第8話 商業ギルド
金貸しの連中が帰るとシスターは大きなため息をついた。
「マリアちゃんゴメンなさいね、嫌な思いをさせてしまって」
「そんなのは気にしないで下さい、シスターとママが居なかったら私が育つことも出来なかったんだから……お金を借りなければならない程に、ここの運営は困っていたんですか?」
「そうだね、元々お金は足りていなかったけど、母の病気が悪化してその治療費がどうしても足らなくて、お金を借りてしまったの」
「ママそんなに悪いの? 私が早くレベルを上げてパーフェクトヒールが使える様になればいいけど、中々レベルも上げれて無いから……」
「マリアは十分に協力してくれてるじゃ無いの、これ以上は無理しないで」
「でも千五百万ゴールドも明日までに都合付ける方法なんてないですよね? ちょっと私も出来る事がないかギルドに相談してきます」
「マリアちゃん。貴女はもう自分の幸せの為に一生懸命になればいいんだから、無理をしたら駄目だよ?」
「ここが有ったから今の私があるんです。何かさせて下さい」
そう言ってマリアは孤児院を後にした。
俺はその後ろを歩いて行った。
一度マリアの家に戻ったタイミングで俺はインベントリから指輪を取り出してマリアの前に咥えて差し出した。
「あら? どうしたのこの指輪、綺麗だけどこの指輪じゃ千五百万ゴールドには足らないよ……」
売る気満々だな……
俺は違うとアピールするために一所懸命身振りで、指輪をはめる事を伝えたぜ。
「指輪をはめろって事なの?」
やっとそこに行きついてくれたので、大きくうなずいた「そうそれだ!」って言ったぜ。
当然聞こえる音は「ニャニャン」だったが……
マリアが指輪をはめてくれたのを確認して念話で伝えてみた。
「マリア、解るか俺だテネブルだ」
「ぇ? テネブルあなたとお話が出来るの?」
「良かった無事に伝わって、ちょと理由があって俺の姿は黒猫だけど、中身って言うか魂は普通に人間だからな? これからよろしくマリア」
「凄い! よろしくね。ねぇテネブルさっきの話聞いてたよね? 何かいい方法無いかな?」
「千五百万ゴールドってどれくらいの価値なのかが良く解んないんだけど、この街の宿屋で一人で個室に一泊していくらくらい?」
「食事無しで五千ゴールド朝と晩が付いて八千ゴールドくらいが普通だよ。勿論もっと高いとこは沢山あるけどね」
どうやら、ほぼ円と同じような感じみたいだな。
「ねぇマリア、この世界には鏡ってあるの?」
「あるよ銅板をピカピカに磨いた物が一般的だよ。貴族様くらいしか持って無いけどね。後、王宮には白金を磨いた鏡があるって聞いた事有るよ」
「そうなのか…… ちょっと見て貰っても良いかな?」
「何?」
「俺はインベントリから、マリア用に買って来た姿見を取り出した」
「何これ? すごい鮮明に映ってるじゃないの? どうしたのこれ」
「昨日来た時にマリアの家に鏡が無いな? って思って持って来たんだけど、これが珍しい物だとしたらいくらくらいになるのかな?」
「どうだろうね? 凄い高いとは思うけど価値は想像もつかないよ」
「どこかでちゃんと価値を見て貰えないかな?」
「そうだね、商業ギルドに行って見ようか」
「あ、俺の声が聞こえるのはマリアだけだから、外では普通に猫として扱ってくれよ?」
「うん、分かった。でも嬉しいなテネブルとお話が出来るなんて」
「あ、そう言えばさこの世界ではパーティを作って狩りをしたら、経験値ってどんな風になるの」
「えーとね、冒険者証がマジックアイテムになっててね、それでパーティが作れて、最大四人までなんだけど、経験値は人数で割る感じだよ」
「そうなんだ、俺みたいな従魔はどうなるの?」
「それも、首の従魔プレートが同じようにマジックアイテムになってるから、テネブルだと私と分けれるような感じだよ」
「OK了解だ」
「後さ、鏡にびっくりしすぎて聞き忘れちゃったけど、テネブルってアイテムボックス持ってる?」
「名前は違うけど、恐らく同じものを持ってると思うよ?」
「凄いんだね君は、アイテムボックスを持ってると、軍や商人が凄い高い給料で雇ってくれるんだよ」
「一般的では無いの?」
「えーとね、使える人は魔法使いの中でも一万人に一人くらいのはずだよ、因みに魔法が使える人は、この世界で十人に一人くらいだよ。使える人でもその人によって容量とかは違うみたいだけどね」
「それじゃぁ、マリアも十分凄いじゃん。しかもヒーラーならかなり稼げるんじゃないの?」
「私はレベルが低いし、まだ初級のヒールしか使えないから全然なんだよね。ハイヒールやキュアが使えたり攻撃の技や魔法を持ってないから、昨日みたいにパーティを探しても中々入れてもらえなくて」
「そうなんだな、ハイヒールやキュアって覚えるのに条件はあるのか? まぁ取り敢えず商業ギルドへ急ごうか?」
「うん、魔法を覚える条件はレベルアップのタイミングで、覚えるレベルは決まって無くて、レベルアップのタイミングでの抽選みたいに言われてるよ」
俺はマリアの部屋の毛布で鏡をくるむように頼んで、一度インベントリへ入れた。
それから二人で商業ギルドへと向かい、入口のそばの人気が無い所で、インベントリから姿見を取り出して、マリアに抱えて貰って中に入った。
受付でとても珍しいアイテムを手に入れたので、出来ればマスターに直接価値を見て欲しいとマリアが伝えた。
運良くマスターは居た様で、二階のマスターの部屋へと案内されて上がって行った。
「ようこそ、私がギルドマスターのサンチェスです。珍しいアイテムを持ってきたと聞いたけど早速見せて貰えるかい?」
マリアは毛布でくるまれた姿見を、その場で毛布を外してサンチェスに見せた。
「こ、これは素晴らしい物ですな」
「いくらくらいの価値が有る物ですか?」
「そうだな、オークションに掛ける事を薦めるよ。恐らく最低でも二千万ゴールドは付くんじゃないだろうか?」
「そんなにするんですか? ご相談なんですけど、ギルドで買い取ってもらう事は出来ないですか?」
「出来るが、予想価格の半分しか出せないからオークションを勧めるよ?」
「そうなんですか、あの……これを担保にお金を借りる事は出来ませんか? どうしても今日中に千五百万ゴールドが必要なんです」
マリアが今日の孤児院の出来事を説明し、一生懸命頼んでいた。
「事情は解りました。それではこうしましょうギルドとしてでは無く、私個人で千五百万ゴールドで私の妻へのプレゼントとして売って頂きましょう」
「それと明日の取引へは私も一緒に行きましょう。商業ギルドを通さずに法外な闇金融を運営するなどもっての他です。『目には目を』で少し痛い目に合って頂きます」
ぉ、このギルドマスター中々話の分かるいい人じゃないか?
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