第50話 対談の誘い?

 マリエラの街の宿屋までみんなで戻った後は、マリアの持つカメラのSDカードを入れ替えて俺は日本へと戻る事にした。


 今回はマリエラの街の港に停泊している船や港街の市場の様子なども、写真に収めており、異世界情緒もたっぷりなイラストを掲載できるな。


 この世界の船は地球の中世の西洋文化の様な帆船を想像していたが、実際に船を見るともっとシンプルな構造だった。


 文化として魔法や魔石が存在するために風魔法と魔石による動力を利用したウオータージェット推進の様な構造で、帆柱マストも一本だけあり横帆なので外洋で追い風がある時だけ使う感じなのかな?


 その為にかなり大きな船でもデザインがすっきりして見え、多くの積み荷が運べそうだな? と思いながら眺めていた。

 小型の漁船の様な船も、基本は同じ構造なのか、現代の地球で見かけるような形の船の方が多い。

 当然素材は木製の船ばかりで大型船では一部分だけ金属で補強してある感じだ。


 魔法文化があると、大砲などは必要ないみたいで、武装をしている船は見かけない。


 大型専用の船着き場だけでも十本以上の桟橋が並び、頻繁に荷物が運び込まれている光景は圧巻だ。

 

 港に隣接する場所には魚市場があり猫な俺には何とも食欲を湧き立たせる匂いがするぜ。


 さて、いつまでも見てると執筆時間が取れなくなると思い、転移門を広げてファンダリアへと戻る。


 青い扉をくぐって、魔石を魔法陣の中央に置くといつもの様に、総司爺ちゃんが現れた。


「俊樹、どこまで進んだ?」

「ああ、今はマリエラの街に着いたところだ。頼まれてたミスリルとオリハルコン持って来たぞ」


 そう言いながらサンチェスさんに用意して貰ったインゴットを爺ちゃんに渡した。


「おお助かる。これだけあれば色々作れるぞ。魔法金属はいくらでも持ってきた分を買い取るから、これからもよろしく頼むな」

「その量で二千万ゴールド分とか高いよな、びっくりしたぜ。結構少なかったから心配したけど大丈夫みたいで安心したよ」


「ほぉこれで二千万ゴールドなら十分安いぞ。大体向こうの価値ではミスリルと金の取引が一対三でオリハルコンと金では一対十であったからな」

「そうなのか? サンチェスさんが随分サービスしてくれたみたいだな。お礼に高級時計でもプレゼントして置こうかな」


「取り敢えずは精算しておこう。ミスリルが二キログラムで三千万円オリハルコンが五百グラムで二千五百万円だ。それと魔石十五キログラムで百五十万円。合わせて五千六百五十万円だな」

「うは、いきなり金持ちになったぜ。爺ちゃん俺がジャンジャンお金を使う事に関しては、怪しまれたりしないのかな?」


「銀行取引を中心にしてしまえば、おかしいと思われるかもしれんが、現金だとそうでもなかろう。ただニートだと怪しいから、形式だけでも働いていることに出来たほうがいいんじゃないのか?」

「俺の都合にあわせて貰える会社って無いかな?」


「そうじゃな、ちょっとわしの方で頼んでおくか。個人で会社だけ立ち上げて置けば、収入はコンサルタント名目で支払いが有った事にするなどは出来るからの。その替り税金は取られるぞ?」

「まぁ税金くらいはしょうがないぜ、どうせ全部申告したりしないし、インベントリに現金で入れている以上は調べようもないだろうから」


「不自然でない程度の額を取引しているていで、入金してくれる会社の方から、今日中に連絡があると思うから、電話には出ろよ?」

「ああ解ったぜ爺ちゃん。ちなみに相手の会社名か個人名は解るか?」


「個人名で連絡するように言って置く。坂口と言う名前のはずだ」

「坂口さんだね、解ったよ」


 地下室から部屋へ戻った俺は早速パソコンの電源を入れ、まずは写真データの加工から始める。

 うはぁやっぱ最新の画像処理特化型パソコンって馬鹿早いな。


 二百枚以上の写真データをイラスト画像に変換しても、全くストレスなく作業出来た。

 今までのデータも全部やっとくか。

 そう思いながら、作業をしてるとスマホに着信が随分入ってた。


 出版社と青木以外は別に急ぎの電話ではなさそうだな。

 まず青木に連絡する。


『もしもし、青木か? どうした何か問題でもあったか?』

『お、やっと連絡くれたか。そりゃ二千万の買い物だからこっちを出る前に確認の電話くらいするだろ?』


『別に問題とかあったわけじゃないのか? 全く無い訳じゃないけどな。今は最初のオーナーの人の希望で取ったナンバープレート付けてるから、品川ナンバーだけどそっちで北九州ナンバーに付け替える手続きはどうするかなと思ってな?』

『ああ、やらなきゃなんか罰金とかあったよな?』


『そうだな、特に目立つ車だし、ちゃんとやっておかなきゃぁ後で言われたら面倒だぞ』

『解った、俺はよくわからないから、その辺りの事はサービスでやってくれよ?』


『まぁしょうがねぇな、実費だけは頼むぞ』

『それは了解だ』


『ナンバーは希望とかあるか?』

『そうだな、992ターボSだから992がいいかな』


『解った、それで取得しよう』

『明日は何時頃の予定だ?』


『早朝に到着して朝一陸運局でプレート変えてから行くから十時頃だろうな』

『了解だ』


 ついでに出版社の方も連絡しておくか。


『杉下さんですか? 電話を頂いていたようで、連絡遅れて申し訳ありません』

『あ、やっと連絡いただけましたね。どこか行かれてたんですか?』


『創作に没頭してて、自分は執筆中は大体集中するために、電源落としてるもんで』

『そうでしたか、ちょっとだけ『ネタ作りに異世界行ってました』なんて返事を期待してましたよ』


 中々鋭いぜ……


『行けるなら大喜びで行ってきますけどね』

『まぁそうですね、私も行って見たいですよ』


『ご用件はどんな事だったんですか?』

『先日、そちらの北九州の地方エフエム局で先生の作品が取り上げられた話は。聞かれてますか?』


『ああ、あれナビゲーターの子が俺の従妹なんですよ。勿論聞いてます』

『え? そうなんですか? 先生もしかして晃子先生とお知り合いって言うか、元の旦那さんですか?』


『え? 何でいきなりバレちゃったかなぁ。その通りですけど、誰にも話したことは無いですよ?』

『晃子先生も書籍はうちの出版社から発刊されてますので、丁度その地方局のFM番組が結構話題になってですね、先生の執筆されてる投稿サイトがメインスポンサーで全国枠の番組を作ろうって言う事になったんですよ』


『ああ、それはナビゲーターの子から聞いてました』

『話は戻りますけど、晃子先生と打ち合わせした時に、その番組のナビゲーターが別れた旦那の従妹だって話になってですね』


『ああ、そういや面識は確かにありますね』

『晃子先生は、テネブル先生が奥田さんとは知ってらっしゃるんですか?』


『いえ、教えて無いから知らないはずです』

『そうですかぁ、番組側のプロデューサーさんから、ラノベを語るなら晃子先生を外せないから、第一回のゲストに招きたいって話が出てまして、その時に他の作者さんも一緒に招きたいって話が出たのが、テネブル先生だったんですよ』


『えぇ? 本当ですか?』

『なんだか、晃子先生も気に入って読んでるらしいですよ? 主にイラストをって言ってましたけど』


『小説なのに文章じゃ無い所が晃子らしいですね』

『どうしましょう? 会いたく無いとかなら、お断りしておきますけど?』


『いえそちらで打ち合わせに伺う時に、会う約束もしてたし、ついでにその時に晃子の都合が良いようなら、一緒に来るように言って置けば良いですよ。ただし事前には知らなかったていでお願いしますね』

『ドッキリですか? 会う約束してたなら問題なさそうですね。確認を取っておきます』


 なんだか、世間って狭いよなと思ったぜ。


 

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