第11話 一筋の光?
梨乃に話を聞いてもらった数日後、私は奈那と待ち合わせた。
仕事帰りにショッピングモールで買い物をした後、夜ご飯を食べようとお店に入った。
まずは奈那の近況から。
相変わらず彼氏とはうまくいっているらしい。
「こないだもね、職場まで迎えに来てくれて……」
私が元彼と別れてから、私と2人でいるときに奈那よくノロケるようになった。
うまくいっているならそれに越したことはないけれど……。
そしてふと、バイト時代に見せてもらった奈那の彼氏の写真を思い出した。
真面目そうで寡黙な雰囲気は少しイチくんに似ているかもしれないが、背はそんなに高くなくて……。
イチくんの方が100倍イイ男に見えるのは私の恋愛フィルターのせいだろうか。
「うまくいってるなら良かったよ。幸せそうで何より」
そう言って私が笑うと、奈那も幸せそうに笑った。
「そういう美愛はどう? いい人できた?」
私はキタ!と思った。
言うタイミングは今しかない。
「それが……実は……」
私のもごもごとした態度に奈那は
「いい人できたの? どんな人?」
と急に前のめりになった。
「実はね、私……その……イチくんのことが……」
奈那は予想外だったのか私の言葉に驚きながらも、目を輝かせた。
「イチくんのこと好きなの!? いつの間に~! いいじゃんイチくん! 優しいし真面目だし、美愛、絶対幸せになれるよ!」
奈那がどんな反応をするのか不安だった私は奈那のその一言に安心した。
「そうかな……振り向いてもらえるかわからないけど……」
私は下を向いて答えた。
「うん。絶対うまくいくよ。がんばってね、私応援してる!」
奈那はさっきより更に目を輝かせて、はしゃいだ。
「ありがとう」
私は照れ笑いしてお礼を言った。
奈那が応援してくれるなら心強い。
イチくんが私のことを好きになってくれるなんて叶わない夢かもしれない。
でもそんな可能性が0.1%くらいから1%くらいには上がったような気がした。
1%だってまだまだ100%には遠いけれど。
それでもその根拠のない0.1%から1%への確率の上昇に私は心を踊らせるのだった。
***
そしてその夜、私は梨乃にメールをしていた。
「奈那に話したよ。応援してくれるって!」
梨乃からはすぐに返信がきた。
「良かったじゃん! これで一歩前進だね」
まだイチくんにアプローチしているわけではないけれど、一歩前進できてるのかな……。
久しぶりの感覚……。
元彼とは当時、相手の猛アプローチから始まった。
こっちからメールなんてしなくたって、すぐに連絡がくる。
気づけばそのアプローチに押されて、私も相手を意識するようになっていたのだ。
今まで付き合ってきた人とはそういうパターンで付き合うことが多かった。
だから久しぶりの片想いに私は戸惑っていた。
人を好きになると私は感情を隠すのが下手になり。バレバレになってしまう。
「絶対うまくいくよ」
不安になったそのとき、奈那が言った言葉が過った、
奈那がそう言ってくれるなら……。
その言葉は私にとって一筋の光になった。
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