると、少し顔色が良くなった。
出来上がった雑炊をみんなで食べていると、馬車が表に停まった。
一瞬金貸しの連中がもう来やがったのか? と思ったが、馬車から降りて来たのは、サンチェスさんだった。
一緒に来たのは、いかにも魔術師と言った風体の老人だった。
マリアが「あ、アルザス様だ」と言った。
「誰だアルザスって?」
「テネブル、アルザス様はこの国でも有数の治療魔法の使い手で、その治療を頼むには一年以上の待ち時間が有って一回百万ゴールド は治療費が掛かる凄い人で、私の憧れの魔導士様なんだよ」
「マリア、昨日は素晴らしいアイテムを譲って貰ってありがとう。今日は支払いを一日待たせてしまったお詫びに、私の友達のアルザス先生がちょうどファンダリアに来ていたからキャロル婆さんを見て貰おうと思ってね」
「サンチェス、お前に婆さん呼ばわりされたくないよ」
「え? ママってサンチェスさん知り合いなの?」
「幼馴染だよ、金持ちになってからは全然顔を出さなくなったけどね」
「キャロルが俺の
アルザス先生に見て貰った結果は、今のアルザス先生の技術でも病気の進行を遅らす事しか出来ないという事だったが、治療方法はあると教えて貰えた。
その方法は、エリクサーと呼ばれる魔法薬を使えば治るという事だった。
魔法では、今の世界で残っている最高峰と言われるパーフェクトヒールでも無理で、今は失われた
エリクサーは極稀にダンジョンの宝箱から出て来て、オークションで十億ゴールド以上の値段が付く薬だそうだ。
でもアルザス先生のお陰で、キャロルママは随分顔色も良くなった。
「君は治療魔法が使えるのかい?」
と、マリアにアルザス先生が声をかけた。
「はい初級のヒールだけですけど」
「そうか、ちゃんと勉強をしたいなら王都に私を訪ねてくると良い」
「ありがとうございますアルザス様。今は無理ですけど機会があればぜひ伺わせて頂きたいです」
「私ももう歳だから、私がくたばる前に来なさいよ」
そう声を掛けられて、なんだかマリアも少し嬉しそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます