第7話 お笑いキャラ?
気がつけば私たちは定期的に連絡を取り合い、度々集まるようになっていた。
天気の良い日は公園でピクニックをしたり、ドライブに行ったり、一夜さんの家で宅飲みをしたり。
今日もまた近くの公園に遊びにきていた。
「行くよー!」
ヤル気満々の奈那がバドミントンのラケットをぶんぶん振り回す。
「よっしゃー! 来い!」
対抗意識剥き出しの蒼斗くんは相変わらず張り切っている。
「奈那ちゃん、そんなに振り回したら危ないよ」
年上ということもあり一夜さんはなんだかお父さんみたいだ。
「あっ!」
私は風で飛んでいったゴミを拾った。
そして立ち上がろうとした次の瞬間。
「いっっ!」
奈那が振り回したバドミントンのラケットが思いっきり私の頭に直撃したのだ。
そのまま私は頭を抱えて座り込んだ。
本当は思いっきり「痛い!」と叫びたかったのだが、咄嗟に奈那を気遣い声を殺した。
「ウソ!? ごめん!! 大丈夫?」
奈那が私を覗き込んだ。
「美愛ちゃん、大丈夫?」
一夜さんと蒼斗くんも走ってきた。
私はそのまま固まっていたが、しばらくして
「大丈夫! 大丈夫! あはは~うける~」
私は場を和ませるために笑った。
奈那は安心したようだった。
「こんなでかいシャトルないわ~」
私は更に続けた。
その発言に奈那も蒼斗くんも笑った。
でも一夜さんだけは違った……。
「すごい音したよ? ほんとに大丈夫?」
私のノリに笑うことなく真剣な表情で心配してくれた。
優しくされると調子が狂ってしまう……。
「ほんとに大丈夫です! 全然たいしたことないので」
私は笑って立ち上がった。
そんな私の言動にまだ一夜さんは疑っている様子だった。
***
そして私は思い出していた。
元彼と付き合っていた頃に言われたことを…
「なんかさー美愛といても面白くないんだよなー」
あれは付き合って半年くらい経った頃だろうか。
「周りに面白い子とかいないの? そういう子の真似とかしてみたらどう?」
私はなぜ彼氏に面白さを求められているのかわからなかった。
確かに共通の趣味とか、一緒にいて楽しいとか、そういうのは付き合う上で必要だと思う。
だけど果たして面白さは必要だろうか……?
そんな疑問はあったものの、当時彼のことが大好きだった私は彼の理想になりたいと背伸びをしていたのだった。
「うん」
それから私は友達の前でもノリツッコミをしてみたり、笑いを取るように意識していた。
そのおかげか、大学の友達からは
「美愛といると笑いすぎて授業始まる前に疲れるんだけどー!」
と、すっかりお笑いキャラが定着していた。
だから私はすぐに笑いを取ろうとしてしまうクセがしみついてしまったのだ。
今だってそうだ。
みんなが笑ってくれればそれでいい。
それでいいはずなのに……。
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