第106話 ハチロウさん? やり過ぎですよ?

 俺は、爺ちゃんが身体に宿った状態で地下室から家へと戻った。


『俊樹、清海の後を継ぐ者の連絡先は知っておるか?』

『ああ、爺ちゃん。聞いてるぞ。でもさハチロウさん前は俺に一月待てとか言ってたけど、あれからまだ三週間ほどしかたって無いんだけどな』


『あの、杏と言う女に宿っておったのじゃろ? 恐らく追い出されて戻って来たのじゃな。奴は女好きの癖に凄い奥手でウジウジしておるから、大体気に入った女には、気味悪がられて捨てられるのが常だったからの』

『なんか切ないね……でも、裏社会とか牛耳ったなら、それこそ女とか困らなかっただろう?』


『奴は拘りがあって、自分が付き合う女は自分にベタぼれしてくれなきゃダメなんじゃ』

『そうなんだ……なんか色々拗らせた感じの人だね』


 連絡先を聞いてた清海さんに電話をすると、ワンコールですぐに電話に出た。


『奥田です。ハチロウさん戻ってられますよね? ちょっと変わって頂きたいんですが?』

『奥田さん? あまりこっちの世界の事に首を突っ込むのは、辞めておいた方が良いんじゃ無いですか? 人気作家さんだし面倒な事になりますよ?』


『おい、十三だったかお主は、良いからハチロウと変われ』

『まさかソウシ様ですか?』


『そのまさかじゃ。今更お前らが小金稼ぎとはどう言う料簡じゃ』

『ソウシ様、今は我々の業界、中々世知辛いので組織の維持の為に資金も必要なのです。晋作様の所と進めていた、カジノ法案が全然進展せぬものですから、予定地のホテル建築だけでも、借金を抱え込んでるので、ちょっと今回の件は多目に見て欲しいですけどね? シャブを売るよりよっぽどいいでしょ?』


『まぁ世界中の法律は、まだまだ悪徳な法案が沢山あるからの、博打の需要も減らぬものだしな。だが、やり過ぎは良くない。既に終わった分までは言わんから、ハチロウが持ちこんだ、魔石と魔導具を回収させて貰えればそれ以上は言わんよ』

『ソウシ様。清海を敵に回しますか?』


『ほう、わしに喧嘩を売る気か』

『私のとこの商売は舐められたら終わりですから、引けない事も有りますよ』


『その返事は、ハチロウも同じ意見なんじゃな?』


 それきり、返事はなく電話も切れた。


『爺ちゃん? ヤバく無いか? 俺だけならまだしも香織や飛鳥も居るんだぞ何かあったらどうすんだよ』

『馬鹿もん、今更お前らの能力とレベルで、ヤクザ者達が手に入れる程度の武器で傷一つ付けれないだろうが。気持ちで負けた方が喰われるもんだ。何か手を出してくれば奴らの傘下の組事務所にでも乗り込んで潰してくるのを何か所かやれば、勝手に負けを認めるさ』


『爺ちゃん……どっちがヤクザか解んねぇな』


 その電話が終った後で、爺ちゃんは一度地下に戻って行くと言ったので、一緒に降りて魔石と金属類を渡した。


「今回は随分と、金属が多いな。全部で二十億円分ほどあるぞ」

「お、凄いな。俺達は今ダンジョン攻略始めて結構ガッツリ狩りをしたのと、サンチェスさんの王都のオークションが恐ろしい程の値段で売りさばけるんだよ」


「そうか、俊樹に商才があるとは思わなかったな」

「知り合った人が良かっただけだよ。そう言えば爺ちゃん。ダンジョンの九層まで行ったんだって?」


「昔の事じゃがな。わしらはその当時で竜馬が999でレベルが頭打ちになっておったから、それから先には行かなかった。いや、行けなかった」

「レベルの制限を乗り越える方法ってあるのか?」


「わしらは見つけられなかったんじゃが、竜馬が言っておったぞ。限界突破のスキルは存在すると」

「そっかぁ、どこかにヒントとか無いかな?」


「そうじゃなことわりが違うから必ずしも一致するとは思えないんだが、岩崎殿とかあのTBと言う猫はレベルが2800程あったぞ?」

「マジかよ? 今度岩崎さんが様子見に来たら聞いて見るかな?」


「竜馬以外はレベル800程度までしか上げる事は叶わなかったが、お主らは超成長のスキルを所持しているから、999まではうまく立ち回れば行けそうじゃな」

「そこに辿り着いてからが勝負か」


「攻略本は見ないタイプじゃと言っておったが、方針転換をしたようじゃな」

「アスカが居るからな危険を楽しむ余裕がないぜ」


「俊樹もちゃんと人の親をしておる様で何よりじゃ」


 ◇◆◇◆ 


 その後で、必死で小説の続きを書いていると、玄関で呼び鈴がなった。

「はーい」と返事をして出て行くと大島杏さんと、心愛ちゃんと、希ちゃんが三人で訪ねて来た。


「どうしたんですか? 三人揃って」

「あの……この世界で何か異変がありませんでしたか? ハチロウさん絡みで」


「あ、その件ですか……確かにありました。ちょっとどう対処しようか考えてた所です」

「ご迷惑をかけて申し訳ありません。私が気を抜いた隙に。ステータスを調整できる、魔導具が盗難にあってまして、もしかしたらと思って確認に来たんです」


「便利な魔導具があるんですね……テネブルの世界だと殆どの人がステータスポイントという所に能力値がたまってて、レベルの半分程度の能力しか振り分けが出来ないんですが、それがあれば人も一気に強くなれそうですね」

「あの? モンスターはステータスポイントが無いんですか?」


「俺達や魔物達はステータスポイントは残って無いですね」

「意図的に振り分けが出来ないシステムになってるようですね。私達の世界での基準に当てはめると、そう言う場合は世界の管理者の、策略が疑われますね」


「そうなの心愛ちゃん?」

「おそらく」


「べノーラって言う名前の創造神が存在していて、世界の理をアカシックレコードって言う書物に書き込んだものが存在してるらしいんだよね。その謎を解き明かすために、ダンジョンの攻略を、始めた所なんだ」

「そうなんですね。頑張ってください! SASって言うステータス調整の魔導具をハチロウさんから回収したら、奥田さんに差し上げますから、テネブルの世界で活用してください」


「心愛ちゃんそれめっちゃ助かるよ。」


 玄関でそんな話をしてたら、飛鳥と香織も顔を覗かして来た。

「あ、心愛ちゃん、希ちゃん久しぶりー」

「飛鳥ちゃんお久です。小説の続きと飛鳥ちゃんのチューバーチャンネルがどうなったか気になって見に来たよ!」


「希……そっちがメインだったんだ」

「だって、ハチロウさんだっけ? あの人をどうにかするのにみんなでゾロゾロ行く必要も無いでしょ?」


 なんだか、逆にハチロウさんの所が心配になって来たぜ!


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