第22話 強くなりたい

「寂しい……」


私はまた奈那のSNSを見ていた。

彼氏もいて、彼氏とは別に自分を好きでいてくれるイチくんという存在がいる。

それなのに寂しいなんて平然と呟けてしまう彼女が羨ましい。

あなたが寂しければ私はどうなってしまうのか。

だけど、こんな投稿を見ればイチくんはすぐに駆けつけるに違いない。

そしてまた誇らしげにそれを私に報告するのだろうか。

私はまたそんな想像をして一人胸を痛めるのだ。

やりきれない思いは行き場を失くし、いっそのことため息となって消えてくれればと願う。

そんな願いは虚しく、想像は現実となってまた突き付けられる。

いっそのこと逃げることができたら……。

イチくんを好きになってしまった以上、逃げられるはずなんてないのに。

奈那の全てを知った上で、イチくんが私の腕を引き寄せたあの夜に戻ったとしても、私はやっぱりイチくんを好きになるのだろうか。

こんなにも苦しい日々が待っているのだとわかっていても……。


「今度の金曜日集まらない?」


そんなとき蒼斗くんからのメールが来た。

私のイチくんへの気持ちを知って、協力しようとしてくれているのだろうか。

でも金曜日か。


「賛成!」


奈那がすぐに食いついた。


「俺も空いてる!」


少しして、イチくんからも返信があった。

生憎その日は仕事で外せない夜間の案件があった。


「ごめん、金曜は午後出社で夜遅くまで仕事なの」


おまけに翌日も休日出勤だ。


「そうだったんだ! ごめん、じゃあ別の日にしようか」


蒼斗くんが慌てて日程を調整しようとしてくれた。


「いいじゃん、地元なんだし、3人で集まろうよ」


そんな蒼斗くんの協力を奈那が帳消しにした。

そう、奈那は応援するとは言ったけれど、協力するなんて言ってない。

むしろ私の気持ちを知ってからは邪魔ばかりしている。


「美愛ちゃん、ごめんね。またの機会に!」


蒼斗くんの文面から申し訳なさが伝わってくる。


「美愛の分も楽しんでくるね~」


今のところ一応奈那は友達という立場たが、このあざとさには恐怖さえ覚える。


「次は美愛ちゃんの予定、優先させようね」


イチくんの文面から滲み出てくる優しさに目が霞む。

そう、意識なんてしなくたって、こういう言葉がさらっと出てくる。

誰にだって、そうなんだよね。

でも、そんなところも全部含めて私はあなたに恋をした。


「ありがとう。金曜日、楽しんでね」


私はそう返信すると、ため息をついてそのままベッドに倒れ込んだ。


今のままじゃ、多分イチくんは私の気持ちに気づかないまま……。

こんなことを続けててもずっと苦しいまま。

わかっているのに。

そんな葛藤が今日も私を惑わせて、苦しいなんて馬鹿みたい。


結局今日だって同じ、こんな毎日が過ぎていく。


もう何度もこんなにダメージを受けてるのに。

そろそろ強くなりたい。

そしてこんなの平気だよ、何ともないよって笑ってみたい。


だけどやっぱり私はまだまだ弱い……。

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